宝石乙女まとめwiki

気を引き締めて

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匿名ユーザー

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 最近の某は、どうも情けない姿ばかり主にさらしている。
 昔はそんなこともなかったのに。この時代で目覚めてから、どうも調子がおかしい。
 一体何が、それほどまでに某の調子を狂わせるのだ……。
 ……悩んでいても仕方がない、か。
 ここはマスターの前でも甘い姿を見せないように、気を引き締めねば。
 目の前にある水を張った桶を手に取り、頭から被る。
「……ふむ、これは涼しいな」
 気を引き締めるつもりが、この暑さでどうにも効果が薄かったようだ……。

          ◇

 先ほどから家事に没頭している珊瑚。
 天の相手をしていた俺だったが、何故かその動きが気になって仕方ない。
「なぁ天、何か珊瑚の動き鈍くないか?」
「えー? そんなこと無いと思うよぉ」
「そうかぁ? 何か硬いというか何というか」
 もしかしてどこか調子でも悪いのか?
 宝石乙女だって人形だから、実はメンテナンスがいるんじゃ……。
 だからといって、俺みたいな素人に何が出来るかという話になるが。そもそも俺に触られるのなんて相当嫌がるに違いない。
 ……まぁいい、とりあえず聞いてみるか。
「なぁ珊瑚、油でも切れたか?」
「……宝石乙女が潤滑油を使っている訳無いだろう」
 早速突っ込まれた。しかも冷ややかな視線だ。
「それより主、天河石と遊んでばかりいないで買い物にでも行ってきてくれないか」
「え? あ、あぁ……」
 そして何だろう、一言に普段より厳しさがあるというか、命令されてる感じがするというか……。
「お姉ちゃん、もしかして怒ってる?」
「怒ってなどいない、気にするな。それより買い物だ、夕食の材料がない」

「何かお姉ちゃんむすーってしてたね」
 半ば強制的に夕食の買い物に出された俺と天。
 天の言うとおり、今日の珊瑚は何というかやたらと不機嫌に見えた。
「そうだなぁ……」
「マスタぁー、またお姉ちゃんにいじわるした?」
「って、俺がどうして珊瑚に意地悪なんか……」
「だって、いつも『それがしをからかうなーっ』って、怒らせてるよ?」
 珊瑚の真似らしく、腕を振り上げる天。
 まぁ、からかうことならそりゃああるが……そこまで酷い意地悪をした記憶もあまりない。
「きっとマスタぁーにいじわるされるのが嫌だから怒ってるんだよっ。早く謝らないとおうちから捨てられちゃうよぉ!」
「いやいや、さすがにそれはないだろ。というか俺の家だっつーの」
 まぁ、家のことはちゃんとしてもらっているので今更権利主張も無いが。
「でもでもぉ、お姉ちゃんきっと意地悪されてしょんぼりさんだよ? ちゃんとごめんなさいーってしなきゃめーっ」
 俺のズボンを掴み、まるで子供に注意するかのような態度の天。
 ……まぁ、天の言うことも一理ある。
 それとは別に、家事を珊瑚に任せてからはどうもあいつに負担ばかりかけてる気もするしなぁ。
「……よし、今日は俺が珊瑚の好物でも作ってやるか。何かいいメニューあるか?」
「お姉ちゃんのー? んとねぇ……カボチャとぉ……」

          ◇

 主達が帰ってきて早々、某は天河石の手によって別室に隔離されてしまった。
「いいよーって言うまで出ちゃ駄目だからねー」
 それだけを言い残し、天も部屋を後にする。
 一人の超される某……もしかして某の態度が気にくわないのか?
 うぅむ、別に不機嫌そうにしていたつもりはないのだが……周りの視線とは難しいものだな。
 ……仕方ない、ここは謝っておこう。そうでないと居心地が悪いし、夕食も作れない。
 だがしかし……今は部屋を出るなと言われている。ここは素直に従うべきなのだろうか……。
「おい天っ、そうじゃなくてだなぁ」
「にゃぁ……」
 ふすまの向こうから、二人の声が聞こえる。
 それに物音……一体何をしているんだ?

「お姉ちゃん、いいよー」
 小一時間ほど経ったところで、やっと天に呼ばれる。
 さて、一体何が起きたのか……居間へ続くふすまを開けてみる。
「……これは」
 目の前には、テーブルに置かれた夕食の数々。
 なんと、先ほどの物音は料理をしていた音だったのか……。
 しかもこの匂い……某の好物ばかりではないか。
「い、一体どういう計らいだ? 何かの祝い事か?」
 さすがに混乱が顔に出てしまう。
 そんな某の顔色をうかがうかのように、主が気まずそうな表情を浮かべる。
「あ、いや……なんか色々珊瑚に無理させてるって、天が言うからな……だから、たまにはと」
「お姉ちゃん、いつもマスタぁーにいじわるされてるから、天河石がめーって言ったんだよー」
 その言葉に、顔を赤くして天河石の口をふさぐ慌て者の主。
 ……そうか、変に肩を張って気を遣わせてしまったか。
 別に某は嫌な思いなど微塵も感じていないのだが……まぁ、向こうが勘違いしているならそれでもいいか。
「はぁ……主、子供にそんな手荒なことをするな」
「うっ、すまん……その、な、つい」
「男が言い訳をするな。それよりせっかく二人が作った夕食だ。早く食べよう」
 そのときの某が、どんな顔をしていたかは分からない。
 ……まぁ、二人に嫌な思いをさせるような顔は、していないだろう。

 それにしても……これはつまり最近の情けない某が、二人にとっての当たり前な某なのか?
 それはそれでまた複雑な……うぅむ。
「……お姉ちゃん、おいしくなかった?」
「ん、いや、そんなことは一切無い……熱っ!!」
「おいおい、慌てて食べるなよ」

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