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セピア色の写真

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匿名ユーザー

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  手に入れた幸せはあまりに儚く。時の流れと共に忘却の彼方へ去っていったわ。残ったものといえば、思い出と胸の痛みと……この写真くらいね……。
「あら、真ちゃんたら、何見てるの?」
「爆ちゃん……なんでもないわ。昔の写真よ。ただの写真……」
「へえぇ、見せてよ。一緒に写っているのは、昔のマスターかしら?」
「ま、そんなところね。どうぞ」
「真ちゃん……あなた……この姿って……」
「そういう男だったのよ……いい男だったわ……」
「幸せそうな顔してるわね」
「人当たりのいい男だったからね……私も若かったし。そうね、そのときは幸せだったわ……例えようもないくらいね。でも、それも長くは続かなかったのよ。その男、信頼していた友人に裏切られて……私に今くらいの見る目があればね……その時に思い知らされたわ。少しくらい傲慢に生きないと、世の中の渦に巻き込まれてしまう。どうせなら、この街を巻き込むぐらい強くしなやかでありたいってね……」
「傲慢ねぇ。とてもそうは見えないわよ」
「歳を重ねてきたせいかしら。わがままを通すよりも状況を楽しむほうが楽なことに気がついたのね。妹たちの面倒をみたり、彼女たちのマスターの教育もしなくちゃ。自分に実力が備わってくるとね、したいことと、しなきゃいけないことがどんどん増えてきて余計なことを考える暇もないのよ」
「歳って、そんなに老け込んじゃいないじゃない」
「年齢は〈記号〉よ。たいして気にする程のことでもないわ。長く生きてきたけれど、いつだって今が一番楽しいわ」
「そう言ったほうが真ちゃんらしいわよ。でも、そろそろ次のマスターを探したほうがいいかもね。貴女の美貌と才能を捧げるマスターを見てみたいわ。それに……寒い季節に独りは寂しいわよ」
「飼っている犬と床に敷いてある牛の毛皮があれば、冬に男はいらないわ。まあもっとも、犬も毛皮もないし、囲んでくれるのはやんちゃ盛りと思春期の妹たち。温めてくれるのはコタツだけどね。それに、独りじゃないわ」
「そうなの?」
「爆ちゃん、貴女もいてくれるしね」
「真ちゃ~ん」
「暑いわよ」
  マスターか。いつか……また、巡り会えるわよ。いい男は星の数ほどいるけれど。私は一人しかいないのだから。

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