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*PHANTOM(仮) 人外編 「大型拳銃グラム」
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869 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:03:52.06 ID:bTEEze20
人外編
「大型拳銃グラム」
870 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:04:13.42 ID:bTEEze20
鋭い発砲音と共に重装備の兵士に大きな風穴が開く。
俺の手にかかればあんな装甲は丸裸に等しい。
が、俺の持ち主はそんな俺を愛おしく撫でる訳でもなく
用が済んだらぶっきらぼうに俺をホルスターに突っ込んで走り出した。
気にいらねえ。
871 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:04:37.40 ID:bTEEze20
俺は消して大きな 立派なトコで作られたモンではない。
だが性能は他のボンクラ共とは比べもんにならない。
何故ならそこらの量産品とは違って俺は世界に二つとない品だ。
だからってよくある既製品のカスタム品でもない。
一から技術を結集して作り上げられた完全オリジナルだ。
名前は「グラム」と名付けられた。
グラムっていっても重さの単位じゃない。
なんでも古北欧語で「怒り」ってのが由来だ。
そうつけられた理由は・・・まあ、明るい理由じゃないだろう。
872 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:05:06.11 ID:bTEEze20
スラッとしたやや長い銃身に黒光りしたボディ、ハイセンスな彫刻、
そしてなんといっても力強いながらも滑らかなフォルム。
自分で言うのもなんだが俺は見た目にも自信がある。
いや、あった。
「あーこんくらいがええわ。」
こいつだ。
俺の2代目の持ち主となるこの間抜け面。
ちょっとばかし使い難い、それだけの理由で俺の造形を大きく変化させた。
俺はそれから鏡を見る度泣き出したくなるようなへっぴり腰だ。
気にいらねえ。
いや気にいらねえのはそれだけじゃねえ。
873 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:05:31.92 ID:bTEEze20
前の持ち主から俺を譲り受けたっきりこいつは俺の「おていれ」を自分でしない。
使い終わると他人に預け任せっぱなしという横着。
しかもだ。
俺を預かった男は相当なガンマニアらしく
俺を受け取った夜は隅々を嘗め回すようにチェックしながらうっとりしていた。
嫌な気分はしない。むしろそれが当然だ。
だが当の持ち主本人はどうだ。
俺の事を「便利」とだけ思っている。ただそれだけだ。
そして一番気に入らないのがこいつが日本人だってことだ。
日本人がこの俺様をどう有効活用しようっていうんだ。
あれか。天に向けて威嚇射撃か?
そんな事に使いやがった日にはもう暴発してやる。
俺は死ぬがお前の手もただじゃすまないぜ。
全く何を思って前の持ち主は俺をこんな奴に預けたのか。
理解出来ない。気安く受け渡しできるもんじゃねえんだ。
どいつもこいつも嘗めやがって。
874 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:06:52.92 ID:bTEEze20
この日本人に使われるようになってしばらく経った。
思っていたよりは俺を有効活用しているようではある。
ある国で俺と日本人は異型の化け物共と交戦した。
こいつは使わない時は運動不足になるほど俺をほったらかしにする癖に
使うときは体中がバラバラになるかと思うほどに使いやがる。
しかしそれも仕方がない。相手が相手だ。
馬鹿でかい上に素早く頑丈なモンスター共だ。
仕方がないのではりきってやるとする。
俺は次々と化け物共を肉片に変えていった。
ただ気に入らないのがその後だ。
他の兵士どもはこの日本人が化け物を倒したと思ってしまっている。
まるで英雄扱いだ。なんてこった。
お前達は間違っている。
化け物を倒したのはこの間抜け面じゃなく俺なんだよ。
俺じゃない他の銃を装備しててみろ。とっくに死んでるぜ。
ふざけやがって。
875 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:07:20.62 ID:bTEEze20
そうこうしている内に俺達は化け物の中でも大物中の大物と対峙した。
さすがにこの馬鹿にもそれは分かったんだろう。俺を握る手に力が入る。
さてやってやろうと思った矢先、助っ人が現れた。
この日本人の仲間で見るからに屈強な大男だ。雰囲気も只者ではない。
その男が手にしている武器、おばけみたいなショットガンだ。
全く図体ばっかりでかくなりやがって。
そのショットガン野朗は俺を見るなりこう言った。
「何だお前?お前の持ち主、死ぬ気か?」
嘗めやがって。
いいか日本人、あの化け物をやるのは俺だ。
足を引っ張るなよ。
876 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします E-mail:sage :2010/12/19(日) 02:07:21.38 ID:7UBWZ72o
我輩は猫であるの拳銃バージョンとな
