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こわくないもん」(2008/07/27 (日) 11:31:34) の最新版変更点

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「で、振り向いたところには……包丁を持った血濡れのマネキンがっ!」  小声から大声に変わる、置石の一声。  それにより、俺の家は彼女を中心にして輪になっていたちびっ子の悲鳴に包まれた。 「にゃあーっ!」 「うわっ、ちょ、天河石ちゃん! そこ抱きついちゃ駄目……ぐえっ、そ、ソーダちゃっ、首がっ」  天河石ちゃんとソーダちゃんは俺にしがみついてくるわ、普段はクールフェイスの 雲母ちゃんは荒巻を絞め殺しそうな勢いだし……電気石ちゃんは何かよく分かっていない感じだが。 「あっはははー、お子様にはちょっと怖かったぁ?」 「くっ……はぁ、やりすぎだっつーの」  ソーダちゃんの腕を何とか離し、置石を睨みつける。  唐突にやってきて怖い話を披露とか、こいつの考えることは時々よく分からない。 「ところで、びびりのレッドベリルはぁ?」  と、一人輪に入らず、テレビを見ていたレッドベリルに視線を移す。  すると、俺たちの視線に、まるで今気が付いたといわんばかりにレッドベリルが振り返る。 「ねぇねぇー、どうだった? やせ我慢してる?」 「何で話聞いてないあたしが出てくるのよぉ。あとびびりとか言わないでよ」 「えー。怖いときはお姉さんが一緒に寝てあげたじゃなーい。ほら、おねしょしちゃうほどに怖い話を」 「作り話しないでよ! って、マスター笑うなぁー!」  俺に向かって投げつけられる、ティッシュの箱。  それが見事、俺の額に命中。しかも角だ。声も出ないほど痛い。  額を押さえてうずくまる。そこに、さらに天河石ちゃんとソーダちゃんの体がのしかかる。 「あはははっ。だめよぉー、すぐに物投げるなんてー」 「姉さんには言われたくない!」  物を投げるとかはどうでもいい。  誰でもいい。今は、一刻も早くこの状況から俺を救ってくれ。  その日の夜。俺は背中に湿布を貼って痛みに耐えるという、惨めな状況にあった。  厨房の仕事も体力が必要。ゆえに体力は自信あるのだが……半ば攻撃に近いアクションには弱かった。   こんな日は、もう動きたくない。夕食を早々に済ませ、俺は自室のベッドに潜り込んでいた。  延々と続く、背中の鈍痛。うつぶせに寝るわけにもいかず、体を横向きにして痛みに耐える。  こんな調子で眠れるのか……そんなことを考えていると、背後で部屋のドアが開く気配を感じる。 「……マスター?」  暗い部屋に、レッドベリルの遠慮がちな呼びかけ。  珍しくしおらしい様子。放っておくことに罪悪感を感じてしまうほどに。 「何だ」  顔をドアに向けず、返事をする。  だがレッドベリルの声はない。代わりに、こちらに歩み寄ってくる小さな足音が聞こえ……。 「って、何ベッドに乗っかろうとして」 「こっち向かないの」  俺の言葉を途中で制止するレッドベリル。  一体何なんだ……ため息をついたところで、掛け布団を剥がされ、パジャマをめくられ むき出しになった背中に、レッドベリルの小さな手が当てられる。 「……痛い?」 「何だよ。お前が心配するなんて珍しい」 「きょ、今日だけだもん。料理も出来ないほど痛いんじゃ、あたしも困る」  湿布の上から撫でられる背中。軽い痛みが走るが気になるほどでもないし、むしろくすぐったさのほうが勝る。 「腹減ってるのか?」 「別に」 「腹減ってるなら、とっとと寝てしまったほうがいいぞ」 「分かってる。これ終わったら寝るんだから」 「やっぱり腹減って……いでっ!」  俺の言葉に腹を立てたレッドベリルに、背中を叩かれる。 「人を食い意地貼ってるみたいに言わないでよっ」 「わ、分かったって。