「ご主人様、桃の節句です!」
と、僕の隣で正座をした蛋白席が一言。
確かに明日は桃の節句、雛祭りだ。だけど男の一人暮らしで雛人形もないし、
何か食べてそれで終わりということになりそうだ。
……最初は、その予定だった。だけど蛋白石のこの期待に満ちた顔を見てしまっては、
しっかりと祝ってみたいとも思ってしまう。
「うん、そうだね。もう3月かぁ」
「はい。きっと美味しい桃がたくさん食べられるんですよねぇ。今から楽しみです!」
……あれ?
「とっても甘くて瑞々しくてぇ……あっ、きっとジュースにしたら美味しいですよっ」
両手を頬に当てる蛋白石。腕で胸が寄せられて、普段から気になる谷間が一層際立って……
いやいや、何を考えてるんだ僕は。
でも、何だろう。
僕と蛋白石の間に、ものすごい意識の違いがあるように感じられる。
「えへへぇ……私、桃大好きですよぉ」
「ねぇ、蛋白石。もしかしてものすごい勘違いしてない?」
「へ? 何がですかぁ? 桃の節句は桃を食べてお祝い……ん、何のお祝いでしょう?」
と、僕の隣で正座をした蛋白席が一言。
確かに明日は桃の節句、雛祭りだ。だけど男の一人暮らしで雛人形もないし、
何か食べてそれで終わりということになりそうだ。
……最初は、その予定だった。だけど蛋白石のこの期待に満ちた顔を見てしまっては、
しっかりと祝ってみたいとも思ってしまう。
「うん、そうだね。もう3月かぁ」
「はい。きっと美味しい桃がたくさん食べられるんですよねぇ。今から楽しみです!」
……あれ?
「とっても甘くて瑞々しくてぇ……あっ、きっとジュースにしたら美味しいですよっ」
両手を頬に当てる蛋白石。腕で胸が寄せられて、普段から気になる谷間が一層際立って……
いやいや、何を考えてるんだ僕は。
でも、何だろう。
僕と蛋白石の間に、ものすごい意識の違いがあるように感じられる。
「えへへぇ……私、桃大好きですよぉ」
「ねぇ、蛋白石。もしかしてものすごい勘違いしてない?」
「へ? 何がですかぁ? 桃の節句は桃を食べてお祝い……ん、何のお祝いでしょう?」
「えーっ!!」
轟いた。
蛋白石の驚きの声が、家中に轟いた。狭いアパートだけど。
「も、もも、桃の節句って、花が咲く季節だからそういうんですかーっ」
「うん、旧暦の話だけど。あと桃の実は基本的に夏だよ」
「そんなぁーっ。ややこしいですよぉ!!」
と、珍しく床でじたばたと手足を振り回す蛋白石。
そこまでショックだなんて、相当桃が好きなんだなぁ。
「うぅ……せっかくたくさん食べられると思ったのに……50個くらい」
「それ食べ過ぎ……桃って高いんだよ?」
「だから、お祭りだと安く食べられるのかなって」
そんなお祭りがあるなら、僕も連れて行ってあげたいところだけど。あいにくその手のものを聞いた事はない。
「じゃあご主人様、桃の節句って何のためにあるんですか?」
諦めたのか、体を起こして再び正座。
「ん? 雛祭りだよ。女の子のお祝い」
「女の子、ですか。知りませんでした……うぅ」
すっかり意気消沈といったところか。なんだかまともにお祝いも出来ないともなると、
ものすごく申し訳ない気持ちになってしまう。
さて、どうしたものか……。
「……ねぇ、どうしても桃食べたい?」
「へ? いえ、食べられる季節じゃないなら、その……食べたい、です」
蛋白石の食欲は正直だ。思わず苦笑を浮かべてしまう。
「それじゃあ、明日桃缶買ってくるから、それで我慢してくれないかな?」
「モモカン……桃の缶詰ですか?」
「うん」
僕の言葉を聞いて、蛋白石の顔が少しだけ明るくなる。
