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のーたいとる4

「………………」
とある森の中にポツンと立っている大きな洋館。
その洋館の中にある小さな部屋で一人の眼鏡をかけた少女が電話を前ににらめっこをして
いた。
少女の手には映画のチケットが二枚、電話のメモリー表示は『川平啓太』。
ただ一言「映画を見に行きませんか」と言えば済むのだ、ものの十秒もかからないだろ
う。
ただそれだけの行為が彼女、いぐさにはまるで超難関の面接テストのように感じられる。
その一言を川平啓太に言う自分を想像するだけで顔は真っ赤になり、鼓動はバクバクと爆
発寸前の危険物のようになる。
だが今日の彼女の決意は固い、何度も深呼吸をすると意を決して電話を取り震える指で通
話ボタンを押した。
番号が自動で入力され、相手を呼び出すコール音が鳴る。
一回、鼓動が高鳴る、二回、頭が白くなりだす、三回、相手が出た。
「はいもしもし、川平ですけど」
受話器の向こうからは相変わらずの明るい声。
その声を聞いただけでいぐさの脳内が完璧に真っ白になる。
「あああああ、あ、あの、いいいいいぐさですけど!」
もはや自分でもちゃんと言語になっているか分からないというより、考えられない。
「おーぅ、いぐさちゃんかぁ!元気してるか?」
「ははははははい!わたしもみんなも元気です!」
「そかーよしよし、んで俺に何か用?」
「あ、あの、あのですね!あ、明日お暇ですか!?」
「俺?うん、すっげー暇」
「よ、宜しかったら、映画、映画に行きませんか!」
「俺と?」
「はい……だ、だめならいいんですけど…」
「いやいや、全然オッケー!」
「ほ、本当ですか!」
「うんうん!いぐさちゃんの頼みを断るほどこの川平啓太、男が廃れちゃいないって!」
「じ、じゃあ…明日の十時に駅前でいいですか?」
「オッケー!じゃあまた明日ね」
そういうとプツンと電話が切れる。
通話時間は三分弱、頭の中はその間は混乱中だった。

「さ……誘っちゃった……啓太さんを…」
ベッドにうつ伏せになり、枕に真っ赤な顔をうずめながら自分が確かに啓太を映画に誘っ
た事実を噛み締めるいぐさ。
あまりの気恥ずかしさに足をバタバタとさせたりベッドの上でゴロゴロと転がったりす
る。
やがて落ち着いたのか、それでもまだ赤い顔で服や髪型のチェックをする。
「これは……ちょっときわどいかな……でも啓太さんが喜ぶのはこういう感じかなぁ…
…」
ふと呟いた自分の言葉にまた赤面するいぐさ。
もはや彼女の思考回路はショート寸前である。

そんな彼女の部屋の前で聞き耳をたてている少女が二人、たゆねとともはねであった。
「い、いぐさが啓太さまと、映画!?」
「いいなぁいぐさ、私も啓太さまと映画行きたいなぁ」
片や混乱、片や状況が飲み込めていないお子様。
「こ、こうしちゃいられない!とにかくこのことはみんなに秘密だよともはね!」
「え?何で?」
「え?えーと、あの…とにかく何でも!」
そういうと風よりも速くと自分の部屋に向かうたゆね。
「?」
後には置いてけぼりのともはねが1人。
「ま、いいや!ゲームしよっと!」
大して気にとめず、自室に戻りゲームを再開しようとするともはね。
「あ、ようこ!?え、いや、そうじゃなくて、大変なんだ!いぐさが!」
一方、たゆねはようこにこの一大事を報告。
さらに一方、自室で服を合わせるごとに少し妄想に入り、その度に赤面しては服を取り替
えるいぐさ。


決戦の時は、近い。

[06/09/05-853-無印-876~877]