「誰かを待つ時は」(2007/12/09 (日) 02:27:28) の最新版変更点
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お荷物を入れるポシェット。
充電は……オッケー?
「お姉様、一人で大丈夫?」
「……だいじょうぶ」
「大丈夫でしょう。それほど深い森ではありませんから……ただ月長石の誘いで、更に行く先がアメジストの住む屋敷とは……ろくな事になりませんね」
いたずらお姉さん……ホントは、優しいよ? アメジスト姉様も、優しい。
「ん……いってきます」
「あ、いってらっしゃい。お姉様、気をつけてね」
落ち葉がいっぱい。
骨みたいな木が、いっぱい。とっても明るい森……怖くない。
待ち合わせは、森の入り口。でも、誰もいない。
……風が、びゅーと吹く。マスター、寒くないかな。
うー……髪の毛、ぼさぼさー。
「あの、直すの手伝いましょうか?」
知らない人の、声。お姉さん。
ぶわーってなった、青い髪。ドレスも、きれい。だけど……知らない人について行っちゃ、めー。
「知らない人は、めー」
「え、そ、そんな、私は……ひゃうっ」
お姉さんの手、私の髪の毛で、ばちってなる。
……せーでんき?
「ばちばちー」
「って、あの、その……」
ばちばち、いい人……。
「そ、それより、抱っこは後にして、髪を直しましょう。綺麗な髪なのですからちゃんと整えて……あうっ」
……また、ばちばち?
ばちばちのお姉さんと、一緒。
ベンチに、列んで座る。
「やっぱり、あなたも宝石乙女なのですね」
お姉さん、私のことを、知ってる。
でも、私は知らない。でもばちばちはいい人。
「お名前?」
「え?」
「お名前……電気石。お名前?」
「私の、ですか? えっと……」
お名前、教えてくれない。悪い人?
「ごめんなさい、お名前は覚えてないから」
「んー?」
覚えてない、お名前。
……きおくそーしつ。テレビでやってた?
きおくそーしつは、つらい。可愛そう。
「よしよし……」
「あの、で、電気石ちゃん?」
頭、なでなで。
「あ、ありがとう……あ、あれ、髪が、逆立っちゃうっ」
「イインダヨー」
「あ、あまり良くないような……うぅ」
お顔が、悲しそう。記憶喪失?
「はうっ」
また、ばちばちー。
「……ばちばちの、お姉さん」
「え、それは私の?」
「ばちばちー」
「あ、はは……はぁ」
「じゃあ、蛋白石さんは優しいお姉さんなんですね」
「うん」
姉様、すごく優しい。
マスターも、殺生石も、みんな優しい。
「他には、どのような方がいるんですか?」
「んー……とら姉さん、いつも遊んでくれる。ぽよぽよのいたずらお姉さんと、同じ顔ー」
「双子さん、ですか?」
「うん……あと、ちっちゃい漬物石お姉さん。私より、ちょっと小さい……けど、瑪瑙姉さんと、鶏冠石姉さんの、お姉さん」
「まあ、不思議ですねぇ」
「でも、真珠お姉さん、もっと小さい。抱っこ出来る。爆弾岩お姉さんは、いつも大きい。ちっちゃい時は、重たい」
「ち、小さいと重いんですか?」
「どかーんって、なる……猫さんの方のいたずらお姉さんは、いつもアメジストお姉さんにいたずら……めー」
……んー?
「しょんぼり? よしよしー?」
「ん、大丈夫ですよ……あの、そのアメジストお姉さんの話、たくさん聞かせてもらえませんか?」
「んー?」
アメジストお姉さん……んー。
「いつも、本読んでる。遊んでくれないけど、お菓子くれて、お庭で遊んでいいって」
それから……。
「殺生石と、とってもギスギス。ふたりでいつも、怖い顔する」
「その殺生石さんという方とは、仲が悪いのですね」
「ん……でも、時々、仲良し?」
「え、えぇ?」
私も、よく分からない。
「あと……そっとしてあげてって、ペリドットお姉さんが、言ってる」
……んー?
