宝石乙女まとめwiki

美味しい味の誘惑

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jewelry_maiden

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だれでも歓迎! 編集
  ……ふむ。
「ぽりぽり……」
  ……ふむふむ。
「ぽりぽりぽり……」
  ……おぉ、これはなかなか。
「ぽりぽりぽりぽり……」
「マスターっ、つまみ食いしちゃダメですよっ!」
  おっと、ばれてしまった。
「いやぁ、樽が開いてたからついな。はっはっは」
「はっはっはー……じゃありませんっ。行儀悪いですよー」
「悪い悪い。でもこのたくあん美味いぞ」
「え、そ、そうですか。えへへ……じゃありませんっ。ごまかさないでください!」
  おだて作戦、失敗。
  まぁ、空腹に釣られて台所に来てみたら、開いていた樽があった。それでちょっと食べ始めたらやめられなくなったわけだが。
「ということだ」
「だからといってつまみ食いは許しませんよ。今日は漬物抜きです」
「えー、それは勘弁」
「ダ・メ・で・す。もう……」
  うぅむ、漬物石がいつもより厳しい……。
  だが俺はめげないぞ。今日は絶対あのたくあんにご飯かビールと決めているんだ。
  こういうときはどうするか……うぅむ。
「マスター、いろいろ考えているみたいですけどダメなものはダメですからね」
「えー」
「子供じゃないんですから、諦めてくださいっ」
「頼むっ、今日の晩飯にアレが出ないと俺が死んでしまう!」
「知りませんっ」
  結局俺の懇願はスルーされてしまった、チクショー……。
  これはもう諦めるしかないのか……諦めるしかないのかっ。

「かりかり……」
  ……ん。
「かりかりかり……」
  ……ほぅ。
「かりかりかりかり……」

「漬物石、お前もかっ」
「あっ……」
  先ほどの俺と全く同じことをしていた漬物石。
「こ、これは味見ですっ。マスターが美味しいって言ってくれましたけど、やっぱり食卓に出すには自分でも味見しないと……」
「ほう、食卓に出すのか。ほぅほぅ」
「な、何ですか……」
「いや別にー。今日はお預けじゃなかったっけーとか、言うつもりはありませんよ、ええ」
  お、漬物石の顔が赤くなった。
「そっか、味見かぁー。そうかそうかー、ふーん」
「……もぉ」
  ふっふっふ、これで今日の晩飯が楽しみになったな。
「そ、それでもお預けですからねっ。この味見は明日の朝の……」
「ふーん、明日の朝ねぇ。明日の朝になったら味が変わってるかもよー?」
「そうかも知れませんけど……って、そんなこと言ってもお預けなのはお預けですっ! あまりしつこいとビールも出しませんよ」
「うぐっ。そ、それは勘弁……」
  うぅむ、台所の権限のほとんどを漬物石に握られているのはさすがに厳しいな。
「それより、豆腐とお醤油買ってきてくださいっ」
「えー、外寒いんだけど……分かった分かった、そんな顔赤くして怒るなって……」

「……結局本当にお預けかよぉ」
「当然ですっ」
「漬物石だってつまみ食いしたじゃないかぁーっ」
「だからアレは味見なんですーっ」
  結論、俺と漬物石は五十歩百歩。


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