宝石乙女まとめwiki

抱っこ流浪人

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jewelry_maiden

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だれでも歓迎! 編集
  電気石は抱っこされるのが好きだ。
「お姉様ー」
「……んー」

  まるで猫のように蛋白石の胸にすり寄っている電気石。
  普段はよく分からない子だけど、こうして甘えている姿を見るとやはりまだ子供なのかなって思う。
  それにしても可愛いなぁ。可愛がられている猫と飼い主みたいにも見えるけど。
「あ、今日は金ちゃんに用事があるんだった。お姉様、ごめんね」
  膝の上に乗せていた電気石を降ろし、身支度を始める蛋白石。
  その姿を、やっぱり電気石は猫みたいな感じで名残惜しそうに見つめている。
「帰ってきたらまた遊ぼうね。それじゃあいってきまーす」
「うん、いってらっしゃい。あまり寄り道しちゃダメだよ」
「拾い食いもいけませんよ」
「そんなことしないよぉー」
  そんなやりとりをしながら、電気石は玄関へ。そしてドアの閉まる音。
「用事って何なんだろうね」
「あの子と金剛石のことですから、特訓か何かではないのでしょうか……あら、電気石?」
「……だっこ♪」
  今度は殺生石に抱っこをしてもらう。
  先ほどと変わらず、蛋白石と同じように殺生石の胸にすり寄っている。
「ふふ、甘えん坊ですね」
「んー……」
  殺生石に撫でられ、実に気持ちよさそうな顔。
  ホント、小動物みたいだなぁ。
「さてと、僕ちょっと部屋で課題すませてくるよ」
「分かりました。後でお茶を持っていきます」
  殺生石に礼を言って、居間を出て行く。
  電気石が僕の背中に視線を送ってきていたような気もするけど、まぁ殺生石が相手してくれるから問題ないと思う。

  殺生石がお茶を持ってきてくれた後、僕は黙々と机で紙やら本やらとにらめっこをしている。
  こういうときは静かな方が集中力できる。だから電気石と殺生石しかいない今はとても勉強がしやすい。
  蛋白石には悪いけど、あの子の声は集中力途切れるんだよね。あはは……。
「マスター……」
  予想外の声。電気石が僕の部屋に入ってきていた。
  気配もなかったので少しビックリ……。
「どうしたの?」
「……殺生石、お出かけ」
  そう言えば少ししたら出かけるみたいなこと言ってたっけ。
  居間に一人となっては、僕の部屋に来るのも仕方ないか。
「……おべんきょ?」
  僕の隣に立って、机の上を眺める。
「うん。ごめんね、これが終わったら遊んであげるよ」
「……だっこ」
「んー、抱っこかぁ……今はちょっとなぁ」
「……だっこ」
  これだけは譲れない、そんな感じのおねだり。
  うぅむ……こういう顔されると弱いんだよなぁ、僕。
「……はい、これでいい?」
  電気石を抱き上げ、膝の上に乗せる。
  蛋白石や殺生石と同じ体勢だけど、僕の方が大きいので電気石が普段より小さく感じる。
「だっこ♪」
  そして電気石は先ほどと同じく、胸に頬擦りをしてくる。
  ……少し、くすぐったい。体と心が。
「本当に甘えん坊だね」
「ん……ダメ?」
「ううん、甘えたっていいんだよ」
「ぐりーんだよー」
  久々に聞いたような気がする、そのフレーズ。
  でも本当に好きなんだなぁ……グリーンダヨーも甘えるのも。
「マスターのだっこ……貴重?」
「そ、そうなの?」
「ん……」
  貴重っていうことは……あまりしてあげていないってことだよなぁ。
  僕ってそんなに家では急がしそうにしてたのかな。
  自分ではよく分からないな、そういうところって。
「……んー」
  そんな僕の抱っこが嬉しいのか、先ほどから頬擦りをやめる様子がない。
  これじゃあ課題が……。
「マスター……あったかい」
  ……ま、いいか。課題なら夜やればいいだろうし。
  今は電気石を満足させてあげる方が、重要なのかもしれない。
  鉛筆から手を離し、電気石の頭を撫でる。
  綺麗で手触りのいい金髪と、人形のそれとは違う温もり。
  こうしてゆったりとしたときに頭を撫でると、普段では伝わらないものも伝わってくるような気がする。
  ……静かだなぁ。

    ◇    ◇    ◇    ◇
「ただいま戻りました……あら」
  帰宅のご挨拶をと思い、主様の部屋を覗く。
  忙しく勉学に励んでいらっしゃるのかと思っていましたが、そこには電気石と二人で昼寝をしている姿。
  静かな寝息……ふふ、どちらも愛らしい寝顔ですね。
「……お休みなさいませ」


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