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お勤め、ご苦労様

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匿名ユーザー

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  世間では勤労感謝の日と呼ばれる休日。しかしなんと運の悪いことか、俺にそんなものは存在しなかった。学生諸君が羨ましい限りだよ、まったく。
  というわけで夜。さすがに秋も深まってるせいか、けっこう寒くなってきたと思う。
「ただいまー。うぅ、さぶっ」
「お帰りなさい。祝日なのにお疲れ様でした」
  さっそく出迎えてくれる漬物石の笑顔。うーん、癒される。この顔があれば、理不尽な休日出勤も堪えられるというものだ。
「あ、あのぉ、頭あまり撫でられると髪が……」
「え? おっとすまん」
  無意識のうちに漬物石の頭を撫でていたようだ。頭がちょうどいい位置にあるからなぁ。
「さてと、飯の準備でもしようか。お腹空いただろ?」
「あ、今日は私が全部やっておきました。匂いしませんか?」
「え、そうなのか……ダメだ、鼻詰まってるみたい」
「風邪ですか?」
「いや、ただ外が寒かっただけだよ。それよりありがとう、さっそく準備して食べようよ」
  そっかぁ、ご飯作ってくれたのか。身長の足りない漬物石が台所で四苦八苦している姿が頭に浮かぶ。
  それにしても、家に帰ってきたらご飯が準備されてる、もう最高のシチュエーションじゃないですか。そんな高鳴る胸を抱き、二人で居間へ向かう。
「マスターは着替えてきてください。準備は私が……」
「いいからいいから、準備ぐらいは手伝うよ」
「え……きょ、今日は遠慮します。とにかくお着替えを」
  ん、なんだろう……漬物石らしくないな、こちらの誘いを断るなんて……あぁ、なるほど。
「それじゃあ今日はお言葉に甘えて。後は任せるよ」
「はい。マスターはゆっくりしていてくださいね」

  世間では勤労感謝の日と呼ばれる休日。
「お、今日はずいぶんと豪勢だね。しかも俺の好きな物勢揃い」
  休日出勤というロクでもない目にあった日。
「今日は勤労感謝の日なんですから。いつもお勤め、ご苦労様です」
「あはは、そんな改まって頭下げなくていいって」
  でも、今は漬物石がこうして……おっさんみたいと言われてもいい。俺は今幸せだ、社会人になって今一番嬉しいぞ。
「それに漬物石だっていつもご苦労様、だろ?」
「そ、そんな……私の場合はそれが義務ですから……」
「なら俺も一緒。そーいうことだ」
「そう、ですか……マスター、ありがとうございます」
  周りから見たら、俺ら二人ってどう見えるんだろう。
「こちらこそ、どういたしまして」
  ……ま、いいか。どう見えても俺と漬物石に変わりはないんだから。
「ところで、今日はいつもの漬物はなし?」
「あ、忘れてました……今日は、マスターの大好きなキュウリの浅漬け。私が漬けました」
  ……明日は二日酔い確実だな、これは。

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