宝石乙女まとめwiki スポーツの秋
「はっ!!」
「ッ!! やっぱ鶏冠石は上手いな……」
「あなたが運動不足なだけですわ。ほら、次のゲームやりますわよ」
「ちょ、まだやるの!?」
「当然ですわ。すぐに立ちなさい!!」
  俺は今、市の体育館でバドミントンをやっている。なんでインドア派の俺がこんなことしてるかと言うと、一時間前に遡る――

「テニスでもやりにいきましょう」
「はぁ? なんでまた。俺運動苦手なんだぞ?」
「スポーツの秋と言いますわ。身体を動かすことはよいことです」
  この時はまだ、鶏冠石のタフさを知らなかった。
「ならテニスじゃなくてバドミントンにしよう」
  俺はなんとなくテニスよりは走り回らなくてすむと思ってこう答えていたんだ。
「別に種目はなんでもいいですわ。そうと決まれば体育館に連絡してください」
「へいへい……」
  こうして地獄の時間は始まった――

「休んでる暇はありませんことよ!!」
「ちょ、もう勘弁してくれ……してください……ホントに死んじゃいます」
  もう動けない。三時間もぶっ通しで打ち合わされたら腕なんか全く上がらない……。
「だらしないですわね……まぁいいですわ。30分だけ休憩をとりましょうか」
「ありがとうございます~……」
  水分が欲しい……持ってきたお茶のところまで這いずる。
「そうですわ。ストレッチをしてさしあげます」
  またなんか言い出したよ……。
「いいよ。どうせテレビやらなんやらの知識だろ?」
「む、いけませんの?」
「いや、いけなくはないこともないけど……」
  ストレッチは痛いイメージがあるんだ……本来は痛気持ちいいくらいのところで止めてじんわり伸ばすのがいいんだ。
「大丈夫ですわ。実は私スポーツの本も読みましたの」
  読書の秋ですわ、と胸を張る鶏冠石が眩しい。こいつ、なんか健康的だな。しかしこういうときの鶏冠石は渋ってもやりたがるんだよな……そろそろやりたそうな表情になりそうだ。
「じゃあちょっとやってもらおうかな……腰と肩周りお願いできる?」
「当然ですわ」

  これは、うまい……鶏冠石はもともとなんでもソツなくこなすからな……初めから素直に甘えとくべきだった。うあ~……。
「どうですの?」
「あぁ……凄い気持ちいい……」
「でしょう?」
  でもなんか……他の利用客の皆様方の目が……ってなんか卑猥な体勢っぽい!!
「鶏冠石! も、もういいから!」
「あら? どうしましたの? まだ広背筋のストレッチが――」
「いいから! どいてくれ! 俺早くバドやりたいなぁ!!」
「やっとヤル気になりましたのね。よろしいですわ。ではやりましょうか」
  く、奇異の視線が痛い……鶏冠石って意外と周りの目を気にしないのか?
「さぁ、後二時間はやりましてよ」
  さぁて……潔く死のうか。

  帰り道。悲鳴をあげる身体を引きずる。
「あれくらいでへこたれるなんて。運動不足も甚しいですわね」
  もう答える気力もないよ……。
「また、行きましょうね……?」
  ……まったく、俺はなんてダメ男なんだ。
「次は負けないからな」