跪いて足をお舐め! by 347さん

本編



私と上田さんはソファーに座ってテレビを見ていた。
食事も風呂が終わりあとは眠るだけ。
ちびちびと上田はビール、私はお茶を飲んでいる。

少しだけ私は違和感を抱いていた。

なんか、なんでだろう、なんでだ!?
今日は上田が触ってくるのだ。

最初(30分ぐらい前)は抵抗してた、そっと手が近づいてきたら避けていた。
でも今はもう、攻防戦に疲れてきつつある。


手が大きい。




「もう、なんですか、さっきから」
上田の手は今私の髪に触れていた。髪が痛むだろうがっ。
「・・・ん・・・いや別になんでもない」
「嘘付け。」
「いいだろうが別に」
よくない、全く良くない
「それに、触るのだって初めてじゃないだろ」
「初めてって・・・」

抱きつかれた事はある。抱きついたことも・・・ある。
キスは数回した。
でも断じて言う、一線を越えたことはまだない。
まぁ同居しているのだが、これは理由がちゃんとした理由があるのだ。
私が居候させて貰って(こう書くと上田が偉そうなのでムカツクのだが)いるのだ。




「それにしてはyou髪が濡れているな、明日寝癖が悪くなるぞ」
「別にいいですよ」
「お前な、女だろ」
「・・・そうですけど」
「身嗜みには気をつけろ」
「上田さんに言われたくないです」

髪が梳かれる

「だから、なんで触るんだ!」
「別に?触りたくなったから触るだけだ。さらさらしてるからな」
「威張って言うな。私の髪だろ」
「シャンプーとかは家のを使ってるだろうが」
「そうですけど」

ばっ、髪を振り払う。 




「とりあえず私寝るんで。」

私はそう宣言して立ち上がった。背を向けてリビングから離れようとする
きっと上田は酔ってる。今日は近寄らない方がいいだろう。
ここの所、家に帰ってくるの遅かったし。疲れてるんだろう。
疲れたら人間、アルコールが回りやすいのは私でも知っている。

「――待て」
手が引かれた

「なんですか、もう」
「もう少しいいじゃないか」
「執拗い!寝ます」

怒って振り向いた。口付けされた。




どん! 渾身の力を入れてその大きな体を押し返す。

「う、え、だー!お前巫山戯るのもいい加減にしろ!」

別にキスに動じてるわけではない。でもなんとなく厭な気はする。

「別に巫山戯てはないさ。」
目の前に立ちはだかる。何故か上田がやけに大きく見える。ええい!でもっそんな事知らない。
私は寝るんだ!

「・・・ただ、少しおかしいかもしれない」
「うん、おかしいです」
 ・・・真逆こいつ媚薬でも飲んでるんじゃないか?
こんな上田・・・そう、あれはいつだったか上田の研究室に連れられた日・・・そこで媚薬を飲んだ上田の反応に似てる。
か・・・カリボネだったか?
そうだ。あの時も迫られた。




まぁ・・・それはさておき。

「じゃ、そういう事で」
じりじりと後ろ足で後退する。
「そういう事でって、逃げる気か」
「今日の上田さんおかしいです!」
「だから、自分でも少しおかしいと言ってるじゃないか」
「そうか・・・自覚してるなら自分でどうにかしろ!」
「それは無理かもしれないな」
「な、」


また唇が重なった。
いーかげんにしてくれ。とりあえずにげ、――!?





「ちょっ、どこにキスしてるんですか!」
上田の唇は、私の唇から横に移動し始めていた。しかも軽く吸われてる。

ちょ、まて
ちょっと、まて
ちょっと、待ってくれ
頭の中で警報が鳴り始める。やばいぞ、やばい!

