毛蟹 (リレー作品)



「上の口…って、じゃあ下の口っていうのは、つまり……」

口ごもる奈緒子を尻目に、上田はその物体を楽しそうに弄り始めた。
唸るモーター音に顔を赤らめ、奈緒子は上田を睨み付ける。

「フフ…YOU、さっきのマスターベーションの名残がここに付着しているぞ」

上田がぐにゃぐにゃした物体を奈緒子に差し出してみせた。
先端が卑猥に光っている。

「うっ…上田っ、やめろ!」

取り上げようと腕を振り上げると、奈緒子の体を隠していたシーツがはらりと剥がれた。




「あるといえばあるな。胸。」

上田はしみじみと呟く。
山田の顔は真っ赤である。

「み、見るなっ・・・!」
「しかもなんだ、先端が尖ってやらしい」

山田の裸体に顔を近づけて上田が見つめる
恥ずかしさで山田は発狂しそうだった。
つん、と尖った先端を上田の右手が弾く。左手は例の”毛蟹”を持ったままだ。







このまま胸を注視され続けるのも死にそうに恥ずかしいが、上田が手にした物で上田にいいように
されてしまうのもこれまた死にそうに恥ずかしいし、勢い余って上田の巨根で、などということになれば
間違いなく死んでしまう。
つんつんと上田は奈緒子の胸をつつき
「案外、おもしろいな」
などと失礼なことまで言う始末だ。
「う、上田さんっ!」
「なんだ?」
ぎょろりとした目が奈緒子を見上げる。
「あ、あのっ、返してください。毛蟹」
上田は驚いた顔をする。
「たとえば返したとして、Youはこれをどうする気だ」
「た……食べます」
上田は、奈緒子の名残でてらてらと先端が光るいかがわしい物を奈緒子の手に握らせる。
「じゃあ、食べてもらおうか。俺はその様子をじっくりと、がっつりと、ぶっつりと、観察させてもらおう。科学者だからな!」
そんなことを言い出すのは奈緒子とて予想済みだ。
「それは構いませんが、この毛蟹は私のものですよ」
「ああ、別に俺は要らない」
「だから、私が独り占めだ! 上田、おまえには触らせない! えへへっ!」
これこそが奈緒子の最終防衛ラインだ。最悪、大人のおもちゃでマスターベーションをするところを、じっくりと、
がっつりと、ぶっつりと、観察されたとて、手を出されなければどうということは――、どうということは――
「あるけど」
「何か言ったか?」
「なんでもありません。とにかく上田! おまえはこの線から入るな!!」
奈緒子は尻で後ずさると、畳の縁を手に持ったいかがわしくぷるぷるとシリコン部分を震わせるピンクの毛蟹で指し示した。




「入るな、と言うなら入らないが、on lineはありか?」
「駄目だ! サッカーと一緒だ!」
とっさに叫んだ後で、はてサッカーのゴールはオンラインだとどうだっただろうか、と悩むが奈緒子は勢いで押すことにする。
「とにかくそこから入るな。そしたら……食ってるところくらいは見ても……いい」
顔が熱くなっていくのがわかる。手が震える。その震えに合わせて毛蟹がまたぷるんぷるんと震える。
「よし、わかった」
上田はそう言うと、その長身を寝そべらせ、畳の縁ギリギリに肘をあわせ頬杖を付いた。
「準備はOKだ。You、こっちへ向けて足を広げろ」
「なんでだ!」
「観察者によく見えるようにするべきだろうが」
「ふざけるな!」
だが、上田に見せないように横になるには部屋の広さが足りない。恨むべきは貧乏なのか。
微妙に角度をずらす、という些細な抵抗で奈緒子は上田の方へ足を向けて横になった。
かるく立てていた膝を左右に開く。
上田が息をのむのがわかった。
「You……。いや、なんでもない。続けろ!」
鼻息荒く上田が言う。
奈緒子は手にした毛蟹、もとい、大人のおもちゃの先端を自分の秘所にそっと押し当てた。

最終更新:2007年05月06日 23:52