「私と、狐耳の……」(2007/12/03 (月) 23:50:10) の最新版変更点
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時々、電気石の面倒を見るついでに、他の子供達の面倒を見ることがある。
正直、問答無用に尻尾を弄ろうとしてくる子供達は苦手だった。その後の手入れにどれほどの時間を要するか……。
だからこうして、自分は遠くから子供達を眺めているだけ。あの子達の輪に入ろうものなら、まただんな様に迷惑をかけてしまう。
自宅の庭で遊ぶ子供達。相変わらず、微笑ましい光景。
「……何か?」
その輪に入ろうとせず、荒巻を抱きながらじっとわたくしを隣から見つめてくるだけの少女が一人。
雲母……・この子とは、あまり面識がない。住んでいる家も違えば、互いを結びつける接点もあまりない。
電気石の友達、ただそれだけか。とにかく、わたくしはこの子のことをよく知らない。
「尻尾は触らないように」
「分かってる」
まぁ、それならいいのだけど。
……会話が続かない。
黙って見つめられるのは嫌だけど、いざ会話をしようとしても、何を話せばいいのか。
しかも向こうは、黙ってこちらを見ているだけ。何も話そうとはしない。
「……はぁ」
こうしていても仕方がない。
立ち上がり、雲母の視線を背後に感じながら台所へ。
さて、何かお茶請けになる物は……。
庭で遊ぶ子供達を眺めながら、雲母と二人でお茶を飲む。
お茶請けは、戸棚に置いてあった栗まんじゅう。だんな様が、食べてもいいと言っていた物。
「うまい」
「そう、それは何よりで」
表情も変えず、お茶を一口飲んで一言。
この子の言葉遣いはどうも変わっている。乙女というよりも、紳士といったところか。とにかく子供らしくない。
まぁ、この子達の個性が強いのは前々から分かっているから、驚くことでもない。
横に鎮座していた荒巻が、雲母の衣服の裾を引く。
それに気づき、栗まんじゅうを一つ手に取り、荒巻に手渡す。なかなかの意思疎通だと、思わず感心してしまう。
「ですが、別に妾のお茶の相手をしに来た訳ではないでしょう? 何故、あの子達と遊ぼうとしないのかしら」
その言葉を受け、こちらをじっと見つめる雲母。
そして……何故か、こちらに身を寄せてくる。
子供に身を寄せられて、嫌な思いはしない。しかし、予想していなかった事なので、少しうろたえてしまう。
わたくしの着物を、小さな手で握りしめる。
「いい、匂い」
「そ、そう。でもいきなりは……」
頬をすり寄せられる感触。だんな様以外にやられると、少々とまどってしまう。やってはくれないけれど。
と、ひとしきり甘えたところで、顔を上げる。
「……殺生石は」
こちらの目をじっと見つめながらの、一言。
「母親みたい」
「は、はぁ……」
いきなり何を言い出すかと思えば。
母親みたい……それはペリドットのような者に言うべきではないだろうか。
確かに彼女は、この子達の姉。しかし、その心にある母性の強さは、わたくしにもよく分かる。
それに対し、わたくしに母性というのは……想像が付かない。
「尻尾は触らない」
表情の読み取りにくい、感情をあまり表に出さない顔。
その顔が、ほんの少しだけ桜色に染まっている。
「膝枕……ダメか?」
……思いも寄らないというか、何というか。
まさか、このわたくしに甘えてくるとは……世の中とは分からないもので。
「……理由に寄ります、ね」
そして、どうしてかこの子の言葉に、照れを隠そうとするわたくしがいた。
理由は、簡単なものだった。
最近、この子の主の仕事が忙しく、構ってもらえなかった。
その寂しさを紛らわせるために、この子の母親像に近いらしいわたくしに、甘えに来たという。
分かりやすいし、子供らしい理由だと思う。ただ、わたくしが雲母の母親……そこだけは、どうも理解しかねる。
しかし、不思議と嫌な気分ではない。
むしろこんな自分にも、母親になる希望があるのではと、思わせてくれるから……かも知れない。
「……おひるね?」
いつの間にか目の前にいた電気石が、わたくしに甘えていた雲母を覗き込む。
「あーっ、きらちゃんずるいーっ。天河石もーっ」
「ソーダもぉーっ」
……これは、危機的状況といえる。
元気が取り柄のあの二人に抱きつかれたら、身だしなみが……。
「抱っこーっ!」
「こぉーっ」
「こ、こらっ、二人ともいきなり飛びつくのはっ……きゃっ、ちょ、尻尾はダメ!」
「だいこんらん? だいこんらん?」
やはり、この子達の遊びに付き合いのは遠慮したいところ。
わたくしはただ、お茶を飲みながら眺めているだけでいい。
「尻尾はダメだ」
でも、たまには……膝枕ぐらいなら、構わない。
