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大切なものを守れるように

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匿名ユーザー

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  ガッ!!
  重い音がして、斧が飛んだ。それで勝負は決まった。
「珊瑚、まだまだ甘いわね」
  ふわりとした微笑みはそのままに、淡緑色の髪をなびかせてその人は言った。
「くっ……さすが、師匠……!」
  押し出すように、そう言うのが精一杯だった。

  優しい手の感触で目が醒めた。
「大丈夫?」
  優しい声。師匠の、ペリドット。
「――っ!」
  って、膝枕!
「こら。暴れちゃ、めーよ。頭を打ってるみたいだし」
  起き上がろうとした頭を押さえられて、子供のようにぽんぽんとなだめられた。優しい動きなのに微動だにできないってどんな力なんだ……。
「……無様なところをお見せしました」
  恥ずかしさに消え入りそうになってつぶやいた。
「そんな台詞は一人前になってからお言いなさい」
  くすくすと笑って頭を撫でられる。
「今は鍛錬なさい。いつか、あなたに大切な人ができたときに、守れるように」
  胸の奥がちり、と痛んだ。そう言った師匠の顔が、少しだけ悲しそうだったから。
  大切な人を守れるようにというなら、今自分が守りたいのは……。
「そんな顔をなさらないでください、師匠。某はもっと強くなってあなたをお守りしますから!」
  思わず、頭を撫でていた手を握っていた。
「……あっ……失礼しました……」
  自分がしたことの意味に気がついて、顔が熱くなった。何を言っているんだ某は! 頭を打ったからだと思いたい……。
  きょとんとしていた師匠は、くすくすと笑いだした。
「うん、ありがとう。嬉しいわ……でもね」
  握った暖かい手がそっと包み返してくれる。
「いつかあなたにも、この庭園の外に大切な人が現れる日が来る。そのときに、後悔のない日々を送れるように」
  大切な人……某には、わからない。自分には、この庭園と、お父様、姉妹たち……そして、師匠。これだけが、大切なものだから。
「某には……わかりません」
  庭園の外に行くということは、この穏やかで幸福な日々から離れるということだ。そして、この優しい手からも。
「……いつか、ね。後悔しないように。本当のところ、私があなたに伝えたいのは、これだけなの」
  某は、泣いていたのかもしれない。優しい笑顔が、うまく見えなかった。
  だだっ子のように手を握って離さない某の髪を、師匠はいつまでも優しく撫でてくれていた。

  そして遠くない未来、某は師匠の言葉の意味を知ることとなる。それは甘く温いゆりかごのような庭園から出てこそ、知ることができるものだった。
  お父様や姉妹たちへの愛は変わらない。某は大切なものを守る。お父様を。姉妹たちを。そして。

「……珊瑚」
「はい、主殿」

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