宝石乙女まとめwiki

漬物石、クリスマスを考える

最終更新:

jewelry_maiden

- view
だれでも歓迎! 編集
「クリスマス?」
  漬物石は首をかしげる。まぁ、見た目から考えても西洋のイベントは疎そうだもんなぁ。
「そ、クリスマス。25日のイベントなんだけどね」
「そういえばテレビで見たような……何でしたっけ、ドラマにあったような気がしたのですが。あ、クリスマス特番でグリコンダーZX改のスペシャルありますね」
  最近の特撮はクリスマスに特番やるのか……。
「あまり関係ないような気もするけど……まぁ、お祭りだよ、世界的な」
「お祭りですか。楽しそうですね」
「独り身だと楽しくない人もいるけどね……」
  それとは別に、ほぼ毎年クリスマスも仕事に追われてるんだけどね、俺の場合。だがしかし! なんと今年は奇跡的に普通の日曜日が過ごせる、つまり普通にクリスマスが迎えられる!! これは常日頃お世話になっている漬物石に、何かおもてなしをしてやりたいと思った次第だ。
「それでは、その日はお祭りにでも出かけるんですか?」
「んー、あってるような違うような……とりあえず、どこか出かけないか? 一日漬物石につき合うよ、いつもお世話になってるお礼に」
  要は世間一般的なデートの約束とでもいうのだろうか。でも俺と漬物石じゃ兄妹か、下手すれば親子だからなぁ、はたから見ると。
「え、そんな……せっかくのお休みなのですからゆっくりした方が。それにお世話になっているのは……」
「いいのいいの、一年に一回だけなんだから。あと、お世話になっているのはお互い様、でしょ?」
「それは私だって……あの、本当にいいんですか?」
「うん」
「そうですか……ふふふ」
  顔を赤くして笑みを浮かべる漬物石。口に手を当てる仕草が、どことなく可愛らしかった。

  仕事疲れで熟睡しているつもりだったのだが、妙な物音で目が覚めた。時刻は……うわ、2時だって。
  物音は以前鳴りやまず。居間の方から聞こえてきているようだが……確認しなければ始まらない。廊下に出てみると、居間のドアから蛍光灯の光が漏れだしている。漬物石がまたカロリー計算しながら居眠りでもしてしまったのかな……だけど、耳を澄ましてみれば彼女の独り言がわずかに聞こえてきた。
「ここは……あ、美味しそう。こっちのお店は……んー、やっぱりこっちかなぁ」
  小声と共に、本をめくる音がわずかに聞こえてくる。これはレストランの情報でも仕入れている最中なのだろうか。珍しいな、あの子がそんなことを
考えるなんて。
「たまには贅沢を……ううん、家計のことも考えないと。えーっと……」
  ……節約、しておこうか。
「……マスターと、初めてのお出かけ……お出かけ…………えへへ~」

  あ、なるほど。今から予定を全て決めてしまおうというわけか。でも漬物石がえへへって、初めて聞いたかも。
  それにしても……そっか、今から行く場所考えるくらい楽しみなのか。
「マスターと……マスターと……えへへ…………んぅ」
  ……あれ? 突然独り言が聞こえなくなる。と、同時に寝息らしき音。やっぱりそのまま寝ちゃったみたいだな。
  居間を覗き込むと案の定、テーブルに雑誌とメモ帳を開いたまま漬物石は眠っていた。相変わらずの可愛い寝顔。メモ帳には行きたい場所の候補らしきものがいくつか書かれている。
  ……今は見ないでおこう。細かく内容を見ないようにしてメモ帳と雑誌を閉じ、テーブルの隅に重ねて置いておく。そして漬物石の体を抱き上げ、彼女の寝床へと運ぶ。小さな見た目通りの、あまりにも軽い体。抱き上げ慣れてはいるが、いつもこの軽さには驚く。
「……幸せそうな寝顔だな」
  漬物石の顔を見て呟く。この寝顔に応えるためにも、クリスマスイブは彼女が満足するまで相手をしてあげたい。なかなか大変そうだが、嫌ではない。むしろ、俺の顔には笑顔が浮かんでいた。
  ……まずはあれだ。節約からだな、うん。
「すぅ……すぅ……」
「……頑張ろう」
  漬物石の体を抱え直す。彼女の体は軽くて、それでいて温かかった。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

添付ファイル
目安箱バナー