「鶏冠石ってその髪飾りずっと着けてるよな」
突然マスターに指摘された。そういえば……いつの間にかそれが当たり前のようになっていた。
「たまに大事そうに撫でたりしてるもんな。大切な物なんだろ?」
……意外。マスターは思いの外しっかりと私のことを見ているらしい。
「まぁ、確かに大切な物ですわ。古い知人にもらいましたの。これは私に似合う、と」
私はマスターに以前のマスターの話をするのは嫌いだった。だからつい、知人と言ってしまった。
「その知人さん、センスいい。スゴく似合ってるもん」
何を、と思いながら髪飾りを外してみる。いつ以来だったか……ほとんど我が身と一体となっていた気がして、髪を下ろすのが妙に懐かしかった。
突然マスターに指摘された。そういえば……いつの間にかそれが当たり前のようになっていた。
「たまに大事そうに撫でたりしてるもんな。大切な物なんだろ?」
……意外。マスターは思いの外しっかりと私のことを見ているらしい。
「まぁ、確かに大切な物ですわ。古い知人にもらいましたの。これは私に似合う、と」
私はマスターに以前のマスターの話をするのは嫌いだった。だからつい、知人と言ってしまった。
「その知人さん、センスいい。スゴく似合ってるもん」
何を、と思いながら髪飾りを外してみる。いつ以来だったか……ほとんど我が身と一体となっていた気がして、髪を下ろすのが妙に懐かしかった。
髪飾りはだいぶ痛んでいる。それでも美しく輝いている。こうして外してみると、髪飾りは昔とずいぶん違うように思えた。それだけの時間を私と共に過ごしてきてくれたこの髪飾りは、既にただの物ではないのかもしれない。
私たち宝石乙女がただの人形では無いように――
「……? どうなさいましたの?」
気づけばマスターは私を見て固まっていた。
「いや、その……なんだ。べ、別に何でもないっ」
「なんですの一体……」
自然と笑いがこぼれた。丁寧に髪飾りを着け直す。マスターが少しつまらなさそうな、残念そうな顔をしていた。
(全く、分かりやすいこと……)
「お茶を淹れて下さる? 私喉が渇きましたわ」
へいへいと呟きながら準備に向かうマスターを見送る。私のマスターは代々お茶を淹れるのが上手い。今までのマスターと比べるのもあまり好きではなかったが、今日はなぜかそれが誇らしく嬉しかった。
傷んだ髪飾りにお願いをする。
(どうか、もう少し私とマスターを見守っていて下さい)
もう少しがどれだけで、マスターが誰かなんてことは考えなかった。ただ……変わることのできない宝石乙女のわがままにつき合って欲しかったのかもしれない。
キッチンから『なんかいったか?』とマスターが顔を出す。
「今日はカップを二つだしてちょうだい。一緒にお茶を飲みましょう」
珍しくマスターをお茶に誘うのもきっと私のわがままなんだ、と思った。
私たち宝石乙女がただの人形では無いように――
「……? どうなさいましたの?」
気づけばマスターは私を見て固まっていた。
「いや、その……なんだ。べ、別に何でもないっ」
「なんですの一体……」
自然と笑いがこぼれた。丁寧に髪飾りを着け直す。マスターが少しつまらなさそうな、残念そうな顔をしていた。
(全く、分かりやすいこと……)
「お茶を淹れて下さる? 私喉が渇きましたわ」
へいへいと呟きながら準備に向かうマスターを見送る。私のマスターは代々お茶を淹れるのが上手い。今までのマスターと比べるのもあまり好きではなかったが、今日はなぜかそれが誇らしく嬉しかった。
傷んだ髪飾りにお願いをする。
(どうか、もう少し私とマスターを見守っていて下さい)
もう少しがどれだけで、マスターが誰かなんてことは考えなかった。ただ……変わることのできない宝石乙女のわがままにつき合って欲しかったのかもしれない。
キッチンから『なんかいったか?』とマスターが顔を出す。
「今日はカップを二つだしてちょうだい。一緒にお茶を飲みましょう」
珍しくマスターをお茶に誘うのもきっと私のわがままなんだ、と思った。
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