理由(リレー作品) by 151


奈緒子の汗で濡れた髪を左手で撫でながら、その唇を貪る。
固く閉じられた唇を舌でこじ開け、奈緒子の舌を探る。
初めは驚いて舌を引っ込めていた奈緒子も、徐々に俺の舌に自分のそれを絡めた。
おずおずとした舌の動きが何とも可愛らしい。時折苦しそうな吐息が重なった唇の隙間から洩れた。
ピチャピチャと舌の絡みあう水音がいやようにも俺の欲望を高める。
奈緒子の髪を撫でていた左手を、そのまま躰のラインに沿って下げていく。
火照った頬、小さな肩、微かな膨らみ、細い腰、そして…。
奈緒子のロングスカートに手をかけ、ホックを探りあてる。
外そうとしたその時、重なった唇を無理矢理離し、奈緒子が俺に訴えた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「…何だよ」
訝しげに奈緒子を見る。奈緒子は小さな声で言葉をつむぎだした。
「えっと、その…私、だけ、素っ裸になるのって、恥ずかしいんです…けど…」
奈緒子の意図する所が分からず首を傾げる。しばし考えた後、俺なりに思いついた答えを口にした。
「ふっふっふっ…youは服を着たまましたい、と。なるほど、そういうプレ…」
「お前も脱げって言ってるんだ!この、ど馬鹿!!」
奈緒子の怒声により俺の言葉は遮られた。奈緒子は顔を赤らめ、自分の台詞に照れている。
俺は暫し奈緒子の顔を見つめた後、ゆっくりと躰を起こした。

密着していた躰が離れ、それだけなのに妙な虚無感に襲われる。
一刻も早く奈緒子と再び躰を重ねたくて、俺は乱暴に自分の上着を脱ぎ捨てた。



熱くなった上半身が外気に触れ、自分がいかに興奮しているかを思い知らされる。
奈緒子は目のやり場に困っているのか、キョロキョロと目を泳がせている。
そんな様子が可笑しくて俺は思わず吹き出してしまった。
「君が脱げって言ったんじゃないか」
「う…そりゃ、そうですけど…」
「何も初めて見る訳じゃないだろう」
何しろ出会って数日で、俺はこいつにパンツ一丁姿を披露済だ。
「上田さんは恥ずかしくないでしょうけど、私は見るのも、見せるのも恥ずかしいんです!」
俺だって女性の、しかもこいつの前で素っ裸になるのが恥ずかしくないわけじゃない。
けど、まぁ…こいつの方が恥ずかしいのは確かだろう。だが、それでも…。
「…見たいんだよ」
「え?」
奈緒子と目を合わせ、切実に自分の気持ちを訴える。
「君の事が好きだから、君の裸が見たいんだ。……変か?」
自分の言った事が可笑しくて軽く自嘲する。だが奈緒子は俯いて、小さく答えた。
「……変じゃ、ない…です」
フッと笑みがこぼれる。そのまま奈緒子のスカートのホックを外し、細い腰を浮かせてそれを脱がせた。
ついでに靴下も脱がせ、それをベッドの下に落とすと、
とうとう奈緒子が纏っているのは純白の下着一枚になる。



紅潮した奈緒子の躰にその白はとても映えていた。思わず目を細めてまじまじと見てしまう。
奈緒子はその視線に気付き、今更慌てて胸を隠した。
「ほ、ほら!上田さんも…!」
「あ…あぁ」
今度は奈緒子の言いたいことを正確に理解する。
俺はズボンのチャックを下げて、ベッドの端に腰掛け、一気に脱ぎ捨てた。
奈緒子の方を振り返ると、一人だけ寝転がっているのが嫌だったのか、躰を起こして俯いている。
「ぜ、全部脱ぐぞ?」
「ど、どうぞ…」
奈緒子が俯いたまま答えた。
再び端に腰掛け、自分の股間に目を遣る。
ブリーフの上からでも俺の欲望はありありとその姿を垣間見られた。
……何を恥ずかしがってるんだ!俺は。
自分を奮い立たせ、とうとう俺はブリーフを脱ぎ捨て、素っ裸となる。
勢いよく飛び出し、ピンと天井を向いた自分のペニスに、ため息が出そうになる。
常人と比べて大きすぎるそれは、俺にとっては最大のコンプレックスだ。
女性が喜ぶ所か、逃げ出す大きさのそれから目を離し、覚悟を決めた。