「やっぱり、しょんぼり?」
「え、あ……少し」
「んー……よしよしー」
頭、なでなで。みんな元気になる、不思議。
「ありがとうございます……あの、もう少しだけ、お話を」
ばちばちのお姉さん、頭がぼさぼさー。
撫でて直す……直らない……。
「ん……いつも、今の私みたい」
「今の、電気石ちゃん?」
「誰か、待ってる。私も、猫さんの方のお姉さん、待ってる。だから、色々見るの」
誰か、待つ時。
いつも、周りが気になる。
お姉さん来ないかな、って、色々見る。
……アメジストお姉さん、いつも見てる。
「アメジストお姉さん、誰か待ってる。でも、だぁれ?」
「それは……」
「それ、聞いちゃめーって、ペリドットお姉さん、言ってた。そっとしてあげて、って」
でも、人が来ないの、寂しい。
だから、アメジストお姉さんにも、なでなでしてあげないと、めー。
……今の私は、ばちばちのお姉さんと、一緒。寂しくない。
でも、ばちばちのお姉さん……寂しい? きおくそーしつ?
「……電気石ちゃん」
「んー?」
ばちばちのお姉さんの手が、私のほっぺたを触る。
暖かい、気持ちいい……。
「あのね、その……アメジストお姉さんにも、なでなでしてあげてくれませんか?」
「んー?」
「その、私も、待ってるから。きっと、寂しいと思って。電気石ちゃんは、寂しそうな人にはなでなで、ですよね?」
「うん」
ばちばちのお姉さんも、待ってる……?
んー……そう、なの?
でも、なでなでは、約束。
「……約束、イインダヨー」
「そう、ありがとうございます」
ばちばちのお姉さん、にこにこしてる。
嬉しいのは、私も、嬉しい……約束。
「私、電気石ちゃんに会えて良かったです。あなたみたいな優しい子がいるのなら、きっと……」
「おーいっ、電気石ぃー!」
ん、猫さんのお姉さん……後ろから?
「……いつか、あの人の、元に……」
顔を動かす。お姉さんの手が、ほっぺたから離れて、あったかくない。
少し遠くで、マントと尻尾がぱたぱたしてる。
「ごめんねー、空飛ぼうと思ったらお腹空いて力がさぁー」
「ごはん、ちゃんと食べないと、めー」
「わ、分かってるわよぉ」
……ばちばちの、お姉さん?
あったかくない……。
「ん、どうしたのさ? 隣に幽霊でもいたの?」
「んーん、ばちばちのお姉さん」
「ばちばちぃ? 何、電気石のおっきいのでもいた訳?」
……ん。
ばちばちのお姉さん、だぁれ? お化けは暖かくないから、違う。
「まぁ、ほらっ。早速アメジストんとこ行くわよー。今日という今日は絶対一泡吹かせるんだから!」
……猫さんのお姉さん、ぷんぷんしてる。
怒るの、めー。
◆
「……で、電気石まで用意して、私に昨日の仕返しをしようと」
猫さんのお姉さんが、縛られてる。
「あったりまえでしょー! 昨日はよくもあんな恥ずかしい目にっ」
「アレは自業自得だろう……で、電気石」
ん、髪、ぼさぼさになっちゃう……何で?
「んー?」
「何故、私の頭を撫でる。静電気で髪が逆立つだろう」
「……あ」
そうだ。
ばちばちのお姉さん……静電気の、お姉さん。
やっぱり、いい人。静電気ー。
「静電気のお姉さんと、約束」
「……それは一体何者なんだ。電気石の大きいサイズでもいるのか?」
……やっぱり、アメジストお姉さんは、色々見てる。
遅刻は、めー。早く、誰か、来てあげて……。
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