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暑いからといって……

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jewelry_maiden

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 今日は暑い。それ以外に何を言えばいいだろうか。
 雲一つない青空も、輝く太陽も、蝉の鳴き声も、全てが暑さを助長してくる。迷惑なことこの上ない。
 ぼんやりと床に寝転がる……別にそれで涼しくなるわけでもなく、日陰に移動しても意味がない。窓から差し込む日光は確実に部屋の中に熱気を運び入れ、窓を開ければ熱風が部屋を抜ける。
 ……クーラーが欲しい。
 ケチな大家のせいで、我が家には扇風機しかない。もちろん扇風機は回しているが、効果など期待できない。
 それでも、ないよりマシというものだ……仕方ない、もっと扇風機に近づくか。だらしないと言われても仕方がない。ナメクジのように地面をはいずって、扇風機の方へ……。
「きゃーっ!」
「え?」
 扇風機に近づいたはずが、目の前には白い何か。
「まま、マスターっ!!」
「え、あ、金剛石? ぶぉっ!!」

 金剛石の拳が振り下ろされた顔面に氷を当てる。暑さも相まって、すっかり腫れ上がった俺の顔は至福の時を堪能。
 だが氷はすぐ溶けてしまう。これだってよくて数分続くかどうか……。
「すまん、悪気はなかったんだ」
 とりあえず、金剛石のスカートの中を思いっきり見てしまったという失態。悪気はなくても、これは謝らないとダメだ。
「……セクハラマスター」
「悪い、それホントに周りに言わないで……」
 そんなこと言われたら、きっと家での俺は立場がなくなる。俺と金剛石以外誰もいなかったのが本当に幸いだ。
「だいたいずるい……ですよー。いつもあたしにはだらしなくするなーって」
 返す言葉もない。
「今度からは注意する……」
「本当ですかー?」
「本当」
「……じゃあ、今回だけだから……ですからねー」
 こういうとき、金剛石の心の広さには感謝せざるを得ない。手は早いが、ちゃんと謝れば分かってくれるからなぁ……口調さえしっかりすれば。
 ……さて、本題はここからだ。
「ところで、扇風機の前で何やってたんだ?」
 その言葉に、金剛石の笑顔が硬直する。
「え?」
「え、じゃなくてだな。だから何をしてたかって」
 金剛石のスカートを覗き込んだのは確かに悪いと思っている。しかし、扇風機の前で脚を拡げて立っていたというのが、どうしても理解できない。それにこの反応。何を隠しているんだか……。
「あ、あまりしつこいとっ、さっきのこと言いふらすっ!!」
「う……」
 まぁ、そういうオチになるのは分かっていたが……。
「これ以上言及したらっ、マスターのっ、いる場所はっ、ない!!」
「わ、分かった分かった!」
 これ以上の詮索は自分自身の首を絞めてしまう。仕方ない、ここはおとなしく身を引くか……。
「うぅー」
「うなるなよ……もう聞かないから」

    ◇    ◇    ◇    ◇

 さっきの詫びにと、マスターがコンビニへアイスを買いに出かけていった。家にはあたし一人……あぁー、暑いぃー。
「むぅー……」
 どうしてこう通気性のいい格好をしていても暑いのか。まぁ、文句を言っても始まらないけど……。
 ……こういうときは、やっぱりあれしかない。さっきはマスターに邪魔されたけど、今度はのんびりと涼むことができる。
「……ふぅー」
 扇風機の前に立ち、スカートの中に風を送り込むようにする。これが涼しいんだよねぇ……人前でやったら姉さんたちに怒られるけど。
 でもさっきは驚いたなぁ。まさかマスターの顔がすぐ下に……。
「金剛石ぃ」
 ……あたしの背後から声。あれ、オカシイナ。さっきコンビニに行ったはずのマスターが、あたしの後ろに……。


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