入れ替わり not ラブラブ編 by 243さん


「…これが女の体…」

なんだかもやもやする。
この感覚は、イってしまえば終わるというわけじゃないようだ。

続きを…したいかもしれない。

さっきの自分の心と反している気持ち。
罪悪感でいっぱいになる。

「…とりあえず、山田を起こして…
 いや、まずこの処理を何とかしないとな」

起き上がって、奈緒子の体を起こそうと試みる。
…重い。動かない。

「ふぬぅぅ…ベストを尽くせぇー!!」

何とかひっくり返し、仰向けにさせた。
そっとズボンに手をかけ、脱がしにかかる。
下着と一緒に引き摺り下ろすと、
白濁の液体が大量にとろりと体を伝った。

「…。最近してなかったからな…。
 とりあえず洗って干して…」

無性に恥ずかしくなり、
汚れた下着とズボンを抱えてシンクに走った。
軽く洗った後、もう一度奈緒子に駆け寄る。
タオルを探し、下腹部を拭っていった



山田奈緒子の視点から見る、上田次郎の体。
身長もペニスも、なんだかやたら大きく見える。

「あと少し…起きるなよー…」
「うーん…?」

あっさり起きるか!!!!!
冷静に、冷静に…

「あれ…?あ、上田さん…」

こういう時、どんな顔をするべきなのか分からない。
不自然な笑顔のまま、タオルをそばに置いた。
奈緒子はタオルに視線を向け、下半身の異変に気付き慌てて飛び起きた。

「…!!えぇ、えっと…ごめんなさいっ!」

目をつむって両手を合わせる奈緒子が、少し可愛く見える。
何だかまたムラムラしてきた。
思い切って、続きがしたいと言ってみようか。
いや、さっきあんなに拒否したのに誘うなんて事は…

「…おーい。怒ってるんですか?」

上田の顔の前で手をひらひらさせ、奈緒子は寂しげに呟いた。

「!い、いや違う!
 …その、今後のことを考えていたんだ。
 このままもとに戻れなかったら…」



適当な言い訳のつもりだった一言だが、重要な問題だ。
大学の教授と自称天才奇術師では、立場が違いすぎる。

奈緒子はしばらく考えた後、頷きながら言った。

「…結婚するしかないですね」

…結婚?まさか山田の口からそんな言葉が出るとは…。

奈緒子は唖然としている上田を真剣な面持ちで見つめた。

「私、一生上田次郎として生きるんですよ。
 でも本を書いたり講演なんて無理だし…
 結婚すれば、一緒にいても怪しまれないでしょ」

話が飛びすぎじゃないか!?
だいたいそんな愛のない結婚なんて!
上田はあくまで冷静を装い、大人の落ち着きで奈緒子を諭すことにした。

「…そんなに簡単に決めていいことじゃないだろう?
 落ち着きなさい。
 今までだって、何だかんだで一緒にいたじゃないか」

恋人ではなくても一緒にいる。
罵りあったりするけれど、誰よりも相手を理解している。
上田は奈緒子に思いを寄せてはいたが、
そんな微妙な関係でいることがとても心地よかった。
そして、きっと奈緒子も同じ気持ちだろうと思っていた。
だからこそ素直に言い出せず、ここまで来てしまったのだ。



「…上田さん」
「ん?」
「上田さん、私のことどう思ってるんですか?」

これは…そういう意味なのだろうか?
素直に好きだというべきなのか?

「どうって…それは…」

奈緒子はうつむき、ゆっくりと息を吸って顔をあげた。

「…あの時の…黒門島の、『なぜベストを尽くさないのか』。
 意味わかってました?」

そういえば、あの時奈緒子にもらった紙にはそう書いてあった。
上田は自分のプロポーズのことでいっぱいいっぱいだったが…。

「…どんな意味だ?」



奈緒子は悔しそうに唇を噛み、上田を見つめて言い放った。

「~あれは…私のこと好きだって、はっきり言えってことだ!」
「…え!?」
「…っ…う…」

奈緒子の瞳に涙が浮かんでいる。
自分からこんなことを言いたくなかったのだろう。
…素直に告白しておくべきだったのか。

上田は少し後悔し、おろおろと奈緒子を見ているばかりだった。
奈緒子の目尻から涙が零れ落ちる。

「…それは…いや、手紙を交換した時にプロポーズしただろ、あの紙に書いて…」
「あっ…あんな中途半端なことに返事できるわけないだろ!
 また勘違いかなって思ったから…言えなくて…!」

上田から顔を背け、奈緒子は頬を伝う涙を拭う。
奈緒子の言う「勘違い」は糸節村での暗号のことなのだが、
上田は心当たりがなく首を傾げて唸るばかりだった。
どうしたらいいかわからず奈緒子の頭を撫でていると、
不意に優しく抱き締められる。

「…好きです…上田さんが好き…!」


最終更新:2006年09月16日 11:36