宝石乙女まとめwiki

天災被害

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匿名ユーザー

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「マスターっ、すごい雨だよー!」
「分かったからそのまま外に出るなっ!」
 よく、天災でテンションの上がるタイプってのがある。
 金剛石はまさしくそれだった。いつもより酷い雨の中、傘も差さずに外へ出て行く。
「こういう中で走るのが特訓だよねっ。というわけでいってきまーす!」
 もう口調を直すことも忘れたハイテンション状態。
 どうしてこんな天気なのに元気なんだ……いや、こんな天気で遊べなかった
反動でも来たのか。
 どちらにしても、放っておく訳にはいかない。傘を手に取り、金剛石の後を追う。
 しかし……あいつ、やっぱり脚早いな。全然追いつける気配がない。
「あははははっ」
 そのくせ金剛石の笑い声ばかり耳に入ってくる。
 この酷い雨の中でもはっきりと……近所迷惑だ。あとでお仕置き確定だな。
「あっ、マスター! マスターも特訓ー?」
「違う! というか前見ろ前っ、転ぶぞ!!」
「えー? 何か言いましっ!?」

 見事に水たまりで足を滑らせた金剛石。
 まさに濡れ鼠と言わんばかりに服は濡れ、肌に張り付いて……。
「いたたた……うぅ、びしょびしょー」
 腰辺りをさする金剛石。
「そんなのこける前からだろ、ったく。立てるか?」
 なるべく見てはいけないところを見ないように、手をさしのべる。
「た、多分……痛っ」
 俺の手を握って立ち上がろうとしたところで、足首を押さえてまたしゃがんでしまう。
「え、えーっとぉ」
 転んだ時に足首をひねったか。
 まぁ、派手に転んだから仕方ない。だからといってこのまま地べたに
座らせたままにするのもダメだ。
 ……仕方ない。
「ちょっと失礼するぞ」
 さすがに濡れ鼠の金剛石をおんぶする訳にはいかない。こちらも濡れてしまうから。
 膝下と背中に腕を回して抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこ。
「あ……うん」
 さっきのテンションはどこへ行ったのか、急にしおらしくなってしまった金剛石。
 いや、俺も恥ずかしいけど。
「ま、マスター、ごめんね?」
「謝るのはいいけど、帰ったらお仕置きだからな」
「うぅ……きっとマスターにあんなことやこんなことされるんだ」
「ここで落とすぞ?」
「ごめんなさい……でもマスター、どうしてさっきからこっち見てくれないんですか?」
 それはお前の格好が……なんて、言えるはずがない。
「怒ってるからに、決まってるだろ」
「あうぅ」
 せめて胸辺りに手を添えてくれればいいのだが……こうもはっきり見えていると。
 そんな煩悩が頭を巡っているそのときに、金剛石が俺の胸に顔を埋めてくる。
「ちゃんと反省す……しますから、嫌いにはならないで?」
「な、き、嫌うわけないだろ」
「じゃあ、ちゃんと顔を見て話がしたい……」
 何なんだ、お姫様抱っこっていうのは何かのスイッチなのか?
 本当に金剛石らしくない。さすがに緊張してきた。
「マスター?」
 どこか甘えたそうな、そんな顔。
 俺は一体どうすりゃいいんだ……。
 どうすりゃ…………。
「……隠せ、胸」
「へ?」
「だ、だからっ、胸……隠してくれ。気まずい」
「え、胸……あーっ!」

「マスターのエッチ!」
 これで何度目の抗議だろう。
 俺にお姫様抱っこさせているのは相変わらず。だが先ほどのしおらしさはなく、
胸に手を当てて抗議の嵐。
「エッチって、わざわざ見ないように目逸らしてたのにそれはないだろ」
「関係ないっ。帰ったらマスターお仕置き!」
「それはお前だっ。大体お前がこんなところではしゃぐからいけないんだろうがっ」
 後もう少しだけ、あのしおらしい金剛石を見ていたかったのだが。
 しかしあのまま伝えてなかったら、こいつ泣いてしまいそうで……。
「むぅ……マスターの、意地悪」
「はいはい。分かったらもう雨の中ではしゃぐな」
「はぁい……」
 腕の中でふてくされる金剛石。
 ぶらぶらさせている足が、時折俺の脇腹をかかとで蹴ってくる。
 ……梅雨が明けたら台風か。くそ、もう大雨なんて降らないでくれ。

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