宝石乙女まとめwiki 箱の中は危険でいっぱい♪
 リビングに置かれた、大きな宝石箱。宝石乙女を収める為に作られた、
いわば私達の私室的な物。
 時々、私は自分の宝石箱に閉まってある私物を整理する。最近になって、
やっとやり始めた。
 ドレス、本、アクセサリー。積年の中で溜まった、思い出深い様々な私物。
 しかし、それ全てを持って行くことは出来ない。
 私はどちらかといえば、物を捨てられないタイプ。悪い癖とは思っていても、
ついため込んでしまう。
 だから、物が減るペースはとても遅い。掃除はこまめにと妹達には言うけれど、
こんな状況は皆に見せられない。
 ……さて、今日はドレスの整理でも。宝石箱の一角にある、衣装の部分に手を伸ばす。
 この宝石箱の構造はよく分からない。いくら入れても私達の収まるスペースは必ず出来ているし、
出そうと思った物は必ず全部出せるようになっている。
 一体、どこへ閉まった物は収められるのか。そんなことを思いながら、数枚ずつドレスを出していく。
「……あらあら」
 数枚ほど取り出したところで出てきたのは、もうずいぶんと昔に着ていた緑色のドレス。
まだ精神的に若かったこともあり、ミニスカートで少々露出が多めに感じられる。
 昔はこんなのも着ていた……そう思うと、少しだけ恥ずかしくなってしまう。
 でも、サイズは変わらない。今でもきちんと着ることは出来るし、実際痛みもない。
 ……やめておこう。きっとこれを着る機会はないし、他の子が欲しいと言わなければ捨ててしまおうか。
 …………私は着ない。絶対着ないから……多分。

 一体、あのドレスとどれほどの間向き合っていたのだろう。
 そのドレスといえば、今は……。
「んぅ……やっぱり、今の私には」
 捨てる前に一度ぐらいはと思い、こうして袖を通してみたものの。
 やはり、着ていて落ち着かない。男性ではないけれど、足下の風通しが良すぎる。
 やはりこれは、もう私の着るものではない。早く着替えてしまおう。
「ただいまー」
 ……え?
 玄関から聞こえる、マスターの声。
 まだお昼なのに、まさか帰ってくるなんて……ドレスを脱ごうとした手が止まる。
「いやぁ、何か体調が悪くてなぁ。昼飯は食ったから、部屋で休ん……で?」
 色々帰ってた理由を述べながらリビングへ入ってきたマスター。
 私と目が合い、私と同じくその動きを止める。
 ……長い沈黙。
「あの、これはその……って、どうして携帯電話を向けるんですか?」
「ん、写メ」
「え、写……だ、駄目ですっ!」

「ペリドット、一つ質問。お前いつも鎌はどこにしまってるんだ?」
 ベッドの上で上体を起こした姿で、マスターが私の顔を睨み付ける。
 もちろん、ドレスはすぐに着替えた。
「申し訳ございません……思わず慌ててしまって」
「慌てたからって鎌を投げつけてくるなよ! 死ぬかと思った!!」
 あまりにも頭が混乱していた私。気付いたときにはマスターに向けて……情けない。
「なんつーか、恐怖で風邪が吹っ飛んだ気がする」
「本当にすみません。でもちゃんと休んでいてくださいね?」
「分かってるって……んでだ」
 ここからが本題と言わんばかりに、マスターの口元に笑みが浮かぶ。
「さっきの格好について説明。あともっかい着て見せてくれ」
「え、あれは昔の……って、もう着ませんっ」
 いつもに増して意地悪なマスター。
 恥ずかしさも相まって、顔ごと視線を逸らしてしまう。
 ……あんなに嬉しそうに笑って。酷い人。
「もっかい見せてくれねぇと、さっきの写メを月長石辺りに……」
 そう言って、片手で携帯電話を操作し始めるマスター。
 その姿を見て、思わず全身でマスターに飛びかかってしまう。
「ま、マスターっ。それ消してくださいっ」
「駄目だな。もう着てくれないって言うんだったら取っておくに決まってるだろ。こんなに似合ってるのに」
 私に携帯電話を触られないように、マスターが頭上に腕を上げる。
 ……画面には、あのドレス姿で赤面する私の顔。
 こんな姿、似合っているなんて言われても嬉しくなんか……。
 ……少しは、嬉しいかも知れない。
「んで、どうすりゃ月長石に会えるんだ?」
「見せちゃ駄目ですよーっ。せめて見るならマスターだけに……っ」
 思わず口から出てしまった言葉。
 それを聞いたマスターの顔は、とっても意地悪な笑顔だった。