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おしどり夫婦? 否、バカップル」(2006/09/11 (月) 22:23:22) の最新版変更点

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置「あたし達宝石乙女とひと味違う奴。それは自称妖怪の殺生石!」   ……どうして私はこんなことに巻き込まれているのだろうか。朝起きたらいきなり置石に連れ出されて……気づいたら黒曜石や雲母、そしてそのマスターがいる部屋に連れてこられていた。 置「あたしはどーっしても気になるのよね、あの狐娘の正体が。だから今日はみんなで殺生石の実態を調査しようと思います!」 黒曜石たちのマスター(以下黒主)「無理無理。あの子置石の何倍も勘が鋭いし」 黒「それは言い過ぎかも知れませんけど……殺生石さんを隠れて調査というのは無理ですよね」 置「えぇい、うるさーい! 雲母っ、あんたもうなずくな!!」   殺生石。蛋白石のマスターのところで居候している妖怪。私たち宝石乙女とは違った存在。どうやら東洋ではかなり有名で、なおかつ日本では最強を誇っているという妖怪らしいが、普段は厳しいが親切な子だ。   で、置石はその最強の妖怪の実態を調査したいという。 虎「実態って何?」 置「そうねぇ、食生活とか普段何をして一日を過ごしているかとか……あっ、何より本当に狐の姿になるのかどうか! 尻尾が9本の狐なんて、きっと動物園に引き渡せばボロ儲け!!」   無理だと思うし、私達にお金はあまり必要ない物のような気がする。今のアルバイトで十分稼げてるし。 黒主「そ、それは……いくらなんでも引き渡すなんて」 黒「大丈夫ですよ。どう頑張っても私たちでは捕まえることなんて……」   黒曜石は何かトラウマがあるのか、体が小刻みに震えている。雲母は……すっかり興味を無くして荒巻と戯れている。このやる気のない(もちろん私も含めて)メンバーで調査なんて、絶対無理だろう。しかも相手は殺生石……。   でも置石は納得行かないようだ。目の前の机に手を叩きつける。やたらとうるさい音が部屋に響き渡る。一斉に静まりかえる室内。 置「……手伝わなかったら、これだからね」   手にはバールのような物。 虎「実力行使でメンバーをまとめるのは無理だと思う」 置「うるさいうるさいうるさーい! とにかくっ、あの狐の正体を探るのよ、絶対!!」   こうなると置石を止めることは私にもできない。まぁ、失敗するのは分かっていること……適当につき合ってあげるのが、妹としての優しさなのかも知れない。 黒「置石ちゃんがそこまで言うなら……うぅ」 黒主「黒曜石、トラウマがあるならちゃんと言った方がいいぞ」 黒「だだ、大丈夫ですよ……うん、大丈夫です」 蛋「ではご主人様っ、今日も美味しいご馳走捕ってきますねっ」 蛋白石たちのマスター(以下蛋主)「あはは……狩猟生活ってある意味すごいよね。それより今日は電気石も一緒なんだね」 電「……荒巻狩り?」   ……電気石からそんな言葉を聞くことになるなんてなぁ。ちょっと僕苦笑い浮かべちゃいそう。 殺「では、妾は主様の身の回りの世話でもさせて頂きます」 蛋「え、珍しい~。殺生石が自分からそんなこと言うなんて」 殺「妾も鬼ではありません。居候の身ゆえ、このようなことをせねば立場がございません」   とは言っても、二人きりの時はすごくよくしてくれるから別にいいんだけどなぁ……べ、別にエッチなことじゃないからねっ! 蛋「それじゃあいってきまーす」 電「お土産……楽しみに、しててね」 蛋主「うん。頑張ってね」   ところでどうして、この家のことをよく知る蛋白石たちに協力を申し込まなかったのだろうか。 虎「なんで?」 置「いきなりなんでなんて聞かれても困るんだけど……あっ、蛋白石たちが出て行く! ってことは家の中には殺生石と人間だけっ」   確かに、家の玄関から蛋白石と電気石が出てくるのは見える。ちなみに私たちは今茂みにカモフラージュしているが……。 黒「み、見つかりませんか? これ」   確かに何もないところに茂みがあれば、普通隠れているとは言えない。