「……そ、それじゃあ、それでいろんな桃の料理とか……みんなで、作りたいなぁ」
「あ、それいいね。せっかくだからみんなでいろいろ作ってみようか」
桃の料理なんて、作ったことないけど。
だけど、蛋白石がにっこりと笑ってしまうと、そんなことはどうでもいいことになってしまう。
せっかくの女の子のお祝いなんだ。男である僕が少し苦労してみるのも、いいのかもしれない。
「それじゃあご主人様、早速材料をっ。お荷物たくさん持ちますよ!」
「うん、そうだね。だけどまずは何を作るか決めてから、ね」
「はいっ」
轟いた。
蛋白石の驚きの声が、家中に轟いた。狭いアパートだけど。
「も、もも、桃の節句って、花が咲く季節だからそういうんですかーっ」
「うん、旧暦の話だけど。あと桃の実は基本的に夏だよ」
「そんなぁーっ。ややこしいですよぉ!!」
と、珍しく床でじたばたと手足を振り回す蛋白石。
そこまでショックだなんて、相当桃が好きなんだなぁ。
「うぅ……せっかくたくさん食べられると思ったのに……50個くらい」
「それ食べ過ぎ……桃って高いんだよ?」
「だから、お祭りだと安く食べられるのかなって」
そんなお祭りがあるなら、僕も連れて行ってあげたいところだけど。あいにくその手のものを聞いた事はない。
「じゃあご主人様、桃の節句って何のためにあるんですか?」
諦めたのか、体を起こして再び正座。
「ん? 雛祭りだよ。女の子のお祝い」
「女の子、ですか。知りませんでした……うぅ」
すっかり意気消沈といったところか。なんだかまともにお祝いも出来ないともなると、
ものすごく申し訳ない気持ちになってしまう。
さて、どうしたものか……。
「……ねぇ、どうしても桃食べたい?」
「へ? いえ、食べられる季節じゃないなら、その……食べたい、です」
蛋白石の食欲は正直だ。思わず苦笑を浮かべてしまう。
「それじゃあ、明日桃缶買ってくるから、それで我慢してくれないかな?」
「モモカン……桃の缶詰ですか?」
「うん」
僕の言葉を聞いて、蛋白石の顔が少しだけ明るくなる。
「……そ、それじゃあ、それでいろんな桃の料理とか……みんなで、作りたいなぁ」
「あ、それいいね。せっかくだからみんなでいろいろ作ってみようか」
桃の料理なんて、作ったことないけど。
だけど、蛋白石がにっこりと笑ってしまうと、そんなことはどうでもいいことになってしまう。
せっかくの女の子のお祝いなんだ。男である僕が少し苦労してみるのも、いいのかもしれない。
「それじゃあご主人様、早速材料をっ。お荷物たくさん持ちますよ!」
「うん、そうだね。だけどまずは何を作るか決めてから、ね」
「はいっ」
◆
「で、こんなにも大量の桃缶を買ってきたわけ、ですか」
テーブルを埋め尽くすように並べられた桃缶を見て、殺生石がつぶやく。
「うん……ちょっと、調子に乗りすぎた」
「え、えへへ……」
「これは4人で食べきれる量ではありませんね。明日の祝いは相当派手になりそうで」
「おまつり?」
ため息をつく殺生石に、目を輝かせる電気石。
そして僕は、この桃祭りがいつまで続くのだろうということを、危惧せずにはいられなかった。
テーブルを埋め尽くすように並べられた桃缶を見て、殺生石がつぶやく。
「うん……ちょっと、調子に乗りすぎた」
「え、えへへ……」
「これは4人で食べきれる量ではありませんね。明日の祝いは相当派手になりそうで」
「おまつり?」
ため息をつく殺生石に、目を輝かせる電気石。
そして僕は、この桃祭りがいつまで続くのだろうということを、危惧せずにはいられなかった。
「でも、缶詰なら日持ちしますよね?」
「あ……」
「あ……」