カリボネレ○プ2


「 おおぅ、…こ、これは、うっ…凄い、物凄い、効果だ… 」

――由々しき事態だ。エントロピーの法則だ。エントロピーの法則とは、つまり、熱は発生源a点から到達点b点の一方にしか流れ得ない事を表わしている…
――簡単に言えば、今俺の生命の素は、睾丸から尿道を経て、亀頭に達さんとしているという訳だ…
――こんなことはあっても、併し俺は学者だ、こんなまやかしには負けたりはしない!!
――そう、断じて…!!断じて、今ここで山田…奈緒子さんを抱くのは、過ちでは、無く…うっ、いかんいかん!何て罪作りな!

俺のファロス――男根は、今や天を突かん勢いでエネルギーの膨張を始めてゆく。宇宙物理学で例えるならば…
大質量星は俺のこの、ナニ。、さしずめ今の状態と云うのは、超新星爆発の過程――その寿命を終えた恒星、および惑星が
自らの重力を支えきれずに崩壊し、爆発――ブラックホールとなり、周りの全てを飲み込む…

「 全部、うっ、聞こえて…あんっ、ますよ…うっ…上田、さん 」
「 ブラックホールは寧ろ、うっ――…君の、方か。ふっ、ふふふ、くくくく…。縛ろうか?君が僕の戒めを解けないようにする
アルゴリズムは既に僕の脳内で叩き出されている…君には無理だろう。」
「 アルゴリズム…体操?…いつもここから…?」

俺はいつもは着けないスーツのネクタイをポケットから取り出し、先ず、山田の手首上にネクタイをバッテン型に重ねる。
下のネクタイの端を上のネクタイの端に巻き付けて引っ張る。ネクタイの端を持つ手が左右変わる。
そのまま、こま結びの要領で余った端の部分をバッテン型に重ねて、今度も下になったネクタイの端。ここは左手の端を上の端に巻き付ける。 
これで引っ張れば、引っ張るほど硬く締まる結び方になる――。偶数回交わったからだ。
立て結びで少々不恰好だがこれでいい。これは消防隊員がカーテン脱出の際によく使う結び方だ。
山田は必死に引っ張る。馬鹿め。

「 す、隙間が、無い…。馬鹿上田!!貴様のやっている事は全てごりっとお見通しなんだ――!!」
「 お見通しって、見通した所で何の問題解決になる?ふっ、ぶわーぁかぁ! 」
「 なっ…ば、バンナソカナ…!上田さん。逃げないから、ね?これ、外してください…v 」
「 脱出マジックでもしてみればどうだ?YOU…腐っても美人マジシャンだろう。」
「 エヘヘへ!」

――媚薬の効果でなんとなく褒めてしまった。さて、この先はどうしたものか…まあ収まるべきところに収まるのが物理学の常、
いや、延いては人生の常という物だが、媚薬だけの熱膨大では少し寂しい気もする。
「 ――前戯。ふふ、文化的な男女の営みには不可欠だ!」
「 口に出てるぞ、上田!」
「 そんなことより、YOU、そろそろ…我慢の限界じゃないか?ん?」


貧しい乳と書いて貧乳に手を伸ばす。――ウェイト!!ちょっと待て。大きくなってないか?これも媚薬の効果か…
艶々とキューティクルが照り、平安貴族の様な直毛の黒髪が、金木犀の様な甘い香をふわりと漂わせる。
見下ろした唇は薔薇の様に赤く色めき、象牙のような肌は何処までも艶やか…これが、山田だと――…?
もう辛抱堪らん!リビドーが…ジームクント・フロイトよ、リビドーを昇華させたまえ…!

