入れ替わり not ラブラブ編 by 243さん


「…やまだ」
「好きだって、言ってください」

さっきより力を込めて抱き締めてくる。

両思いだとわかっていたのに、なぜもっと早く言わなかったのだろう。
上田次郎の体で、山田奈緒子を抱き締めてやりたかった。
その夢はもう二度と叶わないのかもしれない。

上田は奈緒子に力一杯しがみついた。

「…好きだ。好きだ、ずっと好きだった。
 君が好きだ…」

あれだけ悩んだことなのに、一度言葉にすると何度言っても足りない気がする。
何十回もの『好き』を伝えて、上田は顔をあげた。



奈緒子は恥ずかしそうに笑い、自分の手から上田を解放する。

「…エヘヘヘ」
「何照れてるんだ、今更」

奈緒子は上田をじっと見つめた。
長い髪を愛しそうに撫で、微笑む。

「私、いつか上田さんに抱かれたいって思ってました。
 上田さんの大きいから、相当痛いだろうなぁとか考えたりして」

確かに痛いだろうなぁと上田は無言で頷く。
奈緒子が抱かれたいと言ってくれたことは、上田にとってとても幸せなことだった。
今すぐにでも押し倒したいくらい愛しい。

「…するか?今から」

奈緒子は上田の言葉に一瞬きょとんと固まり、
 顔を真っ赤にして慌てふためく。

「えぇ!?い、今から…
 でも痛いのは上田さんですよ!
 大丈夫ですか?」

言われてみればそうだ。
今は奈緒子の体なのだから、入れられるのは自分。

痛い、苦しい、怖い…

遠退きかけた意識を呼び戻し、奈緒子を見やる。



期待に満ちた瞳に少し申し訳なく思いながら、
 上田はなんとか思いついた言い訳を話す。

「俺もやりたいのは山々なんだが、重大なことに気付いた。

 ここには避妊具というものがない!
 今日は諦めるしかないな。
 誤解するなよ、痛みが怖いわけじゃない。
 避妊ができないからやめるんだ」
「嘘つけ、小心者」

奈緒子の瞳が、疑いと軽蔑を帯びたものに変わる。
上田は気付かなかったことにした。

「でも確かに避妊できないから無理かぁ…。
…ん?」

奈緒子は部屋を見渡し、こっちを振り返って嬉しそうに笑った。
急に立ち上がり、部屋の棚や箱を探り出す。

「おいおい、どうした?」



「コンドーム探してるんです。私持ってました、コンドーム!」
「そんなデカい声で連呼するな!」

それより奈緒子がコンドームを持っていることが意外だった。
自分で買ったのだろうか?
いや、もしかしたらあのお母さんからプレゼントかもしれない…。

上田は狭い部屋を必死に引っ掻き回す奈緒子に問い掛けた。

「YOU、なんでそんなもの持ってるんだ?」

振り返った奈緒子はにんまり笑い、胸を張って言い切った。

「女のたてがみってやつですよ!」
「たしなみだ」
「どっちでも同じだ!」

奈緒子は昔、ジャーミー君が落としたコンドームの箱をお菓子だと思い持ち帰った。
開けてがっかりしたのだが、もしもの時のためにと取っておいたのだ。



「あった!こんな小さいのに入るのか…?
 上田さん、どうですか?入りますか?」

奈緒子は箱からコンドームを取出し、袋を破って上田の目前に見せ付けた。
上田はこれから始まるであろう行為に、色んな気持ちで胸を高鳴らせる。

…落ち着け次郎、もともと伸縮性のある器官だし子供を産むところだ!
俗に鼻からすいかを出すとかいう表現もあることだし…
 …何とかなる、たぶん入る。
それに俺は天才的な教授じゃないか!
計算で痛くない体位に持ち込むんだ!
A地点からB地点へ…角度は75度、力を抜きつつ誘導する。そしてだな…

「聞いてるか!上田!」

奈緒子は独り言を言い続ける上田の肩を揺さ振った。
上田ははっと我に返り、こくこくと頷く。

「えっと…立たせてから、入れるんでしたよね」
「あ、あぁ…そうだ」




上田がそこに手を伸ばすと、奈緒子は照れ臭そうに手を制した。

「自分でしたいのか」
「違いますよ。クチでしてください♪」
「それはできない!!」

上田は口を塞ぎ、ぶんぶんと首を横に振る。
自分の性器を口に含むなんて、容易にできることではない。
だが奈緒子はどうしてもしてほしいらしく、怯える上田ににじり寄る。

「いいじゃないですか、ちょっとだけですよ」
「そんなもの口に入れられるか!」


最終更新:2006年09月16日 11:39