年末年始で買い置きの食材が少なくなった頃。
「ごめんなさい、こんなに荷物持ってもらって」
「いいのいいの。でも、黒曜石ちゃんも無理し過ぎだよー」
目一杯膨らんだビニール袋が8つ。
夢中になって買いすぎたと後悔していたところで、偶然蛋白石さんと出会った。
「【黒曜石のマスター】さんはお仕事なの?」
「はい。他の子も用事があるみたいですから、今日のお買い物は私一人です」
両手に3つずつビニール袋をぶら下げた蛋白石さん。
持って行く方法に困っていた荷物。それを軽々と持つ姿は、とても頼もしい。
大きくて頼もしい体に、すごく綺麗な顔。やっぱり、私よりずっとお姉さんなんだ。
「そうなんだぁ。偉いね」
笑顔を浮かべて、私の顔を見つめる。少し照れくさい……。
「ご飯とか、家事も全部やってるの?」
「はい」
「すごいなぁ。私家事苦手だから、いつもご主人様困らせちゃう」
そんなことはない。きっと【蛋白石のマスター】さんだって、蛋白石さんの事を頼もしいと思っているはず。
「そういえば、今日の晩ご飯は何作るのかな?」
「うちですか? 今日はカレーに……ひゃうっ!」
右足で、何か丸い物を踏んでしまった感触。
バランスを失う右足。同時に、体が前方に大きく傾く。
両手には重たいビニール袋が一つずつ。とてもじゃないけど、バランスを取る事なんて出来ない。
ビニール袋が手から離れ、体がゆっくりと倒れる……。
「っと。大丈夫?」
顔から地面に倒れることはなかった。
代わりに、大きくて暖かくて柔らかいものに、顔を埋めている。
これって、た、蛋白石さんの。
「荷物も受け止めたからから平気だよ。それにしても、道に空き缶なんて捨てちゃダメなのにー」
こ、こんな大きいなんて……じゃなくて、早く離れないとっ。
「ああありがとうございひゃあっ」
勢い余って、尻餅を付いてしまう。
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「いえいえっ、何でもないです……はうぅ」
両手に、私が手放したビニール袋を持った蛋白石さん。私の様子が気がかりなのだろう、首をかしげながら見下ろしてくる。
……さっきまでの柔らかい感触が、顔に残っている。
どうしてだろう。同じ女の子の体なのに、こんなにドキドキしてしまう。頬が真っ赤になっているのか、とても熱い。
「それより、ドレス少し汚れちゃったね。怪我はない?」
蛋白石さんの綺麗な手が、差し伸べられる。
こんなに綺麗なのに、すごい力持ちなんだ……。
「は、はい……」
差し伸べられた手を借りて、立ち上がる。
スカートに付いたわずかな砂を、手で払う。
――ふと目に付く、私の胸元。
私の、胸元……。
「もぉー、ポイ捨てはダメだよってみんな言ってるのに……黒曜石ちゃん、どうしたの?」
「……平坦」
「へ? 平坦って、何が?」
「それは、その……はっ! あ、いや、何でもないですっ」
慌てて首を振り、平坦の二文字を頭から払い去る。
と、そこで目に入る、蛋白石さんの姿。
……平坦じゃない……ううんっ、ダメダメ。そんなこと考えちゃ……。
「んー?」
「ごめんなさい、こんなに荷物持ってもらって」
「いいのいいの。でも、黒曜石ちゃんも無理し過ぎだよー」
目一杯膨らんだビニール袋が8つ。
夢中になって買いすぎたと後悔していたところで、偶然蛋白石さんと出会った。
「【黒曜石のマスター】さんはお仕事なの?」
「はい。他の子も用事があるみたいですから、今日のお買い物は私一人です」
両手に3つずつビニール袋をぶら下げた蛋白石さん。
持って行く方法に困っていた荷物。それを軽々と持つ姿は、とても頼もしい。
大きくて頼もしい体に、すごく綺麗な顔。やっぱり、私よりずっとお姉さんなんだ。
「そうなんだぁ。偉いね」