大丈夫だ。きっと。奈緒子なら受け入れてくれる。

柄にもなく赤面したまま、奈緒子の方に体をむき直した。



震えそうになる声を必死に押さえ、ゆっくりと口を開いた。
「…you、全部、脱いだぞ」
「…そうですか」
奈緒子は俯いたまま顔を上げようとしない。
二人の間に沈黙だけが横たわる。
ずいぶん長く感じられたが、一瞬だったのかもしれない。
俺が言葉を発し倦ねていると、奈緒子からの小さな問いが響いた。
「あの…見て、良いですか?」
心臓がドクンと跳ね上がる。握っていた拳に力を入れ、返事をする。
「も…もちろんだ」
奈緒子が顔を上げる動作が俺の目にはスローモーションで映る。
奈緒子は顔を45度ほど上げた所で目を留めた。
その瞳には俺の猛ったペニスが映し出されている。

今度は本当に長い沈黙に場を支配された。その間も俺の欲望は衰える事無く、時折ビクビクと脈打っている。奈緒子は目を丸くしたまま固まっていた。

…頼む。何か言ってくれ。「無理です」とか「ごめんなさい」とか何でもいいから。
この沈黙は気まずすぎる。

俺が大きなため息を吐きそうになったその瞬間、やっと奈緒子から言葉が発せられた。



「お…大きすぎませんか?」
答えにくい質問に俺の頭の中で様々な言い訳が思い浮かぶ。
しかし俺の口から出たのは、何とも間抜けな言い分だった。
「こ、こ、これくらい…ひょ、標準くらいだと思うが?」
嘘八百だ。俺は今まで生きてきて、自分レベルの逸物を見たことがない。
「そんな訳ないじゃないですか!」
当然奈緒子にもその嘘は見破られる。だが、俺の頭には既に別の言い分が用意されていた。
「き、君は男のココを見たこともないくせに、し、知ったような口を利くじゃないか。これが普通なんだよ!」
この台詞を受けて、奈緒子がいつもの調子で口答えた。
「なっ!馬鹿にしないで下さい!!男の人のそ…!……その、そこくらい見たことあります」
「何?!……あぁ、何だ、分かったぞ。どうせ、お父さんとか…昔の話だろう?」
奈緒子がムッとして俺を睨む。いつの間にかいつもの口げんかが始まっていた。
「ち!違いますよ!」
「じゃ、じゃあ誰のを見たって言うんだよ?え?言ってみろよ」
俺の中に妙な危機感が芽生える。
「……矢部さんと…」
奈緒子の口から飛び出た名前に、思わず俺は奈緒子の肩を掴み上げていた。
「矢部さんに何かされたのか?!?」



