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エーゲ海の白き泡

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匿名ユーザー

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満月の夜その男は大きなキャリーケースを引っ張り海沿いのホテルでチェックイン手続きをしていた。
キャリーケースを運ぶというフロントマンを制止し自ら指定された部屋に入っていった。
ゆっくりとキャリーケースを横たえると、急いでジッパーを開けた。
「……!!もういいのですか?」
小さな少女が男に問う。
「すまないもう大丈夫だよ。怖かったろ?雲母はどうしている?」
「私は大丈夫です。雲母ちゃん…雲母ちゃん…」
雲母と呼ばれた少女は荒巻を抱えたま、ままぶたをゴシゴシと擦りむくっりと起き上がった。
「着いたのか?」
「ああ、まだホテルに着いただけどね。」
「よかったわね、雲母ちゃん間に合ったみたいよ」
「うむ」
「夜明け前だったよな……あと少し時間があるから、少し寝ておこう」
そういうと男はベッドにもぐりこみ、その横に少女たちも横たわった。
枕元から電子音が聞こえる。
男は二人の少女を起すと、キャリーケースに再び押し込め部屋を出た。
ホテルの敷地を出て人気が感じられなくなったところで、キャリーケースの一部を開けると少女たちがそこから首をぴょこんと出してきた。
「雲母が言う通りだと日本のエーゲ海ってこの辺りだぞ」
「こっちだと思う…」
指を指した方向は海岸とは逆で国道の方向だ、仕方なく国道に向かって歩き出す。
国道に出たところで改めて雲母が指差した方向にむかいしばらくすると「ここだ」と雲母がいう場所で立ち止まる。
そこにあったのは、けばけばしい外観のラブホテルだった。
「本当にここなのか?」
「すごーい、お城みたいですね」と黒曜石は無邪気に喜んでいる。
「ここの201という部屋だ」
「しかたがないな、中に入っておいてくれ」
キャリーケースを閉めホテルに入っていく、偶然なのか201号室だけが空いているようでパネルの明かりが光っていた。
ボタンを押してキーを手に201号室を目指す。
キーを差込みドアを開けると天蓋付のベッドが目に入る。
キャリーケースから二人の少女を出してやると、黒曜石はキョロキョロと周りを見回し「かわいい、すごい」と繰り返している。
雲母はというと、荒巻をひとかじりすると「こっち」といい風呂場に向かっている。
風呂のドアを開けて中を見ると貝殻型の湯船が鎮座していた。
「風呂でいいのか?」
「うむ、もう時間だ」
男が時計を見ると日の出の時間になった。
そのとき突然湯船の排水口から水が噴出しはじめ同時に怪しげな煙も湯船の廻りを覆い始めた。
何処からとも無く、荘厳な音楽と女性コーラスが聞こえ排水口からは赤や青の光が舞い踊るように放たれている。
最高に盛り上がったところで、ぶつりと音楽が途切れた。
ぽんっ!という割と情けない音が聞こえると湯船の真ん中にバレーボール位の丸いものが浮かんでいた。
いや、物じゃない…眼や口や鼻もある、なんか細いけど足や手もあるみたいだ。
「あら、おそかったじゃない。あなたがあたらしいマスターね、よろしく」
「真珠さん!」
  黒曜石が彼女の名前を教えてくれた……
やれやれ、何で俺のところに厄介な人形が集まって来るんだ?それでなくても黒曜石と雲母の二人でも大変なのに……
心の中でつぶやいていると雲母がこっちを怖い眼で見ている。
「真珠っていうの?さあ、僕の家に行こう」
そういって、僕は湯船から真珠を拾い上げた。

……黒曜石や雲母が家に来たときの話はまたの機会に……

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