だからすぐ手を上げるな」 「ふーんだ」  すっかり拗ねてしまったが、俺の背中を撫でるのはやめない。  思いっきり背中を叩いた手で、優しく撫でられる。  小さい手だが、それでも体がリラックスしてしまい、今にも眠ってしまいそうになる。 「眠い?」 「ああ」  レッドベリルの一言に、やや寝ぼけがちに答える。 「じゃあ早く寝なさい。マスター寝たらあたしも寝るから」  そうか、俺が寝るまでやるつもりなのか。  じゃあ、とっとと寝てしまわないとレッドベリルに迷惑がかかってしまう。 このまま眠気に身を任せておけば……。 「……寝てもらわないと、あたしが眠れないもん」  レッドベリルのつぶやいた一言。  それは、意識がゆっくりと夢の中に落ちている俺には、しっかりと聞き取ることが出来なかった。  まぶたが、重い。 「……おやすみ」           ◆  早く寝すぎたのが悪かったか。  手に取った目覚ましが指す時刻は午前3時過ぎ。いくらなんでも早すぎだ。外も真っ暗。  こんなときはとっとと寝なおすに限る。普通ならそうだったのだが……。 「……くぅ」  俺の背中にしがみついて眠る、レッドベリルの寝息。  何が起きているのか、最初は全く理解できなかった。だがちゃんと服を着直されているところを見ると、 あれからしばらくは撫でてもらっていたことになるが。 『ところで、びびりのレッドベリルはぁ?』  昨日の置石の一言が、頭を過ぎる。  これは、つまりそういうことなのか?  昨日のあれが怖くて、俺が寝るのを待っていたと?  だとしたら、ずいぶんと回りくどい方法だ。まぁ、らしいといえばらしいのだが。 「むにゃ……ます、たぁ……」  ずいぶんとのんきな、レッドベリルの寝言。  まぁ、起こすのもかわいそうだ。女の子と一緒にいては二度寝も出来そうにないが、 ここはおとなしくしておくか。  いつもより一時間早くセットされていた目覚ましを枕元に戻し、布団に深く潜る。  人肌の布団は、やはり心地良いな……。
「で、振り向いたところには……包丁を持った血濡れのマネキンがっ!」  小声から大声に変わる、置石の一声。  それにより、俺の家は彼女を中心にして輪になっていたちびっ子の悲鳴に包まれた。 「にゃあーっ!」 「うわっ、ちょ、天河石ちゃん! そこ抱きついちゃ駄目……ぐえっ、そ、ソーダちゃっ、首がっ」  天河石ちゃんとソーダちゃんは俺にしがみついてくるわ、普段はクールフェイスの 雲母ちゃんは荒巻を絞め殺しそうな勢いだし……電気石ちゃんは何かよく分かっていない感じだが。 「あっはははー、お子様にはちょっと怖かったぁ?」 「くっ……はぁ、やりすぎだっつーの」  ソーダちゃんの腕を何とか離し、置石を睨みつける。  唐突にやってきて怖い話を披露とか、こいつの考えることは時々よく分からない。 「ところで、びびりのレッドベリルはぁ?」  と、一人輪に入らず、テレビを見ていたレッドベリルに視線を移す。  すると、俺たちの視線に、まるで今気が付いたといわんばかりにレッドベリルが振り返る。 「ねぇねぇー、どうだった? やせ我慢してる?」 「何で話聞いてないあたしが出てくるのよぉ。あとびびりとか言わないでよ」 「えー。怖いときはお姉さんが一緒に寝てあげたじゃなーい。ほら、おねしょしちゃうほどに怖い話を」 「作り話しないでよ! って、マスター笑うなぁー!」  俺に向かって投げつけられる、ティッシュの箱。  それが見事、俺の額に命中。しかも角だ。声も出ないほど痛い。  額を押さえてうずくまる。そこに、さらに天河石ちゃんとソーダちゃんの体がのしかかる。 「あはははっ。だめよぉー、すぐに物投げるなんてー」 「姉さんには言われたくない!」  物を投げるとかはどうでもいい。  誰でもいい。今は、一刻も早くこの状況から俺を救ってくれ。  その日の夜。俺は背中に湿布を貼って痛みに耐えるという、惨めな状況にあった。  