……と、早速電気石がこちらを向いた。案の定、不思議そうに首をかしげる。 蛋「お姉様ー、早くぅー」 電「……うん」   こちらを気にしつつも、先を歩く蛋白石の方へ向かっていく。何とか見つからなかったようだ。それにしても蛋白石、武器である包丁を持って一体どこへ……私としてはそちらの方が気になる。 置「ふぅ、少し焦ったー……さぁて、二人きりになった殺生石は本性を現すのかなぁ?」   二人が出て行くと、家の中は途端に静かになってしまう。で、この静寂……殺生石のいつものスイッチが入った証拠でもある。 殺「だんな様」 蛋主「うわっ! 耳元で囁かないでよっ」   早速頬を赤らめて、殺生石が甘えてきた。彼女が年齢を数え直すと決めて以来、僕は彼女より年上ということにされてしまっている。それ故か、最近の殺生石は二人きりになると甘えてくる癖が出てきているのだ。嬉しいやら恥ずかしいやら……。 蛋主「そそ、それより、身の回りの世話をしてくれるんじゃなかったの?」 殺「もちろんです。ですからまずはわたくしがだんな様の下のお世話を」 蛋主「18禁ネタ禁止! 普通にしないと怒るよっ?」 殺「ふふふ、冗談です。わたくしは日が落ちてからの方が興奮しますから」 蛋主「そういう会話も禁止っ! ほらっ、今日は休みだから掃除するよ」 殺「分かりました。だんな様の為に腕によりをかけて頑張ります」 黒「あわわわわ……あああんなに密着ししししてぇ~」   ベランダの窓から見えるやりとりで、黒曜石はすっかり顔を赤くしていた。 置「ふむ、どうやらあの二人……デキてるわね」 虎「決めつけるのはどうかと思う」 置「だーってさぁ、あんなにイチャイチャしてたらもう明らかにラブラブゥ~って感じじゃん!」 黒主「ま、まぁそうだな……すごいな、日本最強の妖怪とあんな……ひ弱そうに見えてすごい人なのかも、あの人」   その通りだ。蛋白石たちのマスターはどう見ても貧弱なタイプ。それなのに……。 虎「二人はおしどり夫婦」 雲「違う、バカップルだ」 黒「そそ、そういう言い方はダメですよ、雲母ちゃん」 置「あー、もうあいつらのラブラブっぷりはどうでもいいの! それより奴の正体をっ」   殺生石がここに来てから、僕の家はすっかり綺麗になった。一人で暮らしていたときはこうも行かなかったし、蛋白石や電気石は……やめよう、泣けてくる。   とにかく、殺生石のおかげで家が綺麗になったとも言えるが、その影響で僕もきちんと掃除を頑張るようになった。今転がしてる掃除機だってこの前買ったばかりだ。 殺「だんな様、お台所の掃除終わりました」 蛋主「ありがと、電気石。休んでてもいいよ」 殺「だんな様が働いているのを見過ごす訳には参りません」   蛋白石達がいるときは見てるだけなのに……殺生石なりに恥ずかしいのかな。 殺「しかしこの掃除機という物はどうも好きになれません。やはり箒の方が万能です」 蛋主「あはは。でも畳ならいいけど、カーペットで箒はちょっとね。よし、終わりっと」   掃除機を止め、壁に立てかける。それにしても、見慣れた部屋が綺麗になっていると、やはり気分がいい。 殺「あ、申し訳ございません。お喋りばかりで手伝わずに……」 蛋主「全然構わないよ。お喋りしながら掃除するのも楽しいし」 殺「そう申して頂けるとわたくしも安心です。それでは今日の昼食はわたくしにやらせて下さい」   殺生石の料理かぁ。美味しいんだよなぁ……ちなみに中国生まれということなので、中華料理が得意なんだよね。ちょっと意外。 蛋主「そっか。じゃあお願いするね」 殺「はい、お任せ下さい……その前に、この箒の実用例をだんな様に伝授して差し上げます」   唐突だなぁ。でも箒の実用例って別に床を掃くだけじゃ……。 殺「例えばこのような場合です。どこからともなく……」   殺生石が箒を構えて何かをしている。動くたびに尻尾が揺れる……あ、こちらを振り返っ……。 殺「このように視線を感じたとき、不審者に向けるのに便利です」 置「ひぃっ!?」   ……あー、気づかれてたんだ。無理もないけど。で、これはもう100人や1000人ぐらい人を殺した目と言わんばかりの視線で、置石に箒の柄の先端を向けている。