俺の剣幕に奈緒子が驚き、怯えているのが分かる。俺自身も動揺で顔が青ざめていた。
だが、今の奈緒子の発言は俺にとって至極重大な問題になり得るものだ。
奈緒子が肩を抑える俺の手を離そうと藻掻くが、か弱い力ではビクともしない。
しかたなくそのままの状態で奈緒子は答えた。
「ちょっ…何勘違いしてるんですか?!…違いますよ!」
「何?!」
「や、矢部さんと石原さんが温泉入ってる場に偶然居合わせたことが合って…ほら、糸節村の事件で
上田さんが捕まってる時ですよ。…その時にチラッと見えただけです」
……糸節村?あぁ、こいつが霊能力者の振りをしたせいで散々な目にあったあの村か。
あの時にそんな事があったとは。
「…他には?」「え?」「他には無いんだな?」
奈緒子が暫し考えた後、口を開く。
「あ!宝女子村の事件の時に、前田さんの死体の…その…」
「…あぁ、あれか」
俺の服を着ていた死体が、本当に俺なのか確かめるために奈緒子と矢部さんがとった行動を思い出した。
「それだけか?」「……それだけ、です」
俺は安堵のため息を洩らし、奈緒子の肩から手を離した。
俺の爪の後が残る肩を、奈緒子が痛そうにさする。そしてそのまま俺に怒鳴りつけた。
「痛いじゃないですか!!何勝手に勘違いして怒鳴りつけてんだ!!」
俺は先程の緊張が解れ、気の抜けた表情で奈緒子を見た。奈緒子は依然、怒り続けている。
「だいたい!矢部さんと私に何かあるわけないだろ!!この馬鹿!」



俺は奈緒子に分からないよう小さくため息を吐いた。
こいつは知らないんだろう。
矢部さんと奈緒子が仲良く話している度に、まして矢部さんがふざけて奈緒子を逮捕するため手錠を
掛けようと、その細い手首を握っているのを見たときなど、俺がどれ程の嫉妬に悩まされているのかを。
そして、当の矢部さんは俺のそんな様子に気付いた上で、俺の反応を愉しむ意味合いもこめて奈緒子に
絡んでいることを。
あげく、矢部さん自身も奈緒子のことをそう憎からず思っていることなど。

「ちょっと!聞いてるんですか?!上田さん!」
「ん?…あ、あぁ」
こいつ、まだ怒っていたのか。俺の気のない返事に奈緒子が黙る。
不思議に思い奈緒子を見ると、奈緒子は俺の瞳をジッと見つめ返してきた。
「もしかして…妬いたのか?」
「は?」「矢部さんと何かあったのかと思って妬いたんだろ!えへへへ」
(はっ!誰が君みたいな貧乳貧乏強欲マジシャンにやきもちなど妬くか!!)
いつもの俺なら、こう答えただろうな。だが、今日は自分に嘘はつかないと、最初に決めた。
「あぁ、妬いた」
「えへへ……え?」
奈緒子が笑うのを止め、驚いたように俺を見る。



「意外か?君が他の男に何かされたのかと思うだけで、身が焼かれるようだった。俺以外の男に君を触られたく
ないし、触らせたくない。ずっと俺の目に見える所に縛り付けて、俺だけのものにしたい。独占欲は人一倍
だからな。これから君は苦労するぞ」
真剣な表情で奈緒子を見ると、耳まで真っ赤にしていた。
「…あ、ありがとうございます…。うれ、しい…です」
奈緒子なりの精一杯の返事に微笑んだ。奈緒子は視線を逸らし俯くと同時に声を上げた。
「…あ!」
奈緒子の視線の先に目をやる。そこにあった俺のは俺のペニス。
そこは、今の口論で先程の勢いをなくしていた。と言っても、半立ち程度の勢いはあるが。
せっかく良いムードだったんだが、他でもない、元はと言えば俺の嘘から始まった口論だ。
「だ、大丈夫だ。すぐに元に…おおぅ?!」
奈緒子が責任を感じることはない。そう言おうと思ったんだが、俺の言葉は奈緒子の意外すぎる行動で
遮られた。
奈緒子がその細い指で俺のペニスを優しく握っていた。
「you!!な、何を?!」
思わず声が裏返る。
「すいません。私のせいですよね。責任、とりますから…」
奈緒子は恥ずかしそうに俺を見上げる。

