大人のおもちゃ (リレー作品)


この作品は、
巨根対策として、大人のおもちゃでトレーニングに励む奈緒子が読みたい。
で、うっかり上田にばれてえらいことになるのも読んでみたい。
という、221の一言から始まった・・・



大人のおもちゃネタ、出だしはこんな感じで。
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奈緒子は目の前に広がる異様な光景に怖気づいた。

----これは一体何? 私は幻を見ているのか?


毛蟹セットと書いてある箱を受け取ったのはお昼すぎ。

バイトもなければ金もない。もちろん食料なんて底を尽きた。
ならば、体力を温存すべく部屋で寝ているしかない。
ただひたすら部屋でゴロゴロしているだけの、そんな状況で届けられた毛蟹セット。

毛蟹なんて高級食材を、注文した覚えも、贈られる覚えもなかったが、
箱の側面に”毛蟹”の文字を見つけたとたん、宅配のお兄さんからダンボールをもぎとり、
受領書にサインするなり押し付けて、奈緒子は恐ろしい勢いでドアを閉めた。

宅配のお兄さんが「間違いでした」と言ってももう遅い。
すでにサインをしてしまったのだからこれは私のモノだ。

彼女はニンマリほくそ笑むと、いそいそと毛蟹セットの開封を始めた。

波をバックに書かれた毛蟹の文字、その逞しい筆の運び。
毛蟹というたった二文字に目が眩んだ奈緒子は気づかなかった。
生もののはずなのに常温配送であること。
箱の大きさに比べて明らかなその軽さ。


そうして奈緒子はパンドラの箱を開けたのだった……。



「毛蟹は?毛蟹はどこ?!」

箱を開けたとたん奈緒子の目に飛び込んできたのは、さらに小さな箱の山だった。

ははーん、この中に毛蟹が一個一個梱包されているのだな。
さすがは毛蟹。高級食材様。

奈緒子ははやる気持ちを抑えて、箱を開封する。

しかし、その開封スピードは徐々に遅くなっていき、しばらくすると彼女の動きがピタリと止まった。

一個目は何かの間違いだろうと思った。二個目は毛蟹の足に見えなくもなかった。
三個目を開封したときには、さすがにおかしいと思いだした。
四個目は手に取て見ただけでほうり投げた。

そうして、今、彼女の前には、
大きさも色もどれ一つ同じものがない、無機質な物体が並んでいる。

──これは一体何? 私は幻を見ているのか?

毛蟹の姿はどこにもない。

奈緒子は宅配便の箱を見る。
そこには大きな波をバックにした毛蟹の文字が、今も力強く、鮮やかに印刷されている。

そして、目の前に広がる、男性自身を模した──いわゆる大人のおもちゃ達。

いくら奈緒子でも、これらの品々がどいういうのものかぐらいは知っている。
それが何故毛蟹の箱に入ってきたのか、どうして自分の部屋に届けられたのか、それが分からない。

けれど、現実に此処にあるのだ。

迷いながらも、奈緒子はそのうちの一つを手にとってみた。
先端がフック状になっていて、小さな突起が無数についている。
毛蟹…ともいえなくもないが、色はショッキングピンクで毒々しい。
ただ、他のおもちゃの明らかな造詣に比べれば、幾分手を出しやすかった。

──こんなの使っている人間がいるのか?

そう思いつつ、彼女の脳裏にある人物の言葉が浮かぶ。

『物事っちゅうのはな、何事も慣れが大事や!』

あの男がそんな言葉を発したのは何がきっかけだったか──



奈緒子は改めて、「それ」をまじまじと見つめる。宅配業者に住所相違で戻すにしても
もう開封済みである。本やCDとは訳が違う。万が一使用済みとでも思われでもしたらと考えると
返品するのも躊躇われた。
「それ」は奈緒子のテーブルに鎮座している。形がまだ抽象的なので
手品道具といってしまえばそう見えるかもしれない。大人のおもちゃ屋などに入ったこともない
奈緒子にとってこうしたものを手に取るのは、もちろん初めてのことである。
ソフトラバー製で手触りは見かけよりも柔らかい。いじり倒しているうちに生来の好奇心がうずうずと
鎌首をもたげて来た。
「一回ぐらい別に…」奈緒子は呟くと、玄関のドアを見る。鍵はかけてある。
夕方で日も沈みかけているので、電気を付けなければ留守だと思われるだろう。
部屋の外に気配がないことを確認すると、おもむろに奈緒子は「それ」をジャージ
の上から太腿にあてがう。
電源は三段階になっているので弱に設定した。「ヴーーン」無機質なモーター音が部屋に響いた。
ジャージの上からでも振動は十分に伝わってくる。
「くすぐったい…」
快感よりもくすぐられるようなこそばゆさが先にたつ。
ゆっくりと一番大切な部分へと動かしていく。
「ん…」奈緒子は大きく息をつくと「それ」は奈緒子の秘所に
布越しに触れた。「んむぅ?」鈍い快感が体の中心から広がっていく。
病み付きになりそうな感覚に溺れる様に奈緒子は下着を下ろしていく。
段々ものが考えられなくなってくる。止められない…。そう思いながら「それ」は
奈緒子の秘所に直接触れた。
「きゃああああん」
ビクンと奈緒子の腰が上がった。電流の様な快感のパルスが奈緒子の脊髄を伝わる。
完全に快感の渦に飲み込まれた奈緒子は、「それ」を股間の中に誘う。