もう箒というより槍のように見えて仕方ない。   それにしてもものすごいスピードだ。数メートル離れた距離を一瞬……というか瞬間移動で詰めてしまうなんて。蛋白石たちのマスターも、殺生石が動いたことに遅れて気づいたようだ。驚きの表情を隠せずにいる。 殺「どのような目的か存じませんが、出てこなければどうなるか……お分かり頂けますね?」 置「は、はいぃ……」 黒「ガクガクブルブル」 殺「そうですか。置石さんが妾の正体を知りたいと申していたのですか」  こういうとき、私はここまで非情になれるのだと思わず感心してしまう。置石の目的を全て殺生石たちに告げてしまったのだ。で、置石はすっかり青ざめてしまっている。顔だけじゃなく周りのオーラが。でも黒曜石はなんで震えているのだろうか。 黒主「そ、そのぉ……というわけだから、見逃してもらえませんかね?」 殺「妾は別に怒ってなどいません。そうですよね、主様」 蛋主「う、うん。別に恥ずかしいところは……す、少ししか見られてないし」 殺「ということです。それより皆さん、せっかく来たのですから一緒に昼食などどうでしょうか? 料理はたくさん作る方が美味しくなりますし」   この状況で素直にうんと答えられる人がいるのかどうか、私には分からない。でも私は食べたいかも……それを助長するような空腹。そういえば朝ご飯食べてなかった。 虎「食べる」 雲「うん」 殺「良い返事ですね。黒曜石たちも召し上がりますか?」 黒「はは、はいっ、喜んで……」 黒主「そこまで言うんだったら、ご馳走になろうかな……いいんですか?」   黒曜石たちのマスターが蛋白石たちの方のマスターに尋ねる。 蛋主「あ、はい。いいですよ。でも殺生石だけじゃ準備大変じゃない?」 殺「そうですね……黒曜石、お手伝いをお願いしてもよろしいですか?」 黒「は、はい。頑張ります!」 殺「ふふ、頼もしいですけど、肩の力を抜いて下さい……それより置石さん」 置「へっ、あ、は、はいぃ!?」   俯いていた顔を上げる置石。ついに死刑宣告かな? 殺「あなた、妾の正体を見たいと仰っていたそうですね」 置「……はぃ。ホントウに狐になるのかと……」 殺「そうですか。ではこちらの部屋でお見せしますので、どうぞ」 置「ど、どうぞってぇ、首を引っ張らないでぇー!」   置石を隣の部屋に引っ張り込む殺生石。そのまま襖を閉めてこちらに何も見えなくしてしまう。一同沈黙……。 蛋主「……と、とにかく、殺生石が戻ってくる前に準備しておこう。黒曜石ちゃん、手伝ってくれるかな?」 黒「はい……置石ちゃん、大丈夫かな」 殺「さて、妾の狐姿ですか。元の姿になるのはここに向かったとき以来ですから」   な、なんだろう、さっきからものすごーっくどす黒いオーラを感じるんだけど……怖いよぉ。 置「あ、あのぉ、もし手間がかかるようなら、別にいいんですけどぉ?」 殺「手間などかかりません。一瞬で、終わりますから……」   うわあぁぁ、なんで狐の姿に戻るだけでこんな殺気立つのよぉー!? 殺「それでは、久々の変身……」 置「……ぅ、ぁ、あぁぁぁ……」 置「ぎにゃあぁー!」   一同硬直。隣の部屋から響く置石の悲鳴。こんな悲鳴を聞くのは生まれて初めてかも知れない。でも悲鳴を上げるほどの何かがあるのか、殺生石の狐姿というのは。 殺「まったく、見たいと申したのにすぐ気絶してしまうなんて……あら、皆さん準備中ですか? では妾も用意しなくてはいけませんね」   全員の眼差しを受けてもどうにも思わないのだろうか。こちらのことを気にせず、壁に掛かった三角巾とエプロンを身につけて台所に向かう殺生石。 殺「主様、今日は妾がやりますので、向こうでお待ちになって下さい」 蛋主「は、はい……」   そんなやりとりを後ろに、私は置石の様子を確かめに行く。 置「は、はは……ははははは……」   ……すっかり魂の抜かれたような顔をしていた。 殺「皆さん帰りましたね……だんな様、邪魔が入ってしまいましたが、これからでも構いませんよね?」 蛋主「え、そ、その、これから何を……って、ソコは触らないでぇー!」 黒主「ところで黒曜石、なんでそんなに殺生石が怖いんだ?」 黒「え……その、殺生石さんに料理を教わったとき……す、すごく怖かったんですよぉ」 黒主「……そっか」