厨房の仕事も体力が必要。ゆえに体力は自信あるのだが……半ば攻撃に近いアクションには弱かった。   こんな日は、もう動きたくない。夕食を早々に済ませ、俺は自室のベッドに潜り込んでいた。  延々と続く、背中の鈍痛。うつぶせに寝るわけにもいかず、体を横向きにして痛みに耐える。  こんな調子で眠れるのか……そんなことを考えていると、背後で部屋のドアが開く気配を感じる。 「……マスター?」  暗い部屋に、レッドベリルの遠慮がちな呼びかけ。  珍しくしおらしい様子。放っておくことに罪悪感を感じてしまうほどに。 「何だ」  顔をドアに向けず、返事をする。  だがレッドベリルの声はない。代わりに、こちらに歩み寄ってくる小さな足音が聞こえ……。 「って、何ベッドに乗っかろうとして」 「こっち向かないの」  俺の言葉を途中で制止するレッドベリル。  一体何なんだ……ため息をついたところで、掛け布団を剥がされ、パジャマをめくられ むき出しになった背中に、レッドベリルの小さな手が当てられる。 「……痛い?」 「何だよ。お前が心配するなんて珍しい」 「きょ、今日だけだもん。料理も出来ないほど痛いんじゃ、あたしも困る」  湿布の上から撫でられる背中。軽い痛みが走るが気になるほどでもないし、むしろくすぐったさのほうが勝る。 「腹減ってるのか?」 「別に」 「腹減ってるなら、とっとと寝てしまったほうがいいぞ」 「分かってる。これ終わったら寝るんだから」 「やっぱり腹減って……いでっ!」  俺の言葉に腹を立てたレッドベリルに、背中を叩かれる。 「人を食い意地貼ってるみたいに言わないでよっ」 「わ、分かったって。だからすぐ手を上げるな」 「ふーんだ」  すっかり拗ねてしまったが、俺の背中を撫でるのはやめない。  思いっきり背中を叩いた手で、優しく撫でられる。  小さい手だが、それでも体がリラックスしてしまい、今にも眠ってしまいそうになる。 「眠い?」 「ああ」  レッドベリルの一言に、やや寝ぼけがちに答える。 「じゃあ早く寝なさい。マスター寝たらあたしも寝るから」  そうか、俺が寝るまでやるつもりなのか。  じゃあ、とっとと寝てしまわないとレッドベリルに迷惑がかかってしまう。 このまま眠気に身を任せておけば……。 「……寝てもらわないと、あたしが眠れないもん」  レッドベリルのつぶやいた一言。  それは、意識がゆっくりと夢の中に落ちている俺には、しっかりと聞き取ることが出来なかった。  まぶたが、重い。 「……おやすみ」           ◆  早く寝すぎたのが悪かったか。  手に取った目覚ましが指す時刻は午前3時過ぎ。いくらなんでも早すぎだ。外も真っ暗。  こんなときはとっとと寝なおすに限る。普通ならそうだったのだが……。 「……くぅ」  俺の背中にしがみついて眠る、レッドベリルの寝息。  何が起きているのか、最初は全く理解できなかった。だがちゃんと服を着直されているところを見ると、 あれからしばらくは撫でてもらっていたことになるが。 『ところで、びびりのレッドベリルはぁ?』  昨日の置石の一言が、頭を過ぎる。  これは、つまりそういうことなのか?  昨日のあれが怖くて、俺が寝るのを待っていたと?  だとしたら、ずいぶんと回りくどい方法だ。まぁ、らしいといえばらしいのだが。 「むにゃ……ます、たぁ……」  ずいぶんとのんきな、レッドベリルの寝言。  まぁ、起こすのもかわいそうだ。女の子と一緒にいては二度寝も出来そうにないが、 ここはおとなしくしておくか。  いつもより一時間早くセットされていた目覚ましを枕元に戻し、布団に深く潜る。  人肌の布団は、やはり心地良いな……。 #ref(news4vip-1206188882-184-1.jpg) ----

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