不老不死 by 初代名無し さん

3


奈緒子は、ベッド上で上田に身を任せていた。
奈緒子の白い体を、
上田の大きな手が、長い指が、唇が、全身を余すことなく愛撫する。
身をよじらせ、途切れ途切れの吐息を漏らし、
奈緒子は上田に愛される悦びを、そしてその快感を全身で表していた。
しかし、全てを忘れ、その快感に身も心も委ねてしまう事が出来ずにいた。
一抹の不安を捨て去ることが出来ずにいた。

上田と体を重ねるのは、無論、初めての事ではない。
両手で足りるほどの回数ではあるが、
その度ごとに奈緒子の体は、はっきりと反応するようになっていた。
奈緒子が悦びを感じている事は、上田にも伝わっていた。
しかし、それも前戯までである。
奈緒子が充分に濡れ、上田自身を受け入れる時、
奈緒子の表情は、愉悦から苦悶へと変わるのである。


上田の逞しい根っこが、奈緒子の柔肉を押し分けて中に入っていく。
少しずつではあるが、確実に奈緒子の中に入っていく。
奈緒子は眉間にシワを刻み、唇をかみしめて苦痛に耐えた。
完全に繋がった事を確認すると、上田は前後に動き出す。
上田が絶頂を迎え果てるまでの間、
奈緒子はこの苦痛に耐えなければならないのだ。
すがるように上田にしがみつき、
この時間が早く過ぎ去ってくれるよう、そればかりを願っていた。

どれくらいの時間が過ぎただろう、
上田は一瞬身を震わせ硬直し、その欲望を発散した。
力強く、激しく動いていた上田の動きが止まり、
朽ち果てるように奈緒子の上に崩れ落ちた。
奈緒子は、呼吸を荒くし疲れ切った上田をいたわるように、
愛おしむように抱きしめた。
そして、この苦痛からの解放を喜んでいた。


本能的な欲望を満たし、
上田はいつも通りの自分を取り戻した。
奈緒子を思いやる余裕を取り戻した。
上田が見たものは、
目に涙を浮かべ、微笑んでいる奈緒子。
上田は、その涙の意味を即座に理解した。

 「やはり、まだ痛むか・・・。」

奈緒子は何も答えないが、
シーツに残った赤いシミが全てを物語っていた。
上田は奈緒子をいたわろうと言葉を探したが、
それを見つける前に奈緒子が言った。

 「私なら平気ですよ。
  ・・・・・・上田さん、気持ちよかったですか?」

 「YOU、はしたないぞ。
  女性がそんなことを聞くものではない。」

2人は笑った。
今の幸せを噛みしめるよう、しかし互いの笑顔はどこか悲しげでもあった。
奈緒子の問いにはどういった意味があったのだろう?
単なる好奇心か、おふざけなのか、
それとも、自分の苦しみを伝えたかったのだろうか・・・。


時は今に戻る。

考え込んでいた奈緒子は、
知らず知らずのうちにブランコを揺らしていた。
2人の間に存在する気不味さの原因が、自分にある事は分かっていた。
上田と体を重ねても、共に悦びを感じることが出来ない自分。
しかも上田は、その原因が自分にあると思いこみ、己を責めている。
全ては自分が悪いのに・・・。
一体、どうしたら良いのだろう。
奈緒子の苦悩は、その眉間のシワとなって現れていた。

ブランコが描く孤が段々と大きくなっていく。
冷たく澄んだ風が奈緒子の顔をさらう。
風は、自分の中のモヤモヤも一緒にさらってくれるようだった。

   上田さんに話してみよう。
   上田さんならきっと理解してくれる。
   こんな私でも受け入れてくれる。
   全て上田さんに話してみよう。

奈緒子は意を決してブランコから飛び降りた。

 「ヤアッ!!」

グキッ!

 「いてててて・・・・」

~ つ づ く ~

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最終更新:2006年10月28日 21:46