置「あたしたち宝石乙女とひと味違う奴。それは自称妖怪の殺生石!」   ……どうして私はこんなことに巻き込まれているのだろうか。朝起きたらいきなり置石に連れ出されて……気づいたら黒曜石や雲母、そしてそのマスターがいる部屋に連れてこられていた。 置「あたしはどーっしても気になるのよね、あの狐娘の正体が。だから今日はみんなで殺生石の実態を調査しようと思います!」 黒曜石たちのマスター(以下黒主)「無理無理。あの子置石の何倍も勘が鋭いし」 黒「それは言い過ぎかも知れませんけど……殺生石さんを隠れて調査というのは無理ですよね」 置「えぇい、うるさーい! 雲母っ、あんたもうなずくな!!」   殺生石。蛋白石のマスターのところで居候している妖怪。私たち宝石乙女とは違った存在。どうやら東洋ではかなり有名で、なおかつ日本では最強を誇っているという妖怪らしいが、普段は厳しいが親切な子だ。   で、置石はその最強の妖怪の実態を調査したいという。 虎「実態って何?」 置「そうねぇ、食生活とか普段何をして一日を過ごしているかとか……あっ、何より本当に狐の姿になるのかどうか! 尻尾が9本の狐なんて、きっと動物園に引き渡せばボロ儲け!!」   無理だと思うし、私達にお金はあまり必要ない物のような気がする。今のアルバイトで十分稼げてるし。 黒主「そ、それは……いくらなんでも引き渡すなんて」 黒「大丈夫ですよ。どう頑張っても私たちでは捕まえることなんて……」   黒曜石は何かトラウマがあるのか、体が小刻みに震えている。雲母は……すっかり興味を無くして荒巻と戯れている。このやる気のない(もちろん私も含めて)メンバーで調査なんて、絶対無理だろう。しかも相手は殺生石……。   でも置石は納得行かないようだ。目の前の机に手を叩きつける。やたらとうるさい音が部屋に響き渡る。一斉に静まりかえる室内。 置「……手伝わなかったら、これだからね」   手にはバールのような物。 虎「実力行使でメンバーをまとめるのは無理だと思う」 置「うるさいうるさいうるさーい! とにかくっ、あの狐の正体を探るのよ、絶対!!」   こうなると置石を止めることは私にもできない。まぁ、失敗するのは分かっていること……適当につき合ってあげるのが、妹としての優しさなのかも知れない。 黒「置石ちゃんがそこまで言うなら……うぅ」 黒主「黒曜石、トラウマがあるならちゃんと言った方がいいぞ」 黒「だだ、大丈夫ですよ……うん、大丈夫です」 蛋「ではご主人様っ、今日も美味しいご馳走捕ってきますねっ」 蛋白石たちのマスター(以下蛋主)「あはは……狩猟生活ってある意味すごいよね。それより今日は電気石も一緒なんだね」 電「……荒巻狩り?」   ……電気石からそんな言葉を聞くことになるなんてなぁ。ちょっと僕苦笑い浮かべちゃいそう。 殺「では、妾は主様の身の回りの世話でもさせて頂きます」 蛋「え、珍しい~。殺生石が自分からそんなこと言うなんて」 殺「妾も鬼ではありません。居候の身ゆえ、このようなことをせねば立場がございません」   とは言っても、二人きりの時はすごくよくしてくれるから別にいいんだけどなぁ……べ、別にエッチなことじゃないからねっ! 蛋「それじゃあいってきまーす」 電「お土産……楽しみに、しててね」 蛋主「うん。頑張ってね」   ところでどうして、この家のことをよく知る蛋白石たちに協力を申し込まなかったのだろうか。 虎「なんで?」 置「いきなりなんでなんて聞かれても困るんだけど……あっ、蛋白石たちが出て行く! ってことは家の中には殺生石と人間だけっ」   確かに、家の玄関から蛋白石と電気石が出てくるのは見える。ちなみに私たちは今茂みにカモフラージュしているが……。 黒「み、見つかりませんか? これ」   確かに何もないところに茂みがあれば、普通隠れているとは言えない。……と、早速電気石がこちらを向いた。案の定、不思議そうに首をかしげる。 蛋「お姉様ー、早くぅー」 電「……うん」   こちらを気にしつつも、先を歩く蛋白石の方へ向かっていく。