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電気石専用電池」(2008/07/26 (土) 22:18:38) の最新版変更点

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 春の陽気が心地よい今日この頃。  さわやかな朝の青空の下、電気石は僕の膝で、まるで遊び疲れたかのように横たわっている。  決して、ついさっきまで遊んでいたわけではない。朝からずっとこんな調子で、動こうとしないのだ。 「電気が切れ掛かってるんですねぇ」  心配そうな面持ちで、隣で電気石の頭を撫でていた蛋白石が口を開く。 「じゃあ充電しないと。でも……」  普段なら、充電用の三輪車で電気を補給するけど、今日はそんなことをする元気もないようだ。 「そういえば、今まで完全に電気が切れたことないけど、どうなっちゃうの?」 「私も見たことはないですよ。でも、多分ねじを巻いてあげないと動けなくなっちゃいますね」  なるほど。初めて電気石を見たときの眠った状態になっちゃうのか。  でも、電気で動くなら、どうしてねじを巻く必要があるんだろう……。 「ご主人様。お姉さまの充電、手伝ってくれませんか?」  と、電気石を見つめていた視線が、今度は僕のほうに向けられる。  お姉さま、とは言うけれど、本当は年下の電気石。  何が起きるか分からない状況にさせてしまう前に、何とかしたい。そんな、本来の姉としての顔が、 そこにあった。  これで嫌といえる訳がない。僕は二つ返事で、蛋白石の力になることになったんだ……。 「で、これは……?」  テーブルに並べられたもの。  電池、下敷き、オレンジ、携帯電話の充電器。全く共通点が見出せないものが、ずらりと揃っていた。 「お姉さまの好きなものですよ?」 「そ、そうなんだ。でも充電するなら、三輪車を誰かが手で回すなり……」 「感電しますよ?」  それは危ない……僕は口をつぐんでしまう。 「実は、お姉さまがどういう原理で電気を蓄えるか、知らないんですよ」 「それで、伝記に関係のありそうで、さらに電気石の好きなものを集めてみたと」  はいと言って、うなずく蛋白石。  確かに、果物電池だったり静電気だったりはするけれど、ここからどうやって電気石が充電を?  オレンジは食べさせるのかな。じゃあ電池は……?  やり方が思い浮かばない三つは保留にし、僕はまず下敷きを手に取る。  小学校でよくやった、あれをやるために。 「蛋白石、電気石を支えてあげて」  電気石の体を起こし、蛋白石に抱えてもらう。  まず電気石のヘッドドレスを外して、代わりに下敷きを頭に。  そして、電気石の頭を下敷きでこすり続ける。  よくある静電気を発生させる方法だけれど、果たしてこれが充電になるのだろうか。 「ご主人様ー、何をしてるんですかぁ?」 「え、こうすると静電気が出るって、知らない?」  知りませんと、首をかしげる蛋白石。おそらく静電気が何かということも分からないのでは。 「つまり、これが電気の食事方法……お姉さまにとって、電気は美味しいものなんですよねぇ。 どんな味がするんだろぉ」 「って、蛋白石よだれたれてるよ」 「へ? あわわ……」  慌てて口を拭く蛋白石。一体どういう電気を想像したのかはわからないけど。  そんな会話をしていたところで、電気石の目が、ゆっくりと開かれる。 「……びりびり?」  小さな声で、そうつぶやく。  少しはましになったのかな。こするのをやめ、下敷きを頭から離す。  電気石の髪が、下敷きに釣られて逆立った。 「調子はどう?」 「ん……びりびり、少ない」  僕の問いかけに、力なく答える電気石。  まだまだ本調子ではないということか。もっとたくさん電気をあげないと。  そう思い、テーブルにある残りの品を手に取り、電気石に見せる。 「はい。これで動けるぐらい元気になればいいんだけど……どれがいい?」  僕の手の中にある三つの品、そして僕の顔を、視線だけで交互に見つめる電気石。 「ん……」  そして、手が置かれたのは……。  春の陽気というのは、想像以上に暖かい。 「すりすり」  そう言って、嬉しそうに僕の背中に体を摺り寄せる電気石。  先ほどよりも、ずっと元気そうな顔だ。 「好きな人にすりすりしても、電気がいっぱい溜まるんですねー」 「そ、そうなのかな……」  ただ単に、体全体で静電気を生み出しているだけにも見えるけど。もしくは僕の衣服とかに 溜まってる静電気を吸ってるのか。 「……マスター、いっぱいびりびり」  電気石の小さな手が、僕の服をしっかりと握り締める。 「びりびりで……どきどき。嬉しい」  その言葉がどういう意味か、僕には真意を理解することは出来ない。  ただ、僕の体はいっぱい電気が溜まる構造になっているらしい。つまり電気石の簡易充電器? 「マスター……ぎゅー」 「お姉さま、すりすりしないと電気溜まりませんよ?」

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