宝石乙女まとめwiki

心の眼

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匿名ユーザー

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「蛋白石から聞いたんですけど」
  今日は珍しく真珠さんとお茶をしている。
  定期的に妹たちの様子を見ているのだから、やっぱりすごい人なんだなぁ。
  で、そんな真珠さんを見て、ふと思い出した話。
「真珠さんって、見る人によって姿が違うって。つまり僕が見ている真珠さんと他の人が見ている真珠さんって違うんですか?」
  その質問に、真珠さんは紅茶を一口飲んでから一言。
「それは乙女の秘密」
「う……すみません」
  真珠さんは口が堅い。ゆえに謎も多い。
  こう言われると、さすがに僕も肩をすくめてしまう。
  だが、今日はどこか様子が違う。こちらをじっと見据えている。
「……まぁ、貴方と私の仲だから、それぐらいなら教えるわ」
  そういう風に思われていたのは、少し驚きかも知れない。だがそれだけに光栄だし、嬉しい。
「皆が視覚的に見ているものは、きっと同じもの。だけどそこに主観が入ると、見え方が変わってくるのよ」
「……つまり、見えているものは一緒で、変えているのは自分自身ということですか?」
「ええ。主観が入れば、印象だって変わるのよ。特に私みたいな格好だと特に、ね」
  僕に見えている真珠さんは、丸い。とにかく丸い。それでいてその名のように綺麗な身体。
  昔の、それこそ人形が動くなんて信じられなかった僕だったら、きっと避けていたかもしれない。
  でも今は、そういう昔の自分が少し情けなく感じてしまう。
「主観……それだけで物事を見てはいけないって言いますけど、本当ですよね」
「そうかしら?」
  僕のつぶやきに、真珠さんは首をかしげる。
「そういうものにはたいていメリットとデメリットがあるものよ。主観で物事を見るのだって、デメリットばかりではないでしょう?」
「んー……僕はデメリットしか思いつきませんよ。差別とか、見た目だけで全部決めつけちゃったりとか。特に意固地になっちゃったりするのもどうかと思うし」
  実際、蛋白石たち宝石乙女をしっかりと自分の中で受け入れるのも、かなり時間がかかった。
  きっと人形が意志を持って動き出すわけがないという主観があったからだと思う。動き出したら心霊現象とか、そんな感じで。
  ……わずかな沈黙。口を閉ざした僕を、真珠さんは黙って見ている。
「貴方は、今蛋白石をどう思ってるかしら?」
「え?」
  突然、真珠さんが僕に尋ねる。
「それは……恥ずかしいですけど、その……可愛いし、守ってあげたいとも……うぅ」
「そう。じゃあ、それが今の貴方の主観なのね……蛋白石は、その主観に守られている。そう思わない?」
  蛋白石が、守られている。
「私も、あの子が今までどういう仕打ちを受けてきたかは知っているわ。外見も災いして、特別マスターに恵まれなかった子だから。でも今は、貴方の優しさにあの子は救われているの」
  ふと、蛋白石の昔話を思い出す。
  僕をご主人様と呼ぶ、根本的な要因……。
「あの子の過去や今の姿を見て、聞いて、貴方は守りたいと思っている。それは貴方が主観で物を見た結果だと、私は思うけれど」
「……そう、ですね」
  なんだか、照れくさい。
「貴方はどうもネガティブすぎてダメね」
「それは、まぁ……あはは」
「それが個性で、長所なのかもしれないけれど、もう少し自分に自信を持つべきだと思うわ」
  非常に痛いところを突かれた。
  でも嫌な気分ではない。何というか、素直に真珠さんの言葉を受け入れることができた。
「さて、私はそろそろ……ねえ、貴方」
「あ、はい?」
  出迎えるために立ち上がろうとした僕に、真珠さんが。
「あの子……蛋白石にとって、貴方はとても大きな存在だから……何があっても、見捨てないであげて欲しいの」

「ご主人様っ、ただいま戻りましたー」
  明るい蛋白石の声が、家に響き渡る。
「あれ? お客さん来てたんですか?」
  居間に真っ直ぐやってくるや、テーブルの上のティーカップを見てそう尋ねてくる。
「おかえり。真珠さんが来てたんだよ」
「真珠姉様ですかー」
「いいお姉さんだよね。蛋白石たちのこと、ちゃんと気にかけてくれてて」
「えへへ、自慢の姉様ですから。あっ、それよりも聞いてくださいよー。今日金ちゃんがですねー」
  僕の隣に座り、早速今日の出来事をいろいろと話し始める。
  そんな彼女が、笑顔で話す日常会話。


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