「ふむぅ。はあああああん。あん。あああん。」全裸になった奈緒子は「それ」を彼女の体内へ導く。奥までは届かないので
入り口までだ。甘美な振動に脳が焼ける。
「うえ、うえださんっ。上田。バカうえだ。」我を失った奈緒子はしきりに男の名を呟やきながら行為に没頭する。

「留守か。せっかく人がYouの好物の万疋屋のモンブランを買ってきてやったのに」
池田荘の廊下に長身の男が立っている。暫し考え事をした後、その男は合鍵を使って
ドアを開けた。まるで自分の部屋であるかのごとく、なんの躊躇もなく。

「――――!」全裸の奈緒子は。ドアが開くこと自体信じられないように、玄関を眺めた。
頭が回らない。何が起こっているのか理解するのに時間が酷く時間が掛かった。
上田が立っていた。いや勃っていた。「上田…さん!? バカ上田出てけ消えろ!!!!」
奈緒子は手元のシーツを手繰り寄せて身体を隠すと、傍らの空き箱やらなにやらを投げつける。
波間に佇む毛蟹が上田の頭にヒットする。

「なんだYouはマスターベーションの途中か。マスターベーションは生物の基本だ。
何も恥ずかしがる必要はない。さあ、一緒に快楽の海へと漕ぎ出そう!」
瞬時に事態を把握した上田は奈緒子へとにじり寄って行く。

「ってちょっとまて上田さん。これは誤解だ。陰謀だ。そうだ。毛蟹がやってきて
私に催眠術をかけたんだ。そいつの仕業ですよ。」
幾分冷静さを取り戻した奈緒子は必死に取り繕いながら上田から後ずさりする。

「Youが俺の名前を呟きながらマスターベーションしているのを見た。なにも気取る
必要はない。さあ」
上田はシーツ一枚の奈緒子に追いつくと、華奢な身体を抱きしめた。
「や、やめろ上田…。う。」奈緒子は抗おうとするが、身体に力が入らない。上田にキスされると
先ほどまでの快感が蘇って来た。奈緒子の息が熱くなる。シーツを払いのけ、彼女の全身を弄り始めた
上田は、彼女の傍らに落ちている「ソレ」に気づく。



「おおぅ!?」
上田は素っ頓狂な叫びをあげた。「ソレ」を手に取り
「You、念のために尋ねるが、これはYouの物か? Youの私物か? Youの愛用の品なのか?」
と、念の入った尋ね方をする。
「ば、ば、ばかっ! そんなわけないでしょう! これは……そう、これは毛蟹ですっ!」
冷静さを取り戻しかけていたのに、上田に見られてしまったことで、奈緒子はまたうろたえた。
生まれて初めて「ソレ」を見た奈緒子と違い、上田にはこれが何をする物かは一目瞭然、いや、
ひょっとしたら影絵にしてクイズを出しても当てるに違いない。
なにしろ、予習だけはばっちりの男なのだ。

「俺は寡聞にしてこんな毛蟹は初めて見たが?」
「だ、だって、毛蟹って書いてあるじゃないですか! こんなに!」
奈緒子はさっき放り投げた箱をたぐり寄せ、上田に突きつける。
「ほら!」
確かに、などとうなる上田を前に、奈緒子はシーツをこっそりと身体に巻き付けながら、
そっと箱ごしに上田を仰ぎ見た。
上田の悩んでいる顔は、困ったことにかっこいいのだ。
だが、奈緒子の目線は上田から外れ、その手前の箱に釘付けになる。
私の毛蟹はいったいどこへ行ってしまったのか、と思いながら、箱に描かれている毛蟹でいいから
食いたい、と無意識のうちに身体が前へと動く。

「そうか」
上田の発した声に、ぴたりと奈緒子の動きが止まる。
「……なんですか?」
「Youはこれを毛蟹と言った。そうだな?」
「そうですが」
上田は箱を横へ放り投げ、奈緒子の上へとのしかかってくる。もちろん手にはショッキングピンクの
ぐにゃぐにゃとした形状の、毛蟹とは似ても似つかない「ソレ」を持って。
「なら、Youはこれを食べる、と言うんだな」
上田の目があやしく光る。
「はい?」
「食ってもらおうじゃないか」
「え? いや、ちょっと……上田? ば、ばかっ! こんなもん食えるか!!」
「食べるのは何も、上の口とは限らないぞ」



最終更新:2006年12月14日 10:54