「雨の日の拾いもの」(2006/09/28 (木) 12:39:35) の最新版変更点
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雨が降りしきる夕方――
「拾ってきてしまいましたわ」
猫を抱いた鶏冠石が玄関に立っていた――
「可哀想で放っておけませんでしたの。タオルか何か取ってきてもらえませんこと?」
ハッと我に返る。猫なんて……冗談じゃない!
「ばっ! 猫は飼わないって前に言ったろ! んなもん拾ってくんなよ!!」
「んなもんって……そんな言い方ありませんでしょう!? じゃああなた、この雨の中こんな子猫が捨てられてたら放っておけますの!?」
「ほ、ほっとくよ! てか乙女って猫嫌いなんじゃねーのか!?」
「何ですかその偏った意見は……前から気になっていましたが、あなたなんで猫嫌いなんですの?」
「毛は落とすわトイレは臭いわ壁引っ掻くわで大変だろ?」
「それはそうですけど……お願いですから、雨が止むまででも飼わせてもらえませんこと?」
「……知るか! 俺の部屋に近づけたらゆるさないんだからねっ!!」
動転しながらも部屋に戻る。
くそぅ! ぬこ可愛いよぅ!! なんだよアレ! こっち見てにゃーにゃー言ってたぞ!? くそっ!!! ……でも、一応この家を任されてるんだからしっかりしなきゃダメだ。まぁ雨止むまでなら大丈夫だろう、うん。
……なんて名前にすんだろう。
「ふぅ……これで綺麗になりましたわ」
どうやら微温湯で身体を洗ってたらしい。
「け、鶏冠石」
「あらマスター。あなたの気持ちも考えずに猫なんて拾ってきてしまい、申し訳ありません……」
「や、いいんだ。それよりコレしまってあったから」
檻状の区切りを渡す。
「これでリビングにでも場所作ってやれよ」
「まぁ、ありがとうございますわ。でも……いいんですの?」
「ま、まぁ俺も鬼じゃないからな。雨が止むまでくらい置いといてやるよ。あぁそれと子猫用のミルク買ってきたから。テーブルの上に置いといた」
「ふふ、ありがとうございます」
そう思ってるなら笑わないでほしかった。
翌日――
「晴れたな……」
「晴れましたわね……」
天気予報を見てれば、今日が晴れることくらいわかってたけど。鶏冠石をチラッと見た……らその瞬間に目が合った。チラチラと子猫を気にしながら俺の表情を伺っていた。
「なんだよ」
「い、いえ……その……」
顔面から不安が溢れ出てるな。
「掲示板で里親募集しといた」
「え?」
「見つかるまではウチで飼おうってこと」
「いいんですの!?」
鶏冠石の顔がパッと輝く。俺は鶏冠石の寂しそうな表情を見てられなかったからそうしたんだよ、うん。確かそうだった。
「あとその服」
「あ……これは……」
子猫にやられたんだろう。あちこち綻びがある。
「ジュンがさ、凄く裁縫うまいから。昨日電話で頼んどいた。多分直せるって」
「マスター……」
鶏冠石が悲しむのが嫌だったからやったんだ。別に猫のタメじゃない。
朝のひとときがゆっくりと流れていった。
「それじゃ学校行ってくるから」
「はい、いってらっしゃいませ」
帰ってきたらちょっと猫と遊んでやるか。
結局、猫は次の日に里親希望者が現れて、その次の日に貰われていった。鶏冠石は少し寂しそうな表情だったが、しっかりした里親さんにいくらか安堵していた。
一方俺は部屋で泣いた。
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