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朝顔○○絵日記

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匿名ユーザー

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「マスターマスター、これ見てーっ」
 部屋に籠もり、持ち込みの仕事を片づけていたところにやってくる金剛石。
 勢いよくドアを開けて、相変わらず元気の良い声で……もう少し慎みを持ってもらいたいところだ。
「まーすーたぁーっ、こっち見て……見てくださいよぉー」
「あ、あぁ。でももう少し静かに……ん?」
 小言を漏らしながら振り返ると、なぜかこちらに差し出されたノートが一冊。
 タイトルは書かれていない、あまり汚れのないノート。いつの間にこんなものを持っていたのだろうか。
「という訳で、これ読んでみてー」
 そのノートが、俺に手渡される。
「ん、あぁ。それはいいけど、まず言葉遣いをだね」
「あ、あはは……おぉっと、あたし珊瑚と約束してるから、これにて失礼!」
 俺の小言から逃げたかったのか、今度は脱兎の如き勢いで部屋を出て行く。
 ドアはやはり開けっ放し。どうせなら閉めていって欲しいと思い、ため息をつくと……。
「あっ、ちゃんと採点よろしくね。それじゃっ」
 突然顔を出したと思えば、それだけ言い残して再びこの場を後にする。
 相変わらずドアは開けっ放し。だから閉めて行ってと何度も……。

 仕事も一通り終わり、机の上にあるのは金剛石から受け取ったノート。
 読んでおけとは言われたが、そもそもこれは何について書かれたものなのか。
 採点とか言っていたから、もしかして勉強でもしていたのだろうか。にわかに信じがたい話だが。
 だが、勉強ではないとしても自主的に何かをやることについては良いことだ。という訳で、早速ノートを開いてみる。

『5月2日・くもりときどきあめ』
 1ページ目の左上に書かれていた一文。
 丸みのある、どこか女の子らしい文字。その下には色鉛筆で丁寧に描かれた鉢植えが一つと、
横書きで書いてある長い文章。
『虎眼石からもらった種を、早速植えてみた。アサガオの種だって』
 そんな出だしから始まる文章は、朝顔の観察日記だった。
 なるほど、最近早起きしていたと思ったら、そんなことをしていたのか。

『5月13日・あめ さすがに一日で芽は出てこない。あと、雨降りの日は水やりをする必要が無くて楽ちん。ラッキー♪』
 軽い調子で書かれている観察日記。だがその内容はなかなか細かく、読んでいて飽きない。
 小学校の頃に自分もやったけれど、こんな楽しい気分で観察はしていなかったと思う。

『5月16日・くもりときどきはれ やっと芽が出た。でも、何か遅い気がする……
明日【蛋白石のマスター】にでも聞いてみよう』

『5月17日・はれのちあめ 「動物のことならそれなりに教えられるけど」と、
何だか【蛋白石のマスター】が困ってた。おかしいの、植物だって生き物なのに。
でも植物の育て方の本を借りることが出来たっ』

『5月21日・はれ 双葉の芽がたくさん! これはすごいっ。あたしの育て方もなかなか様になってきているって訳ね、
うんうん』
 金剛石自身、朝顔飼育を楽しんでいるのがよく分かる。
 わざわざ計ったサイズを記録しておいたり、その日あげた肥料の量やらもしっかりと書き込んでおいたり。
 もしかして、意外とまめなのだろうか。

『6月29日・あめ アサガオもずいぶんと大きくなった。肥料もいっぱいあげてるし、何だか喜んでる見たい』
 ハートマーク付きのページを読み終え、次のページへ。

『6月30日・あめ』
 その一文の下の絵。
 それが、なぜか急におかしなものになっていることに気付いた。
 ……金剛石より、大きな蔓。
 なんだこれは。わざと大きく描いたのか?
『虎眼石の言うとおりだ。ものすごい勢いで大きくなってる。すごい!』
 確かにすごい。ノートに書かれていた長さを見ても、それは軽く2メートルほどはあると書かれている。
 おかしい。何かがおかしい。妙な不安が胸の中で巡るのを感じながら、俺は日記を数ページ飛ばす。
 ――花が咲いたら、どうなるんだ?

『7月22日』
 おとついの日付。
 そこには書かれていたはずの天気すら書かれておらず、代わりに巨大な朝顔が、
めくった1ページにでかでかと描かれていた。
 金剛石らしき人物はとても小さく描かれ……しかもこれ、ただの巨大朝顔ではない。
なぜか花に牙のようなものが生えており、禍々しい雰囲気を醸し出している。
『ついに咲いた、巨大アサガオモンスター! 虎眼石が特訓のためにと用意してくれただけのことはあり、
かなり手強い!』
『あたしを押しつぶそうと振り上げてくる蔓。それを受け止め、鉢植えごと振り回す』
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『油断していたら、体に細い蔓がからみついてくる。これが意外と力が強く、息苦しい。
だけどこの程度で負けるあたしじゃない! 蔓を引きちぎって反撃だぁっ!』
『無理矢理アサガオを登って、花びらを引きちぎってやる。ものすごい鳴き声だ。耳がおかしくなりそう』
 そんな武勇伝が、絵と共に2ページに渡り続く。
 これは……何なんだ? 朝顔の観察日記じゃないのか?
 そろそろライトノベルでも読んでいるような気分になってきたところで、次のページへ。
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 描かれている絵は、すっかり参った状態になっている巨大朝顔と、その上で勝利のポーズを決める金剛石。
 そして文章は……。
『4時間ぐらいかなぁ。気付けばアサガオはぼろぼろで、もうすっかり虫の息』
『最後の力を振り絞って反撃してきたけど、あたしはそれを軽々と弾く。
そしてとどめのダイヤモンドパーンチ!!』
『これが決め手となり、アサガオは完全にダウン。動かなくなっちゃった。やったね、勝利!』
 やったねじゃないよ……。
『倒したアサガオからは、種がいっぱい手に入った。でもさすがにこれ全部を育てるわけにはいかないから、
虎眼石に返しておこう。途中置石が「下剤に使うから」とか言って半分ほど持って行ったけど……はて、どうするんだろう』
『まぁ、とりあえずこれであたしの戦いは終わり。という訳で、この朝顔討伐絵日記はここまでっ。あー、楽しかった!』
 最後はでかでかと終と書かれており、残りの数ページは白紙。
 ……観察日記じゃなく、討伐日記だったのか。
 ため息をつきながら、ノートを机の上に戻す。さて、どういう採点をすれば良いんだ?
 良くできましたとでも書けばいいのか……いやいや、こんな事認めるわけにはいかない。
金剛石はもっとおしとやかになってもらわないと、ペリドットさんや真珠さんに怒られてしまう。
ここは厳しく採点するべきか……いや、せっかく自主的にこういう事を始めたんだから、褒めるべきでは? 
でもそしたら今度は昼顔討伐絵日記なんて書き出すんじゃ……。
 そんな自問自答を繰り返す中、俺が導き出した一つの答え。
 ……そもそも、虎眼石ちゃん何てものを作ったんだ。

          ○

「はい【蛋白石のマスター】、お裾分けよぉー」
「ん、ありがとう。珍しいね、置石ちゃんがケーキくれるなんて」
「いいのいいのー。たまにはあたしも料理したくなっちゃったのよぉ。それでね、材料もらいすぎてたくさん作ったからぁ」

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