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きみのせなか

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 瑪瑙のことなんて放っておけばよかった。
 だってあの子は森に慣れているから、わたくしが心配……じゃない、わざわざ見に来てあげなくても、
もうすぐ屋敷に戻ってきたでしょうから。
 ともかく、森の見回りに行ったままなかなか帰らない瑪瑙が悪いのだ。
 「……不覚、ですわ」
 わたくしは痛む足をさすった。
 歩きづらい森の中で、つまづいてひねってしまったようだ。
 窪地でたった一人。
 涙がにじみそうになるのを、頭を振って振り切る。
 その時。
 「――何してるの?」
 猟銃を背負って、いぶかしげな表情で瑪瑙がのぞきこんでいた。
 ……いけない。本格的に涙が出てきた。
 「……ちょっと散歩に出ただけですわ」
 「もしかして怪我したの? ちょっと待って、今行く」
 「け、結構ですわよ!」
 ざざ、っと葉を揺らして、窪地に瑪瑙が降りてくる。
 「鶏冠石、痛いの? 涙が……」
 「こ、これは、貴女が乱暴に降りてくるから埃が目に入ったんですわ!」
 思わず口をついて出た悪態に、瑪瑙は微笑んで返す。
 「その元気があれば大丈夫だね」


 「……一人で歩けますわ」
 「何言ってるの、キミみたいなお嬢様が靴も履き替えずに。よく足をひねっただけで済んだね」
 「生意気なことを言わないで頂戴」
 「はいはい」
 わたくしは瑪瑙の背に揺られて、森を出る。
 背の丈も同じくらいなのに、しっかりとわたくしを背負って、瑪瑙は歩いてゆく。
 「帰ったら手当てしてあげるね」
 「……その前に、お茶が飲みたいですわ」
 「はいはい」
 顔を見られなくてよかった。
 わたくしの顔は涙で汚れているし、何より瑪瑙にこんなに甘えて安心しきった顔なんて、見られたら恥ずかしくて

死んでしまう。
 「……ありがとう……」
 思わずつぶやいた後で、恥ずかしくなって瑪瑙の背に掴まる手に力をこめた。
 瑪瑙の返事はなかった。
 聞こえなかったのか、それとも聞こえないふりをしてくれたのか。
 「……もうすぐ森を出るよ」
 屋敷に帰ったら、ちゃんと瑪瑙にお礼を言おう。
 恥ずかしくて言えないかもしれないけど。
 わたくしは暖かい背中でうとうととしながら、そんなことを考えた。

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