「いや、上田、やめッ!」
恥ずかしくて言葉がとぎれとぎれになる。





「ほう、そんな声も出すのか・・・」
「そんな事ほざいてる場合か!離せ・・・!」

唇が耳たぶをなぞり、口に咥えられた。

「ぎゃーっ!」


思わず口から出た色気のない叫び声に、上田の行動がぴたりと止まった。
ふっ、助かった・・・
って手や肩は 以前がっちりと掴まれているのだが・・・



「you・・・それはないだろ」
「う、五月蝿い!取りあえず離れろ!離せ!叫ぶぞ!」
顔を真っ赤にして叫んだ、

すっと、手が離れていった。
ふぅ・・・

「悪かった・・」
「分かったなら、いいです」
「だから」
「はい?」

上田の普通では有り得ないような行動(もじもじ、とでも言うのか?)に ただ怪訝さを感じる




「だから、本当に今のは悪かった、・・・するならちゃんと聞かないとな」
「何が」

「you、俺は君とセック」
「わーっ!言うな聞くな!!馬鹿上田!!」
「you・・・」

きっ、と上田を睨み付ける

「何を企んでる貴様」
「何も企んでないさ。欲情しただけだ」
「よ、・・・よくじょうって・・・・」

「俺はyouが好きだ。」




真面目な顔して上田が言いやがった。

 ・・・・・・げ。

「きゅ、急に何言いやがるんですか!」
「you口調が、」
「そんな事はどうでもいい!
 何突然言うんですか。ああ、分かった!分かったから上田・・・酔ってるんだな。」
「酔ってないさ別に。」
「あてになるかぁっ!もう目を醒まして」
「だから」

不意に顔に影が差した。

「意識ははっきりしている、俺は君が好きだ。駄目か?」

なぜなら う えだ、が私の顔を覗き込んでいるからだ。顔は近い。近すぎる。このままではまたキスされる。



ずっ、後ずさって 咄嗟にソファーの上に乗り上がった。

上田はじりじり近寄ってくる。ゾンビの如く。


「ち、近寄るな」
「youが逃げるからじゃないか」
「頼む来るな」
「別になにもしないさ」

ああ、まるでこれでは怪物から逃げ纏う美女の図じゃないか!
        • 駄目だ、此処で貞操を奪うわけには!




「・・・・・ふぅ」
しかし・・・目の前で上田は肩の力を抜いた。

「悪かった。そこまで怯えるならいい」
上田は私から目をそらす。

たす、かった・・・?
目の前の上田は打ちひしがれている。


「you、でも俺が君を好きな事は確かだから」
上田が私に背を向けたままそうぽつり、と漏らした。

「じゃあ、ちゃんと寝ろよ。今日は冷えるからな」
上田はうなだれてリビングを出ようとした。

「・・・ちょっと待ってください」
気づいたら言っていた。自分自身何を言うつもりなのか明確に分かってないのに。




「何だ?」
上田がこっちを向いた・・・なんだろう、心なし嬉しそうに見えるのだが・・・

私はどっかりとソファーに座る。

「べ、別にいいですよ」
私は一気に言う。
 そこまでの覚悟があるのなら。

「本当かッ!?」
上田の目が輝く・・・・・・・・・・・・・・こいつ・・・さっきの切なそうな行動って演技だったんじゃ・・・


 ・・・なんかむかついてきた。




「で、でも条件があります」
まぁ・・・でも”良い”と言ってしまってしまったものは仕方ない。・・・・・・・いやでも、撤回しようかな・・・

「条件?」

上田が私に近づいてくる

「だから近づくなって、オイ!」
「ああ、すまん。で、なんだ条件って?」
「・・私が出した条件に従ってくれたら、・・・いいです」
「つまり・・・ヤらせてくれると?」
「うにゃッ!生々しい事を言うな!」
なんてことを言うんだこいつは!

私は右足を上田の前にでんっ、と置いた。

「私を・・・抱きたいなら、――ここに跪いて足を舐めてください。」



 ・・・・ふっ、勝った。


最終更新:2006年09月05日 13:35