な、何だ?この夢のような状況は。…いや、事実何度か夢にまで見た状況だ。
まさか奈緒子が、自分から、俺の…俺の…。

俺はカーッと顔が熱くなり、慌てて奈緒子の手を俺のペニスから離した。
「いいんだ!君はこんなことしなくても!!は、初めてなんだからこういうことはこれからゆっくり…」
少しだけ勝っていた理性に、本能が微かな後悔を訴える。
いや、いいんだ。これで。泣きそうなもう一人の俺を必死に奮い立たせた。
だが、奈緒子は再び手をペニスに伸ばした。
「大丈夫です!雑誌で予習しましたから」
…例の貧乳改善法の載っていた雑誌か。やばい、もう一度振り切る理性が残っているかどうか…。
奈緒子は髪を片方の耳にかけ、ゆっくりと腰を屈める。心臓があり得ないほど脈打つ。
「亀飼ってるし、手先は器用だからたぶん、大丈夫だと思いますけど…痛かったら言ってください」
……亀?!何言ってるんだこいつは。実はこいつもかなり動揺してるんじゃないか?!
俺は軽い混乱状態にあった。それでも何とか奈緒子を抑止しようと手を伸ばす。
「山田!!俺は…本当に…」「嬉しかったから!!」
奈緒子が俺の言葉を遮った。その大きな声に正常な意識が少し呼び戻される。
奈緒子は俺を見上げて、切なそうな笑顔を浮かべた。
「さっき上田さん言ってくれたこと、本当に嬉しかったから…。だから、上田さんにも喜んでもらいたいん
です」
奈緒子の口から飛び出した珍しく素直な言葉。
俺は、感動したのだろう。もう、奈緒子を止めようとは思わなかった。



奈緒子は優しく微笑んで、再び俺のペニスに顔を向ける。
そして、添えていた指でゆっくりと、竿の部分を擦り始めた。
優しく添えられた指先が、本当にそっとペニスを上下しているだけなのに、俺のペニスは激しく脈打つ。
急に蠢いたそれに、奈緒子はビクリと肩を揺らしたが、すぐに手の動きを再開させた。
だんだんと指に込められる力が強くなっているのを感じ取る。
上下に扱く速度も速まり、それに比例して俺の息も荒くなる。
「痛く、ないですか?」
奈緒子は不安げに俺の表情を伺う。
「あぁ…気持ち、いいよ」
俺の答えに安堵したのか、奈緒子はうっすらと微笑んだ。
シュッシュッと俺のペニスが扱かれる音が響き、その音を奈緒子が立てているのだと思うと、妙に興奮する。
「あの、上田さん」
「はぁ、はぁ…何だ?」
「えっと、何か先のほうから出て、きた、んですけど…」
躊躇いがちに奈緒子が尋ねる。我慢しきれず溢れた液体を疑問に思ったようだ。
俺は、怖ず怖ずと奈緒子に頼む。
「触ってみて、くれないか?」
「わ…かりました」



その親指が溢れた液体に触れ、クチュクチュと厭らしい音を立て、粘着質なそれが奈緒子の指に絡みつく
様が見てとれる。
奈緒子はそのまま亀頭を優しく撫でる。時折指先に力を込め、グリグリと先端を刺激した。
ぎこちないが、本人の言うとおり、手先の器用さが役にたっているのかもしれない。
自分でするのより何倍も激しい快感が俺を襲った。

「上田さん、ネバネバしたのが一杯出てきました」
逐一報告する奈緒子に、羞恥心が刺激される。
「君が、上手だからだ」
奈緒子が嬉しそうに俺を見る。その後、ペニスに視線を戻した奈緒子のゴクリと唾を飲む音が聞こえた
気がした。

「あの、上田さん…今からあることをしますけど、その…驚かないで下さいね?」
「you、何を…?……な!?お、おい!……うっ!」
俺は奈緒子の行動に目を丸くした。
奈緒子はペニスの先端、俺の我慢汁が溢れている部分にそっと口づけていた。

最終更新:2006年09月07日 09:31