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凝視で魅了」(2008/07/26 (土) 23:58:42) の最新版変更点

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 どんなに日頃気をつけていようとも、メガネのレンズというのは何かしらの理由で汚れてしまう。  そう言うときは当然レンズを拭く訳だし、それはペリドットだって例外ではなかった。 「んー……」  メガネ拭き専用の布を使って、黙々とレンズを拭くペリドット。  行動だけ見れば、何ということない日常の光景だ。  だがしかし……。 「なぁペリドット、こっち向いて」 「あ、はい。何でしょうか」  メガネをかけず、こちらの方に顔を向けるペリドット。  その目つきは、すごく悪い。限界まで目を細め、必死に焦点を合わせようとしている。  こちらをしっかり見ようとしてくれるのはありがたいのだが、まぁなんと言うか、その……。 「……っ」 「あのぉ、どうしました?」 「い、いや、何でも……くくっ」  その顔が、見ていて何となく笑ってしまう。  穏やかでありながら凛とした空気のあるあの雰囲気が皆無で、 代わりにどこかへなちょこなオーラが漂っているその姿。  その上、俺の様子が確認できなくて困っているのであろう。首をかしげながら、困り果てた表情を見せている。  失礼なのは分かるけれど、普段とのギャップがあまりにも……。 「マスター?」 「って、顔近いって!」  いつの間にか、目を細めたペリドットの顔が目と鼻の先に。  まつ毛の一本一本も区別できるほどの距離。鼓動が急速に早くなるのを感じる。  そして、見やすくなったのか先ほどよりも目を開いた顔。はかなさを漂わせるその表情を、 俺は正視することが出来なかった。 「これぐらい近寄らないと、よく見えなくて。どうかなさいました?」 「どうもしない、どうもしないって。と言うか見えないならメガネかければいいだろっ」 「あ、それもそうでしたね」  まるで今気付いたと言わんばかりに顔を離し、メガネをかけてから改めてこちらに顔を向けてくる。  いつも通りのペリドットの顔。見慣れているはずのその顔も、先ほどの表情とだぶって目をそらしてしまう。  何というか、今にもキスされそうな……あぁ、俺は何を考えてるんだ。 「それで、結局どんな用だったんですか?」 「だ、だから何でもないって。呼んでみただけだ」 「そうでしたか」  俺の反応に納得したのか、微笑みを返してくるペリドット。  だが、先ほどより小さな声で一言……。 「おかしいからって、人の顔を笑うのは失礼ですよ。見えてなくても分かるんですから」  笑顔のまま、どこか不機嫌そうに呟く。  見えてなくても、か。もしかして顔を近づけたのは、それに対する抗議のつもりだったのかも知れない。

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