宝石乙女まとめwiki 鶏冠石の憂鬱
  わたくしは常々、宝石乙女とはかくあるべきと考え振舞っております。とはいえ、天真爛漫な他の姉妹たちを見るにつけ、あのように可愛げがあれば、わたくしももっとマスターに愛されるのではないかと思うことはあります。
「……鶏冠石?」
  声をかけられて我に返ると、そこには瑪瑙がおりました。少年のように凛々しい姿、それでも心の内は誰よりも乙女らしいことを、わたくしは知っています。同じお父様から生まれた姉妹ですから。
「どうしたの? 元気ないね」
「……いえ、何でもありませんわ」
  優しく微笑まれて、胸が痛みました。一瞬とはいえ、瑪瑙に嫉妬してしまいましたので。
「瑪瑙、貴女は可愛らしいわね」
「えっ!? な、何……」
「わたくしも、貴女のように可愛らしかったら……」
  思わず愚痴のような台詞がこぼれました。いけない、こんなことを言うつもりはなかったのに。
「……鶏冠石は、すごく素敵だと思うよ」
「え?」
  思わず顔を上げると、瑪瑙が優しく微笑んでいました。
「立ち居振る舞いもそうだし、誰よりも美しくあろうとする心を持ってるじゃないか」
  ――姉妹だから、わかるよ――そう言って笑う瑪瑙の顔を見ていることはできませんでした。わたくしの顔が、急な感情の変化で赤く染まるのを見られたくありませんでしたから。
「……っ! 戯言を申しましたわね。忘れてください」
  瑪瑙が苦笑いをしたのが伝わってきます。ああ、また。わたくしはどうして素直に言えないのでしょう。たった一言でいいのに……いえ、甘えていてはいけない。わたくしは息を吸うと、声が上擦ってしまいそうなのを押さえ、最高の笑顔で言いました。
「……でも、ありがとう。瑪瑙」

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