時々、電気石の面倒を見るついでに、他の子供達の面倒を見ることがある。
正直、問答無用に尻尾を弄ろうとしてくる子供達は苦手だった。その後の手入れにどれほどの時間を要するか……。
だからこうして、自分は遠くから子供達を眺めているだけ。あの子達の輪に入ろうものなら、まただんな様に迷惑をかけてしまう。
自宅の庭で遊ぶ子供達。相変わらず、微笑ましい光景。
「……何か?」
その輪に入ろうとせず、荒巻を抱きながらじっとわたくしを隣から見つめてくるだけの少女が一人。
雲母……・この子とは、あまり面識がない。住んでいる家も違えば、互いを結びつける接点もあまりない。
電気石の友達、ただそれだけか。とにかく、わたくしはこの子のことをよく知らない。
「尻尾は触らないように」
「分かってる」
まぁ、それならいいのだけど。
……会話が続かない。
黙って見つめられるのは嫌だけど、いざ会話をしようとしても、何を話せばいいのか。
しかも向こうは、黙ってこちらを見ているだけ。何も話そうとはしない。
「……はぁ」
こうしていても仕方がない。
立ち上がり、雲母の視線を背後に感じながら台所へ。
さて、何かお茶請けになる物は……。
庭で遊ぶ子供達を眺めながら、雲母と二人でお茶を飲む。
お茶請けは、戸棚に置いてあった栗まんじゅう。だんな様が、食べてもいいと言っていた物。
「うまい」
「そう、それは何よりで」
表情も変えず、お茶を一口飲んで一言。
この子の言葉遣いはどうも変わっている。乙女というよりも、紳士といったところか。とにかく子供らしくない。
まぁ、この子達の個性が強いのは前々から分かっているから、驚くことでもない。
横に鎮座していた荒巻が、雲母の衣服の裾を引く。
それに気づき、栗まんじゅうを一つ手に取り、荒巻に手渡す。なかなかの意思疎通だと、思わず感心してしまう。
「ですが、別に妾のお茶の相手をしに来た訳ではないでしょう? 何故、あの子達と遊ぼうとしないのかしら」
その言葉を受け、こちらをじっと見つめる雲母。
そして……何故か、こちらに身を寄せてくる。
子供に身を寄せられて、嫌な思いはしない。しかし、予想していなかった事なので、少しうろたえてしまう。
わたくしの着物を、小さな手で握りしめる。
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「いい、匂い」
「そ、そう。でもいきなりは……」
頬をすり寄せられる感触。だんな様以外にやられると、少々とまどってしまう。やってはくれないけれど。
と、ひとしきり甘えたところで、顔を上げる。
「……殺生石は」
こちらの目をじっと見つめながらの、一言。
「母親みたい」
「は、はぁ……」
いきなり何を言い出すかと思えば。
母親みたい……それはペリドットのような者に言うべきではないだろうか。
確かに彼女は、この子達の姉。しかし、その心にある母性の強さは、わたくしにもよく分かる。
それに対し、わたくしに母性というのは……想像が付かない。
「尻尾は触らない」
表情の読み取りにくい、感情をあまり表に出さない顔。
その顔が、ほんの少しだけ桜色に染まっている。
「膝枕……ダメか?」
……思いも寄らないというか、何というか。
まさか、このわたくしに甘えてくるとは……世の中とは分からないもので。
「……理由に寄ります、ね」
そして、どうしてかこの子の言葉に、照れを隠そうとするわたくしがいた。
理由は、簡単なものだった。
最近、この子の主の仕事が忙しく、構ってもらえなかった。
その寂しさを紛らわせるために、この子の母親像に近いらしいわたくしに、甘えに来たという。
分かりやすいし、子供らしい理由だと思う。ただ、わたくしが雲母の母親……そこだけは、どうも理解しかねる。
しかし、不思議と嫌な気分ではない。
むしろこんな自分にも、母親になる希望があるのではと、思わせてくれるから……かも知れない。
「……おひるね?」
いつの間にか目の前にいた電気石が、わたくしに甘えていた雲母を覗き込む。
「あーっ、きらちゃんずるいーっ。天河石もーっ」
「ソーダもぉーっ」
……これは、危機的状況といえる。
元気が取り柄のあの二人に抱きつかれたら、身だしなみが……。
「抱っこーっ!」
「こぉーっ」
「こ、こらっ、二人ともいきなり飛びつくのはっ……きゃっ、ちょ、尻尾はダメ!」
「だいこんらん? だいこんらん?」
やはり、この子達の遊びに付き合いのは遠慮したいところ。
わたくしはただ、お茶を飲みながら眺めているだけでいい。
「尻尾はダメだ」
でも、たまには……膝枕ぐらいなら、構わない。
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