何とか見つからなかったようだ。それにしても蛋白石、武器である包丁を持って一体どこへ……私としてはそちらの方が気になる。 置「ふぅ、少し焦ったー……さぁて、二人きりになった殺生石は本性を現すのかなぁ?」   二人が出て行くと、家の中は途端に静かになってしまう。で、この静寂……殺生石のいつものスイッチが入った証拠でもある。 殺「だんな様」 蛋主「うわっ! 耳元で囁かないでよっ」   早速頬を赤らめて、殺生石が甘えてきた。彼女が年齢を数え直すと決めて以来、僕は彼女より年上ということにされてしまっている。それ故か、最近の殺生石は二人きりになると甘えてくる癖が出てきているのだ。嬉しいやら恥ずかしいやら……。 蛋主「そそ、それより、身の回りの世話をしてくれるんじゃなかったの?」 殺「もちろんです。ですからまずはわたくしがだんな様の下のお世話を」 蛋主「18禁ネタ禁止! 普通にしないと怒るよっ?」 殺「ふふふ、冗談です。わたくしは日が落ちてからの方が興奮しますから」 蛋主「そういう会話も禁止っ! ほらっ、今日は休みだから掃除するよ」 殺「分かりました。だんな様の為に腕によりをかけて頑張ります」 黒「あわわわわ……あああんなに密着ししししてぇ~」   ベランダの窓から見えるやりとりで、黒曜石はすっかり顔を赤くしていた。 置「ふむ、どうやらあの二人……デキてるわね」 虎「決めつけるのはどうかと思う」 置「だーってさぁ、あんなにイチャイチャしてたらもう明らかにラブラブゥ~って感じじゃん!」 黒主「ま、まぁそうだな……すごいな、日本最強の妖怪とあんな……ひ弱そうに見えてすごい人なのかも、あの人」   その通りだ。蛋白石たちのマスターはどう見ても貧弱なタイプ。それなのに……。 虎「二人はおしどり夫婦」 雲「違う、バカップルだ」 黒「そそ、そういう言い方はダメですよ、雲母ちゃん」 置「あー、もうあいつらのラブラブっぷりはどうでもいいの! それより奴の正体をっ」   殺生石がここに来てから、僕の家はすっかり綺麗になった。一人で暮らしていたときはこうも行かなかったし、蛋白石や電気石は……やめよう、泣けてくる。   とにかく、殺生石のおかげで家が綺麗になったとも言えるが、その影響で僕もきちんと掃除を頑張るようになった。今転がしてる掃除機だってこの前買ったばかりだ。 殺「だんな様、お台所の掃除終わりました」 蛋主「ありがと、殺生石。休んでてもいいよ」 殺「だんな様が働いているのを見過ごす訳には参りません」   蛋白石達がいるときは見てるだけなのに……殺生石なりに恥ずかしいのかな。 殺「しかしこの掃除機という物はどうも好きになれません。やはり箒の方が万能です」 蛋主「あはは。でも畳ならいいけど、カーペットで箒はちょっとね。よし、終わりっと」   掃除機を止め、壁に立てかける。それにしても、見慣れた部屋が綺麗になっていると、やはり気分がいい。 殺「あ、申し訳ございません。お喋りばかりで手伝わずに……」 蛋主「全然構わないよ。お喋りしながら掃除するのも楽しいし」 殺「そう申して頂けるとわたくしも安心です。それでは今日の昼食はわたくしにやらせて下さい」   殺生石の料理かぁ。美味しいんだよなぁ……ちなみに中国生まれということなので、中華料理が得意なんだよね。ちょっと意外。 蛋主「そっか。じゃあお願いするね」 殺「はい、お任せ下さい……その前に、この箒の実用例をだんな様に伝授して差し上げます」   唐突だなぁ。でも箒の実用例って別に床を掃くだけじゃ……。 殺「例えばこのような場合です。どこからともなく……」   殺生石が箒を構えて何かをしている。動くたびに尻尾が揺れる……あ、こちらを振り返っ……。 殺「このように視線を感じたとき、不審者に向けるのに便利です」 置「ひぃっ!?」   ……あー、気づかれてたんだ。無理もないけど。で、これはもう100人や1000人ぐらい人を殺した目と言わんばかりの視線で、置石に箒の柄の先端を向けている。もう箒というより槍のように見えて仕方ない。   それにしてもものすごいスピードだ。数メートル離れた距離を一瞬……というか瞬間移動で詰めてしまうなんて。蛋白石たちのマスターも、殺生石が動いたことに遅れて気づいたようだ。