笑顔を浮かべて、私の顔を見つめる。少し照れくさい……。
「ご飯とか、家事も全部やってるの?」
「はい」
「すごいなぁ。私家事苦手だから、いつもご主人様困らせちゃう」
そんなことはない。きっと【蛋白石のマスター】さんだって、蛋白石さんの事を頼もしいと思っているはず。
「そういえば、今日の晩ご飯は何作るのかな?」
「うちですか? 今日はカレーに……ひゃうっ!」
右足で、何か丸い物を踏んでしまった感触。
バランスを失う右足。同時に、体が前方に大きく傾く。
両手には重たいビニール袋が一つずつ。とてもじゃないけど、バランスを取る事なんて出来ない。
ビニール袋が手から離れ、体がゆっくりと倒れる……。
「っと。大丈夫?」
顔から地面に倒れることはなかった。
代わりに、大きくて暖かくて柔らかいものに、顔を埋めている。
これって、た、蛋白石さんの。
「荷物も受け止めたからから平気だよ。それにしても、道に空き缶なんて捨てちゃダメなのにー」
こ、こんな大きいなんて……じゃなくて、早く離れないとっ。
「ああありがとうございひゃあっ」
勢い余って、尻餅を付いてしまう。
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「いえいえっ、何でもないです……はうぅ」
両手に、私が手放したビニール袋を持った蛋白石さん。私の様子が気がかりなのだろう、首をかしげながら見下ろしてくる。
……さっきまでの柔らかい感触が、顔に残っている。
どうしてだろう。同じ女の子の体なのに、こんなにドキドキしてしまう。頬が真っ赤になっているのか、とても熱い。
「それより、ドレス少し汚れちゃったね。怪我はない?」
蛋白石さんの綺麗な手が、差し伸べられる。
こんなに綺麗なのに、すごい力持ちなんだ……。
「は、はい……」
差し伸べられた手を借りて、立ち上がる。
スカートに付いたわずかな砂を、手で払う。
――ふと目に付く、私の胸元。
私の、胸元……。
「もぉー、ポイ捨てはダメだよってみんな言ってるのに……黒曜石ちゃん、どうしたの?」
「……平坦」
「へ? 平坦って、何が?」
「それは、その……はっ! あ、いや、何でもないですっ」
慌てて首を振り、平坦の二文字を頭から払い去る。
と、そこで目に入る、蛋白石さんの姿。
……平坦じゃない……ううんっ、ダメダメ。そんなこと考えちゃ……。
「んー?」
◆
「あ、今日はカレーだね。手伝うよ……黒曜石?」
「……へ? あ、瑪瑙ちゃん。どうしました?」
エプロンを手に取った瑪瑙ちゃんへ、顔を向ける。
「ご飯作るの手伝おうと思って。それより考え事?」
「え、いえ。たいしたことでは……」
瑪瑙ちゃんから目をそらし、鍋へと顔を向ける。
昼間の蛋白石さんの姿。あの柔らかい感触。
なぜか、その姿がずっと忘れられない。
優しくて、頼もしくて、いつも素敵な笑顔のお姉さん。
……ぐつぐつと、カレーから気泡が上がる。
丸くて、大きくて……ぐつぐつと。
「……たくさん食べれば、大きくなりますか?」
「えっ?」
私達のお姉さんは、素敵な人ばかり。
いつか私も、あんな風に……。
「……へ? あ、瑪瑙ちゃん。どうしました?」
エプロンを手に取った瑪瑙ちゃんへ、顔を向ける。
「ご飯作るの手伝おうと思って。それより考え事?」
「え、いえ。たいしたことでは……」
瑪瑙ちゃんから目をそらし、鍋へと顔を向ける。
昼間の蛋白石さんの姿。あの柔らかい感触。
なぜか、その姿がずっと忘れられない。
優しくて、頼もしくて、いつも素敵な笑顔のお姉さん。
……ぐつぐつと、カレーから気泡が上がる。
丸くて、大きくて……ぐつぐつと。
「……たくさん食べれば、大きくなりますか?」
「えっ?」
私達のお姉さんは、素敵な人ばかり。
いつか私も、あんな風に……。