ルームメイト脱却





「う、うわっ!?上田!!?」
ばたんッ 浴室のドアを思い切り閉めた。なのに手を挟んだ。痛かった

見えた

見えた



やっぱり貧乳だった。




「ゆ、you!お前、なんで風呂場にいるんだ!」
『風呂に入ってるからでしょうが!』
ああ、そうかそうだよな。落ち着け落ち着くんだ。
同居しているのだから、こういうハプニングもいつかはあるに決まってるじゃないか

一瞬の事だったが、脳裏に映像が焼き付いている。
彼女は髪を洗っていた。浴室用のイスに座って髪をじゃぶじゃぶと。

白い肌が湯気でほんのり赤く染まって
黒髪が湿っていて
顔も上気して艶っぽい
それに あれほど小さいとは思わなかった、胸。
それから下は見えなかった。

どうしてそこまではっきりと覚えているか?
答えは簡単だ、俺の記憶力がとてつもなく素晴らしく優秀だからだ。




『上田、お前好い加減手を抜いたらどうだ』
「・・・・」
乱暴に挟まった左手を引っこ抜く。少々痛かった。
『で、なんなんだ?急に」

な、こいつ気にしてないのか?

「な、なに言ってるんだyouは」
『いやなんか今すごい形相でこっち来たじゃないですか』
「あ、ああ・・・なんでもない」
『・・・覗きか』
「違うッ」
『?じゃあ別にいいですけど・・・
 あ、そうだ丁度良かった』
「・・・なんだ」
『悪いんですけどリンスが切れました。取ってくれ』

 ・・・・は?



なんだこれは。昔懐かしのラブコメ漫画的イベントか。
なんで都合よく、こんな時に
いやいやなんだこんな時って俺は別になにもないだろうが
こういう事だっていつかは在ることだ、暮らしてるのだから
なにもない、なにもない。ナチュラルにナチュラルに。自然にハハハ

『上田さん、あんまり髪ないのにリンス使いすぎなんですよ』
「し、失礼なこれはちゃんとカットして」
『分かりましたとりあえず早くしてください』

屈んで浴室の真横に設置してある洗面台の下の棚からリンスを出す。
 ・・・・無理矢理奴に買わされた高いリンス。




「ほら」

手だけドアに突っ込んで袋ごと渡す。
手が触れた。触れたその手は熱い、そして湿っている。
そしてストンと重みがなくなった。

「じゃあ、行くからなッ」
「ああ、どう・・・・ちょっと待ってください」

 ・・・・。

「なんだ」
「手が湿って袋開けられないんですけど。」
「何?それぐらい出来るだろ」
「出来ませんよ、シャンプーで手ぬるぬるしてるし」
「じゃあ洗えよ」
「上田さん今、手乾いてますよね。開けてください」
「自分で」
「できるならしてる」
「・・・」



ドアに背を向けた状態でドアに手を突っ込む。

「ほら」
「違いますよもっと手近づけて」
「youが手を伸ばせ」
「のばしてます」
「立ちあがればいいだろうが」
「あ、そうそうもう少しこっちです」
「・・・」

一歩、後ろに下がり浴室内部に近づく。
非常にまどろっこしい行為だが、山田の裸を見るわけにはいかない。
(奴はあまり気にしてなさそうだが。恥を知れ!)



むにゅ

最終更新:2006年09月05日 13:04