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ごはんはどうしておいしいの?

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匿名ユーザー

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  ごはん……。
  マスターが作るごはんは、とってもおいしい。
  『ん、電気石もおかわり? 珍しいね』
  今日のは、特においしかったからいっぱい食べた。
  いっぱい食べると、マスターも喜んでくれる。マスターが嬉しいと、私も嬉しい。
  ……でも、どうしてマスターのごはんはおいしいの?
「……んー」
  マスターの後ろ姿。今、ごはんを作ってる。
  なんだか、とても楽しそう。
「今日は何を……ん、電気石?」
「……ごはん?」
「うん、そうだけど。今日はカレーか肉じゃが、どっちかにしようと思ってるんだ」
  マスターは、いろんなごはんが作れる。もしかしたら殺生石よりすごい……。
  でも、どうしておいしいのかは分からない。
  分からないことは観察しようって、姉様たちは言うけれど……観察しても、分からない。
  ……どうして、おいしいの?
「……電気石、何か聞きたいことでもある?」
「んー……」
  マスターが困ってる。もしかして観察しちゃ、いけないのかな。
  でも、知りたいな……。
「ははは……そうだ、ご飯作るの手伝ってくれないかな?」
「……お手伝い?」
「うん、お手伝い。タマネギの皮、剥いてくれない?」
「……うん」
  マスターのお手伝い……お手伝いしながらなら、観察もいいのかな?

  タマネギ……目に染みる。涙が止まらない。
「あはは、大丈夫? 顔拭いてあげるよ」
  真っ白なタオルで、私の顔を撫でてくれるマスター。
  少し、くすぐったい。
「マスター……全部」
「うん、ありがとう。それじゃあ今度は……あ、冷蔵庫からお肉取ってきて」
「ん……はい」
「ありがとう。ところで電気石はカレーと肉じゃが、どっち食べたい?」
  カレー……肉じゃが。
  マスターがジャガイモを持っているとき、いつも言ってるごはんの名前。
  ……どっちも、おいしい。
「……両方?」
「それはちょっと無理かな……時間的にも材料の量を考えても」
  両方は、無理……。
「んー……無理?」
「うん、ちょっとねぇ……」
「……カレー?」
  ……確か、マスターはカレーが、好き。
「ん、カレーがいいの?」
「うん」
「分かった。じゃあそこの箱からカレーのルー持ってきて」
「……はい」
  カレーができる、四角くて茶色の、不思議な物。
「ありがとう」
  マスターが箱を開ける……いい匂い。
「それじゃあ後は野菜を切って……」
  包丁で、にんじんやジャガイモを小さくしていく。楽しそう。
  ……姉様も、私のために野菜を小さくしてくれるって、言ってた。
  ……大きな野菜も、食べてみたいな。でも、マスターはやさしい。
「……楽しい?」
「ん、料理?」
「料理」
「うん、楽しいよ。昔からそれほど嫌いでもなかったから」
  料理、楽しい。
「今はみんながいるから、たくさん作れるのはやっぱり楽しいね」
「……私も、楽しい。おいしいごはん」
「あはは、ありがとう。じゃあ今日も美味しくなるように頑張らないとね」
  マスターは、料理が楽しい。
  ……楽しいと、おいしい?
  ……ん、そっくり。楽しい、おいしい。

「ご主人様ー、今日はカレーですねっ」
「うん。やっぱり匂いで分かっちゃうかぁ」
「ふふ。よい香りですね、主様」
  テーブルに、みんながいる。
「それじゃあ、もうご飯にしちゃおうか」
  カレーのにおいがする方に、マスターが歩いていく。
  ……おなかが、ぐー。
「今日は電気石手伝ってくれたから、少し多めにしてあげるね」
「えーっ、お姉様いいなぁ。私もお手伝いすればよかった……」
「蛋白石はいつもいっぱい食べるでしょう。大盛りも小盛りも一緒です」
  ……みんなが笑ってる。楽しい。
「……楽しい、おいしい」
「うんっ、美味しいよねー」
  ……楽しいから、おいしい。
  また一つ、覚えた。


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