宝石乙女まとめwiki ご飯とおかずと味噌汁と
  どうも、たくあんばかりで栄養失調気味の人です。いや、たくあんだけじゃなくいろんな漬物を作ってもらっているのですが……あぁ、その前に俺の同居人を紹介しないといけないね。
「マスター、手伝ってもらえますか?」
「あー、はいはい。今日は何漬けてるんですかね?」
「今日はいつものに加えてトマトをぬか漬けにしてみようと思いまして」
  この子が同居人、名前は漬物石。変な名前だけど、着物姿でつり目がちの可愛い女の子だ。家庭的でとてもいい子だが、彼女は人間ではない。宝石乙女という人形らしい……漬物石って、宝石じゃないよね? 何故かダイヤモンドを漬物石代わりにしているイメージが浮かんだよ。
  もちろんそんなことはない。彼女は普通の木の樽と普通の漬物石を使って作る、昔ながらっていうのかな、そういうタイプの子だ。でも力はあまりない。だからこうして漬物石を乗せるのは俺の役割。
「と、トマトねぇ……テレビでは見たことあるけど」
  ちなみにいつものはキュウリとナスと大根だ。
「この前栄養失調で倒れてしまって以来、いろいろな食材にチャレンジしてみているんですよ……あのときは本当にすみませんでした。私の配慮が足りないばかりにマスターにご迷惑をおかけして、どうお詫びを申したらいいのか。そもそも漬物以外のお料理ができない私自身をどうにかしないといけないですよね、これはもう黒曜石さんにお料理の手本を……」
「ストップストップ! もう気にしてないし、俺だって少しは料理できるようになったから、問題ないよ」
「はい……」
  この子は生真面目だ。自分が悪いと分かるとすぐこうやって自分を追い込んでしまう。自分でも悪い癖だと分かっているんだろうけど、まぁそういう性格から来るものって治らないかもね……それに、こういう生真面目な性格だからこそ、美味しい漬物が作れるのかもしれないしね。
「ほら、元気出して。これ終わったらそろそろご飯食べたいし……今日は何を出してくれるの?」
「は、はいっ、今日はー……」
「慌てないで。じゃあこれ乗せたらオカズの用意してくるよ」
「はい」

  塩分控えめで成人病を気にし始めた今日この頃。俺が作るおかずは、若者の料理とは思えないほどの和風薄味ばかりだ。まぁ、味覚を鍛えるのにはいいかも知れないけど。
「マスター、私も手伝います」
「ありがとう。じゃあこっちの奴切っておいてくれないかな」
「はい」
  二人で台所に並んで料理。なんだか新婚夫婦みたいでくすぐったい気分になってしまうけど、俺はこの時間が結構好きだ。誰かと並んで料理なんて、一生にあるかないかだしなぁ……。
「んしょ……っ、んぅー……」
  でも、流し台にちょーっと身長が届かないんだよねぇ、漬物石。こういう小さな子供みたいな動作を眺めるのは微笑ましい……あと、ちょっと面白い。
「台、使わないの?」
「こうして背伸びをすれば、人形でも身長が伸びるかと……んーっ」
「人間でもそれは一時的なものだから、無理しちゃダメだよ。はい」
  火を止め、漬物石の足下に台を持っていく。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。ほら、お腹空いたでしょ? 早く作っちゃおうよ」

  野菜炒め、味噌汁、ご飯。今日の夕食だ。
「ふぅ、お腹空いたねぇ」
「はい」
  昔ながらの丸いちゃぶ台に向かい合って座る。漬物石は体が小さいので、食器や盛りも全て俺より一回り小さい。
  で、やっと落ち着いたところで夕食……っと、その前に毎日三食、食前にやっておかなければならないことがある。
「漬物石、いつものお願い」
「はい」
  これがないとご飯が始まらないんだよね、気分的に。漬物石には変といわれるけど。ちなみにそれは、漬物石と最初にご飯を食べたときのことで……。
  ちゃぶ台に、そっと漬物の入った皿が置かれる。そして漬物石から一言。
「……きゅうり。わたしが漬けたの……」
  今日も美味しい晩ご飯でした。ごちそうさま!

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