877 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:07:58.15 ID:bTEEze20
化け物を倒したのは当然俺だった。
おそろしく頑丈そうな奴だったが結局は眉間に一撃。
俺にかかればそれで終わりだ。
ショットガン野朗も懸命に奮戦してたがダメージなどほぼ与えていない。
戦いを終えて近づくとそいつはなんとも情けねえ顔してやがった。
いい気味だ。下手に言い訳しない事だけは褒めてやってもいい。
俺を見くびった謝罪は欲しかったがな。
だがそれも気にならない程に気分がいい。久々にいい気分だ。
日本人、お前もよくやった。ちょっとだけな。
878 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:08:22.38 ID:bTEEze20
そして今俺達はまた違う国で戦っている。
今度はいつも通り人間が相手だ。
しかしその人間共の中にやけに戦闘能力の高い奴らがいる。そして重装備だ。
分かってるよ。今日は重労働の日みたいだな。
こいつと俺は今日も猛者どもを一人また一人と仕留めていった。
そして現れたのがあの戦闘能力のやたら高い集団のボス。
分かってると思うがこいつには油断するなよ。
そういえばさっき一度逃がしたが今度はそうはいかない。
こいつの余裕かました面をふっ飛ばしてやろうぜ。
879 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/19(日) 02:08:49.34 ID:bTEEze20
しかし相手も並じゃない。
俺とこいつが組んで一瞬で勝負が付かないのは初めてだ。
戦いは接近戦となり両者メインの武器はナイフに切り替わった。
俺も自分の役割は分かってる。気に入らないが妥当な判断だ。
たまには俺の力を借りずにやってみるのもいいだろう。
そしていかに俺に頼りきりだったか思い知るといい。
いつの間にか地面に投げ出された俺は身を横たえながら
二人の戦いを傍観していた。
見ちゃいられない。これっぽっちもスタイリッシュじゃない。
なんだその不細工な戦い方は。
もういい。さっさと俺を拾え。
一旦距離をとって俺を拾うんだ。そして決着だ。
880 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:09:12.82 ID:bTEEze20
そう思っていると密着した二人が離れた。
よし、ちょうどすぐ俺を拾える体勢だ。さっさとしろ。
しかし敵がナイフを投げ捨てたのを見てそのまま立ち上がった。
おいおい、もういいだろう。さっさとケリつけて帰ろうぜ。
呑気に敵と喋ってるんじゃねえ。
嬉しそうな顔してるんじゃねえ。
いいから今すぐ・・・・・
お、おい待てよ。どこ行くんだよ。
分かってるよ。奴がまた逃げたよな。
追いかけるんだろ?賛成だ。
でもちょっと待て。俺を忘れてるぞ。
俺がいないとお前なんかすぐに死んじまうぞ。
いいのか?
だから今すぐに俺を取りに戻れよ。
冗談はやめろよな。
881 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:09:56.95 ID:bTEEze20
・・・・・。
結構な時間が経ったがあいつは戻ってこない。
死んだかな。
まあ当然か。当然の報いか。
結局あいつは今までの功績が全て自分の実力だったと、
勘違いしてやがったんだな。過信しやがって。
馬鹿な奴だ。
などと考えていても仕方がない。
そうなると問題は新しい持ち主だな。
こんな所に、この状況で他に人間が来るんだろうか。
あまり前向きな想像はできない。
882 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:10:39.35 ID:bTEEze20
・・・・・誰もこないな。
誰かいないのか。
そして俺を拾ってくれないか。
少々不細工になったが、いい仕事するぜ。
頼むよ。こんな所で朽ち果てるのはごめんだ。
883 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:11:04.28 ID:bTEEze20
半ば諦めて途方に暮れていると、誰かが俺を拾い上げた。
助かった。
そしてよくやった。誰か知らんがお前はラッキーだ。
今日からお前がこのグラム様の新しい所有者になるんだからな。
いや名前はどうでもいい。お前の好きに名付けていいぜ。
見る目はあるんだ。この際腕の質は問わん。
まだ半人前の兵士だろうが、それもまた良し。
一から鍛えてやるからな。
「いや~ごめんごめんグラムちゃん」
・・・お前かよ。待たせやがって。
885 名前:1 ◆trB/oNqUGM :2010/12/19(日) 02:12:31.13 ID:bTEEze20
こいつは俺を拾いに来たとは言え、まだここをおさらばする気がない。
という事は、まだあの男を仕留めてないという事だろう。
そしてもう一度追うつもりなんだろう。
なかなかしつこい奴だ。しかしそれも分からんでもない。
あれほどの相手だ。そうはいない。
お前も兵士の悦びを少しは分かってきたのかもしれないな。
少しは俺の持ち主らしくなってきたじゃないか。
確かに奴は強い。
だが俺がついてるんだ。再度対峙すれば今度こそ、そこで決着に決まってる。
弾倉が残り少ないぞ。よし、装填したな。
怪我はしてないか。 よし、五体満足だな。
いいか相棒、今度こそ逃がすんじゃないぞ。
しっかりと狙えよ。
(海外ライアット編最終章に続く)
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