58です。
姫始め後のいちゃいちゃだけですが、2レスお借りします。


  ‥‥‥‥‥‥
  ぱしゃんと、室内に水音が響く。

  「おかしくないですか」

  口元まで湯船に浸かったまま呟くと、私の頭の後ろからその声は聞こえてきた。

  「何がだ」
  「この状況が、です。何故私と上田さんが……い…っ、一緒にお風呂に入ってるんですかっ」

  最後の方はやや早口になる。

  そうなのだ。

  私は上田さんにすっぽり包まれるような格好で、二人で湯船に浸かっていた。

  何故、こんなことになってしまったのか―――

  「そりゃ、YOUが気を失ってしまったからに決まってるだろう」
  「だ、誰のせいだと…っ」
  「君のせいだ」
  「―――は?」

  思わず上田さんの方に振り返って問い詰める。

  「私のせい、って言われても…大体、う、上田さんが無茶しなかったら……気を失ったり、なんか」
  「YOUの身体と反応がいちいち良過ぎて、つい夢中になってしまうんだから、仕方ないだろう?」

  開いた口がふさがらないとはこのことだ。
  『いちいち』ってなんだ。自分の欲望のままに突っ走った結果、私に負担がかかったんじゃないか。

  「な、なんだそれ!私じゃなくて、自分のせいじゃん!」

  いたたまれなさから、再び顔を背ける。

  「それだ」
  「………何がだ」
  「もう何度となくセックスしてるというのに、YOUの反応は最初と殆ど変わらない。お互いに身体の隅々まで見てきたのに、こうして一緒に風呂に入ることも恥ずかしいという。これでたまの逢瀬時に、一度だけで終わりでいられるなんておかしいじゃないか」
  「…別に、頼んだ訳でも」
  「でも、拒みもしなかったろう」

  何という都合のいい解釈だ。
  最初は確かに拒否はしなかったが、2回目はほぼ流されるがままで、最後には拒否云々以前だった。
  しかも、あくまでもそれはそっち側の数であり………こっちは、とても二回や三回どころではなかったというのに。

  「第一、風呂だって汗をかいたままでは風邪をひいてしまうと思ったからな」
  「まさか、私の体を洗ったなんてこと…」

  再び、上田さんの方に顔を向ける。すると、一点の曇りも無い表情で言い放った。

  「風呂に入る前に体を洗うのは普通だろう?もちろん、全身隈無く洗ったぞ」

  だからか、髪のまとめ方が滅茶苦茶だった。
  デカい図体で四苦八苦して髪をまとめてくれたことだけは微笑ましいが、しかし。



  「ちょっと…あー…その…今日は着けなかったから、な?中も…洗ったから」

  上田さんの言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。そしてその意味を理解した途端、思いっきり顔面に拳を浴びせる。

  「ぉぶわっ!」
  「な、な…なっ…何考えてんだ!このバカ上田!変態!」

  恥ずかしさと怒りがない交ぜになり、感情が抑えきれず、もう一度顔面にお見舞いする。
  と、上田は鼻血で顔を赤く汚しながら、尚も悪びれる事なく続ける。

  「着床するリスクが減る訳でもないだろうが、やはりそのままでは不快なものかと思ったんだが」
  「今、それを聞かされた事自体不快です」
  「なんでだよ。さっきまでやってた事と大して違わないだろ?」
  「しっ…知らないうちにされてたのが問題なんだ!バカ!」

  相変わらずデリカシーのない上田に腹をたて、そのままもう出ようと浴槽に手を置いた、その手を上田さんの大きな手で制された。

  「何の真似だ」
  「そんな勢いよく立ち上がったら危ないだろ」

  ―――この男は。

  さっきみたいな事を平気でやらかす割に、妙なところで優しい。
  だから時々困ってしまう。

  「話を戻しますけど」
  「うん?」
  「気を失ってしまったのは、やっぱり上田さんのせいです」
  「何故?」

  「そこまで…き、気持ち良くなってしまう体にしたのは誰のせいだと」

  自分でも言いながら恥ずかしくなる。
  肌を重ねる度にどんどん変えられていくようで、自分がどうなってしまうか怖いのだ。

  「にゃっ!」
  「YOU、あまり可愛い事を言うんじゃないよ」

  上田さんに後ろから急に抱きつかれ、さっき付けられたキスマークを舌でなぞられる。

  「もう…」
  「変わったところでするのも、悪くないだろ」
  「この、絶倫巨根が…」
  「罵倒どころか讃辞にしかなってないぞ?」

  今度は項の生え際にキスを落とされ、仕方なしに上田さんに身を預ける。

  「フン…素直じゃねぇか」
  「お風呂にのぼせただけですよ」

  明日の足腰の状態を少々心配しながら、上田さんの深い口付けを受け入れた―――
最終更新:2014年03月06日 16:19