「 あっ…や、やめろ上田…ち、乳を揉むな…!」
「 おおう…図らずも俺が君に投与した媚薬は、興奮によって血行の促進を促し、性的な興奮により女性ホルモンを活発にし、
君の乳房を膨張させているぞ…OH、グレイト… 」

視覚・聴覚・嗅覚・触覚――五感のうち四つが興奮に拍車を掛け、視床下部の命令により自律神経、副交感神経の働きが起こる――海綿体の欠陥は拡張と収縮を繰り返し、
さらに熱の移動を激しくさせる。後は熱をb点からc点へ移動させてやらなければならない。すなわち、放出か、自然消沈か…

「 何と柔らかい胸か!――く、君も中々好き物だな、え?おい。カマトトぶりやがって!」
「 竈…?竈馬?別に虫ぶったつもりは無いぞ!い…言いがかりだ!」
「 はん…素直じゃない。どうだ…俺の掌はな、日々の鍛錬により非常に、緩急をつける、という行動において特に優秀に働く。――ふふ、まあそれが
図らずも性戯に一役買ってしまった。…天才はこれだから困る。」

指先の末端神経までもが脈々と波打ち、軟い胸肉が掌の作用により伸縮するその度に、電光石火のスピードで情報を脳という複雑なコンピュータで解析し、
それを俺の快感に置き換えて、マイ・サンに作用する。

「 う――…ん…やめ、て…上田さ… 」

甘い声も然り――こんな声は未だ聞いたことが無い。俺が常日頃練習として使っている教材の女優などとは比較にならん。艶かしい。艶かしすぎて犯罪だ…!!
乳腺の刺激により山田の乳首は勃起し、薄いワンピースの生地から垣間見え――ん?まさか…

「 YOU…ノーブラ… 」
「 えっ…どうして解ったんですか。」
「 ――ふふふっ…君、胸元を見てみろ。…立ってるじゃないか… 」
矢張りか。俺が囁くと、山田は胸元を見下ろし、驚愕の表情で再び俺を見上げる。腕を戒められている状態で隠せるわけも無く、
もがもがと陸上へ打ち上げられ哀れに空気を求める魚のごとく俺の腕の中で暴れる。

「 かわいいやつめ…最初からそのつもりだったのか。強情っぱり! 」

突起にそっと指先を触れてやる。途端、山田は身をくねらせる。気持ちいいのか。気持ちいいんだきっと。健気に首を震っているのを見ると、
また俺は考えていることが口に出ているらしい。
一挙一動全て可愛らしく思えて仕様が無い。俺は、椅子と山田を引っ張り、二つの椅子を連結させたところへ彼女を横たえる。


―― 一方外では、石原が眼を覚まし、隙間から矢部と聞き耳と覗き見を交代していた。
「 うおおお!…た、大変じゃけぇの兄ぃ…!! 」
「 何だ。何だ石原君。伝えなさい!すべからく明確に伝えなさい! 」
興奮した矢部と石原の顔はすっかり紅潮し、文字通りの出歯亀と化している。

「 報告しますけぇのぉ、…ねぇちゃんが、先生に…ああ…あがな事や、ああああ…こがな事を、さ、されちょるんじゃのぅ。
…ああ。あああ!!ああああああ!! 」
石原は嬉し口惜し、夢路いとし君恋しといった状態で最早正確な報告どころではなく、スーツの袖口を噛んでむせび泣いている。

「 見せなさい!交代しなさい!石原君!!上司命令や石原君!! 」

結局どかぬ石原の顎の下から、矢部は中の様子を引き続き見る。上田が、山田を椅子へ押し倒し、にやにやとスケベ顔をひけらかして
彼女の細い足の間に割り込んでいる。

「 あ、あはぁあああ!!な、なんちゅう…話の流れを聞いとると、これは強姦じゃよ、兄ぃ 」
「 石原。…お前、口は堅いな?…堅いよな。」
「 兄ぃ、だまっとったらわしらも犯罪者じゃけぇのぉ!わしゃあやっぱり助けに行くけぇの!わしゃあ、人の道に『はずれる』ようなこと… 」
「 ――どわりゃァ!! 」

石原の腹部に、今度は肘が入り、うっと呻いて崩れ落ちた。

「 先生、あんた…その貧乳にナニをす…んんん?! 」
矢部はわが目を疑った。上田が、山田のワンピースの肩を、ゆっくりと下してゆく。すると、とても貧乳とはいえない、豊かなバストラインが、
遠目から明らかになっていく。
「 う、嘘やろ…お、おい石原。石原? 」

石原はすっかり伸びていた。

---------- 続 -----------


最終更新:2006年09月04日 02:31