「海行ってみようか」
「きゅ、急にどうなさいましたの?」
突然の誘いに驚く鶏冠石。どうって……ただ行きたいと思っただけなんだけど……。
「今なら人もいないかなと思って。特に何するってわけじゃないけどさ」
「私は別にかまいませんわ」
「きゅ、急にどうなさいましたの?」
突然の誘いに驚く鶏冠石。どうって……ただ行きたいと思っただけなんだけど……。
「今なら人もいないかなと思って。特に何するってわけじゃないけどさ」
「私は別にかまいませんわ」
ということで海に来た。電車を乗り継いで着いた時にはもう4時半だった。
「見事に誰もいませんわね……」
「うん……」
そこにはまっさらな砂浜と寂しそうに打ち寄せる波だけがあった。
「わかってたけど何か寂しいな」
「えぇ……」
少し砂浜に入って歩き回る。サンダルに入る砂が海に来たことを実感させる。鶏冠石は普段の靴で器用に歩いていた。
「見事に誰もいませんわね……」
「うん……」
そこにはまっさらな砂浜と寂しそうに打ち寄せる波だけがあった。
「わかってたけど何か寂しいな」
「えぇ……」
少し砂浜に入って歩き回る。サンダルに入る砂が海に来たことを実感させる。鶏冠石は普段の靴で器用に歩いていた。
どれくらいそうしていただろうか……気づけば日は落ち込み、まっさらな砂浜は朱色の世界に姿を変えていた。
流木に腰掛ける。鶏冠石も隣りに座った。
「綺麗ですわね」
「うん」
「……」
「け、鶏冠石の方が綺麗だよ」
「ぷっ、なんですの? それ」
笑うとこじゃないと思うんだが……。
「秋の海もいいものですわ」
「だな。夏より静かで冬より優しい」
「えぇ……私、この季節が一番好きです」
「夏には夏が一番だって言ってたじゃないか」
「そ、それぞれいいところがありますの!」
「ふ~ん……」
きっと一つの季節じゃ満足できないんだろうな。
「まったく……台無しですわ」
「台無しでいいよ」
「え?」
「台無しなら、また来ればいい」
「……そうですわね。また来ましょう。何度でも……」
「うん……」
暑くて長かった夏も終り、短い秋が来る――。
流木に腰掛ける。鶏冠石も隣りに座った。
「綺麗ですわね」
「うん」
「……」
「け、鶏冠石の方が綺麗だよ」
「ぷっ、なんですの? それ」
笑うとこじゃないと思うんだが……。
「秋の海もいいものですわ」
「だな。夏より静かで冬より優しい」
「えぇ……私、この季節が一番好きです」
「夏には夏が一番だって言ってたじゃないか」
「そ、それぞれいいところがありますの!」
「ふ~ん……」
きっと一つの季節じゃ満足できないんだろうな。
「まったく……台無しですわ」
「台無しでいいよ」
「え?」
「台無しなら、また来ればいい」
「……そうですわね。また来ましょう。何度でも……」
「うん……」
暑くて長かった夏も終り、短い秋が来る――。