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お姉さんに憧れて」(2008/04/13 (日) 12:54:20) の最新版変更点

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 年末年始で買い置きの食材が少なくなった頃。 「ごめんなさい、こんなに荷物持ってもらって」 「いいのいいの。でも、黒曜石ちゃんも無理し過ぎだよー」  目一杯膨らんだビニール袋が8つ。  夢中になって買いすぎたと後悔していたところで、偶然蛋白石さんと出会った。 「【黒曜石のマスター】さんはお仕事なの?」 「はい。他の子も用事があるみたいですから、今日のお買い物は私一人です」  両手に3つずつビニール袋をぶら下げた蛋白石さん。  持って行く方法に困っていた荷物。それを軽々と持つ姿は、とても頼もしい。  大きくて頼もしい体に、すごく綺麗な顔。やっぱり、私よりずっとお姉さんなんだ。 「そうなんだぁ。偉いね」  笑顔を浮かべて、私の顔を見つめる。少し照れくさい……。 「ご飯とか、家事も全部やってるの?」 「はい」 「すごいなぁ。私家事苦手だから、いつもご主人様困らせちゃう」  そんなことはない。きっと【蛋白石のマスター】さんだって、蛋白石さんの事を頼もしいと思っているはず。 「そういえば、今日の晩ご飯は何作るのかな?」 「うちですか? 今日はカレーに……ひゃうっ!」  右足で、何か丸い物を踏んでしまった感触。  バランスを失う右足。同時に、体が前方に大きく傾く。  両手には重たいビニール袋が一つずつ。とてもじゃないけど、バランスを取る事なんて出来ない。  ビニール袋が手から離れ、体がゆっくりと倒れる……。 「っと。大丈夫?」  顔から地面に倒れることはなかった。  代わりに、大きくて暖かくて柔らかいものに、顔を埋めている。  これって、た、蛋白石さんの。 「荷物も受け止めたからから平気だよ。それにしても、道に空き缶なんて捨てちゃダメなのにー」  こ、こんな大きいなんて……じゃなくて、早く離れないとっ。 「ああありがとうございひゃあっ」  勢い余って、尻餅を付いてしまう。 「どうしたの、そんなに慌てて?」 「いえいえっ、何でもないです……はうぅ」  両手に、私が手放したビニール袋を持った蛋白石さん。私の様子が気がかりなのだろう、首をかしげながら見下ろしてくる。  ……さっきまでの柔らかい感触が、顔に残っている。  どうしてだろう。同じ女の子の体なのに、こんなにドキドキしてしまう。頬が真っ赤になっているのか、とても熱い。 「それより、ドレス少し汚れちゃったね。怪我はない?」  蛋白石さんの綺麗な手が、差し伸べられる。  こんなに綺麗なのに、すごい力持ちなんだ……。 「は、はい……」  差し伸べられた手を借りて、立ち上がる。  スカートに付いたわずかな砂を、手で払う。  ――ふと目に付く、私の胸元。  私の、胸元……。 「もぉー、ポイ捨てはダメだよってみんな言ってるのに……黒曜石ちゃん、どうしたの?」 「……平坦」 「へ? 平坦って、何が?」 「それは、その……はっ! あ、いや、何でもないですっ」  慌てて首を振り、平坦の二文字を頭から払い去る。  と、そこで目に入る、蛋白石さんの姿。  ……平坦じゃない……ううんっ、ダメダメ。そんなこと考えちゃ……。 「んー?」           ◆ 「あ、今日はカレーだね。手伝うよ……黒曜石?」 「……へ? あ、瑪瑙ちゃん。どうしました?」  エプロンを手に取った瑪瑙ちゃんへ、顔を向ける。 「ご飯作るの手伝おうと思って。それより考え事?」 「え、いえ。たいしたことでは……」  瑪瑙ちゃんから目をそらし、鍋へと顔を向ける。  昼間の蛋白石さんの姿。あの柔らかい感触。  なぜか、その姿がずっと忘れられない。  優しくて、頼もしくて、いつも素敵な笑顔のお姉さん。  ……ぐつぐつと、カレーから気泡が上がる。  丸くて、大きくて……ぐつぐつと。 「……たくさん食べれば、大きくなりますか?」 「えっ?」  私達のお姉さんは、素敵な人ばかり。  いつか私も、あんな風に……。 ----

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