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月長石の素敵な一日

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jewelry_maiden

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  今日は実に快調。目覚めは最高に良かったし、朝ご飯は食べた。美味しかったよー、自分の腕を褒めちゃうぐらいっ。
  だけど、そんな素晴らしい一日の始まりなのに……アメジストの奴ぅ~。
月「『今日は一人で遊んでなさい』だってぇ~? 付き合い悪いのーっ」
  ま、別にいいモンねーだ、アタシ一人でもさ。
  という訳で、今日は誰であそぼっかなぁ……いつも金剛石や瑪瑙ばかりだと飽きちゃうからなぁ。
  んー……よし! 今日は人間を相手してやろーっと。
  でもどいつを狙うか……天河石のマスターはちょっと柄が悪いから嫌いだし、蛋白石のマスターは面白くなさそう。
  となると、やっぱ黒曜石のマスターかぁ。アレも人間としては面白みがないけど……まぁ、蛋白石のトコよりはマシかなー。
  と、言う訳で黒曜石の家に移動ーっと。
月「さぁ~って、何しちゃおうかなぁー……ここはやっぱアレかなぁ、男だし」

  さっきは買い物がないとは言ったが、よくよく考えたらお米が無くなっていたと黒曜石に言われた。
  でも黒曜石にお米を買うのは無理。だから金剛石に一応行かせたが……。
黒『金剛石ちゃん、財布忘れちゃったみたいで……多分気付いていないし、届けに行ってきます』
  と、がっかりした様子で言っていたのを思い出す。まったく、金剛石はおっちょこちょいなんだから。
  という訳で、今僕は部屋で独り。雲母や瑪瑙も出かけているらしく、やたらと静かだ。
月「やぁ」
主「ぬぅわーあぁぁぁ!?」
  て、天井から顔!?
月「にひひひ、成功成功っと」
  ……この喋り方、月長石か。あーびっくりした。
主「もぉ、脅かさないでよ……みんなならいないし、今日は具合悪いからイタズラは勘弁してよ」
月「ふーん、具合悪いんだぁ。あながち二日酔いか何かじゃないのー? 図星? 図星でしょ? ほらやっぱー」
  す、鋭い……何で分かるんだろ。
月「男ってこれだからダメなのよねー、自分の限界を知らないで飲むんだから。黒曜石かわいそー」
主「う、うるさいなぁ。付き合いなんだから仕方ないでしょ」
月「その言い訳をするのはオヤジの証拠だよー」
  うぐっ、痛いところを……自覚はあったけど、言われるとすごい痛い。
  とにかく何か話題を変えないと……。
主「ね、ねぇ……いつまで僕の膝に乗ってるつもり?」
月「んー? そんな減るモンでもないし、細かい事気にしないの。それともまさか重いとか言うんじゃないでしょうねぇ?」
  あぁー、目に殺意が篭もってる。やっぱりこの子達も体重については気にしてるんだなぁ。
  ……って、変化しないよっ、人形なんだし!! とは大声で言えない……だって怖いんだもん。
主「べ、別にそういう訳じゃないけどさ」
月「にしし、ならいいじゃん」
主「だからってくつろぐなぁー!」
  …………
  重い体を引きずり、月長石にお茶を差し出す。普通の日本茶だが、月長石は文句を言わずに飲んでいる。
主「……で、こんなところにいたって君の暇は潰れないと思うけど?」
  遠回しに退出を願ってみても、月長石にその兆候は見られない。こうなったらお茶漬けでも出すかな。
  だが、その前に月長石が口を開く。
月「退屈をどう潰すかなんて、アタシの自由でしょー?」
主「だからってそれに俺を巻き込まないでよ」
月「他人を巻き込んでこその暇つぶしでしょうが」
  うわぁ、とんでもない奴だ……。
月「さぁてと、ここってあなたの部屋なんだよねぇ? じゃあエッチな本の一冊や二冊はぁー」
主「こ、こらぁ! 物色するなー!」
  タンスや本棚の裏を調べ始める月長石。でもそんなとこ探しても無駄だよ、この前瑪瑙に全て処分されたし……。
  それでも部屋を物色されるのはいい気分ではない。俺は月長石を止めようと部屋を歩き回るが、なかなかどうしてこの
狭い部屋でヒラヒラと舞うように動けるのか……全然捕まらん。
月「んー、エッチな本はないみたい。じゃああなたはデジタル派ー?」
  今度はパソコンを弄り出す。さすがにそこはまずい、色々と!
主「だ、ダメーってえぇ!?」
月「うにゃっ!?」
  布団が足に絡まり、そのまま月長石に向かって倒れ込んでしまう。
  だが、さすがに潰してはダメだろう。俺は腕に渾身の力を込め、四つん這いになって何とかそれを防ぐ。くぅーっ、手がしびれるー……。
月「ふーん、デジタルでもアナログでもなく、リアル派なんだぁー」