驚きの表情を隠せずにいる。 殺「どのような目的か存じませんが、出てこなければどうなるか……お分かり頂けますね?」 置「は、はいぃ……」 黒「ガクガクブルブル」 殺「そうですか。置石さんが妾の正体を知りたいと申していたのですか」  こういうとき、私はここまで非情になれるのだと思わず感心してしまう。置石の目的を全て殺生石たちに告げてしまったのだ。で、置石はすっかり青ざめてしまっている。顔だけじゃなく周りのオーラが。でも黒曜石はなんで震えているのだろうか。 黒主「そ、そのぉ……というわけだから、見逃してもらえませんかね?」 殺「妾は別に怒ってなどいません。そうですよね、主様」 蛋主「う、うん。別に恥ずかしいところは……す、少ししか見られてないし」 殺「ということです。それより皆さん、せっかく来たのですから一緒に昼食などどうでしょうか? 料理はたくさん作る方が美味しくなりますし」   この状況で素直にうんと答えられる人がいるのかどうか、私には分からない。でも私は食べたいかも……それを助長するような空腹。そういえば朝ご飯食べてなかった。 虎「食べる」 雲「うん」 殺「良い返事ですね。黒曜石たちも召し上がりますか?」 黒「はは、はいっ、喜んで……」 黒主「そこまで言うんだったら、ご馳走になろうかな……いいんですか?」   黒曜石たちのマスターが蛋白石たちの方のマスターに尋ねる。 蛋主「あ、はい。いいですよ。でも殺生石だけじゃ準備大変じゃない?」 殺「そうですね……黒曜石、お手伝いをお願いしてもよろしいですか?」 黒「は、はい。頑張ります!」 殺「ふふ、頼もしいですけど、肩の力を抜いて下さい……それより置石さん」 置「へっ、あ、は、はいぃ!?」   俯いていた顔を上げる置石。ついに死刑宣告かな? 殺「あなた、妾の正体を見たいと仰っていたそうですね」 置「……はぃ。ホントウに狐になるのかと……」 殺「そうですか。ではこちらの部屋でお見せしますので、どうぞ」 置「ど、どうぞってぇ、首を引っ張らないでぇー!」   置石を隣の部屋に引っ張り込む殺生石。そのまま襖を閉めてこちらに何も見えなくしてしまう。一同沈黙……。 蛋主「……と、とにかく、殺生石が戻ってくる前に準備しておこう。黒曜石ちゃん、手伝ってくれるかな?」 黒「はい……置石ちゃん、大丈夫かな」 殺「さて、妾の狐姿ですか。元の姿になるのはここに向かったとき以来ですから」   な、なんだろう、さっきからものすごーっくどす黒いオーラを感じるんだけど……怖いよぉ。 置「あ、あのぉ、もし手間がかかるようなら、別にいいんですけどぉ?」 殺「手間などかかりません。一瞬で、終わりますから……」   うわあぁぁ、なんで狐の姿に戻るだけでこんな殺気立つのよぉー!? 殺「それでは、久々の変身……」 置「……ぅ、ぁ、あぁぁぁ……」 置「ぎにゃあぁー!」   一同硬直。隣の部屋から響く置石の悲鳴。こんな悲鳴を聞くのは生まれて初めてかも知れない。でも悲鳴を上げるほどの何かがあるのか、殺生石の狐姿というのは。 殺「まったく、見たいと申したのにすぐ気絶してしまうなんて……あら、皆さん準備中ですか? では妾も用意しなくてはいけませんね」   全員の眼差しを受けてもどうにも思わないのだろうか。こちらのことを気にせず、壁に掛かった三角巾とエプロンを身につけて台所に向かう殺生石。 殺「主様、今日は妾がやりますので、向こうでお待ちになって下さい」 蛋主「は、はい……」   そんなやりとりを後ろに、私は置石の様子を確かめに行く。 置「は、はは……ははははは……」   ……すっかり魂の抜かれたような顔をしていた。 殺「皆さん帰りましたね……だんな様、邪魔が入ってしまいましたが、これからでも構いませんよね?」 蛋主「え、そ、その、これから何を……って、ソコは触らないでぇー!」 黒主「ところで黒曜石、なんでそんなに殺生石が怖いんだ?」 黒「え……その、殺生石さんに料理を教わったとき……す、すごく怖かったんですよぉ」 黒主「……そっか」

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