主「え……?」
  俺の中の時が止まる……いや、この体勢……明らかに俺が月長石を押し倒して……。
主「くぁwせdrftgyふじこlp;:@「」!?」
月「んー? 別にそんな慌てなくてもいいのにぃ、お兄さぁん♪」
  そういう問題じゃない。とにかく彼女から離れないと、もし黒曜石が帰ってきたらのわっ!?
主「げ、月長石……手、離して」
月「んー、このまま黒曜石達が帰ってきたらぁ、どーなるかなぁ?」
主「分かってるくせに……だから離して」
月「そうだねぇー、でもこのあとの出来事はなかなか退屈しのぎになりそーよ?」
主「おおお俺は退屈じゃない! 生活に関わる大問題なんだ、放せ!!」
  語気を強めてみるが、月長石の悪戯な笑みに変化はない。完全に俺の反応を楽しんでいる。
月「んふふ、でも黒曜石達が帰ってこなければ、あなたの好きな事が出来ちゃうよー」
主「ばば、馬鹿な事言うな!」
  きっと俺の顔は赤くなっているに違いない。だからこいつ、より一層楽しそうに笑っているんだな。
月「じゃあさぁ……もしもここでアタシがぁ……」
主「な、なんだよ……」
月「……いいよ、って言ったらぁ、どうする?」
主「!?」
  お、落ち着け俺! これは月長石のいたずらだ! 人をからかって楽しんでるだけだ!!
  あーもぉ嫌だ! 早くこいつから離れて……って、いつの間にか腕が首に回されてる!? 月長石の顔近っ!!
月「アタシねぇー、あなたみたいな男ぉ、結構好みなのよぉ? からかうと面白いし、可愛いし……」
主「う、うぅ……分かったからさ」
月「ホントに分かってるのぉ? 女の子がこういうこと言うってことの意味とかぁ」
主「そ、それは月長石が俺をからかって……」
  そこまで言うと、何故か月長石はにやりと笑って、俺に密着して……えぇ!?
  彼女の唇が、俺の耳に触れそうなほど近くに寄ってくる。
月「……ホントに、これが狂言だって……言える?」
主「あ、ああぁ……」
  や、やばい、頭が回らなくなってきた……もう何がなんだか。
黒「マスター、ただいま戻りましたー」
主「!!??」
  こ、黒曜石! 玄関から確かに声が!! レッドアラート、緊急事態!!
主「は、放せ放せ!」
月「んふふ……かぷっ」
主「ひっ!?」
  み、耳たぶ甘噛みするなぁ!
黒「マスター、ちゃんと寝てますかぁ?」
  って、黒曜石がもう俺の部屋の前間出来てる!
  やばい……やばいやばいやばいやばいやばっ!
  …………
  あれ、どうしたんだろ、俺……いつの間にか意識が無くなって……。
黒「目が覚めましたか? もぉ、ちゃんと寝てなくちゃ駄目ですよ?」
  え、黒曜石? 頭上から黒曜石の声が……。
  ……って、あれぇっ、なんでちゃんと布団で寝てるの!?
主「こ、黒曜石……俺、一体……」
黒「ふふ、マスター寝相が悪くて、布団蹴り飛ばして変なところで寝てましたよ?」
主「ね、寝相……? パソコンの前辺りまで転がってたの?」
黒「はい。元に戻すの苦労したんですよ」
  ……さっきまでのは、夢……?
主「っ!」
  首筋にかすかな痛みが走る。
黒「どうしました?」
主「え、いや……黒曜石、この辺りに何かない?」
黒「マスターの首筋ですか? ……んー、なんだかよく分かりませんけど、噛まれたみたいな痕がありますよ」
  噛まれた……そんな事をするのは一人しか思いつかない。
黒「まさかマスターが自分で噛めるはずないし……どうしたんでしょうね?」
主「え、あぁ……なんなんだろうなぁ」
  言えない……さっきまで起きていた事、言える訳がない。
  俺はその場を苦笑でごまかす事しかできない。ちくしょー、月長石の奴……。
  でも黒曜石の様子を見ると、彼女が入る直前で俺を解放したのだろう。
  ……はぁ、すっかり遊ばれてしまったよ
主「……黒曜石、水持ってきてくれないかな?」
黒「あ、はい。分かりました」
月「と、いう訳で、すっかりアタシの思うツボになった訳よぉー」
  夕食時、今日の笑える話を早速アメジストに話してやる。今回のは談笑のネタとしては最高だよ。
  でもアメジストの奴、こちらの事笑って見ているだけだ。少しは話し合わせろーっ。
ア「あそこのマスターも、ずいぶんと迷惑な子に目を付けられてしまったようだね」
月「なっ、迷惑って何よぉー。それはアンタも一緒でしょーっ」
ア「ふふ、あいにく彼には興味無しだよ」
月「あっそ」
  面白くないのー。結構あいつからかうと面白いのにぃ。
  特にあの慌てぶり、冗談じゃなく本気で可愛かったなぁー。
  うん、あいつは気に入った。しばらくはアレで楽しませてもらおっと。
ア「……本当に、彼も大変だな。色々な子に目を付けられて」
月「何か言った?」

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