販売 開発 ジャンル ハード 発売日
スパイク ザックスエンターテインメント ホラーADV DS 2008年7月24日


動画




コメ消し推奨



感想

今は亡きHUMANの知る人ぞ知る傑作ホラーアドベンチャー、「トワイライトシンドローム」の正当な続編にあたる本作。

実は、このシリーズはHUMAN倒産というアクシデントのせいで、数奇な運命を辿ってしまったシリーズである。


■正当後継を巡って


まずは一作目、オリジナルにあたるのが、1996年に発売された「トワイライトシンドローム探索編・究明編」である。ちなみに前後編に分けられての発売になっていたのだが、事前にその説明が一切なく、探索編のラストで唐突に未完のまま後編に続く仕様になっており、当時から批難の声があった(また、HUMANは『御神楽少女探偵団』でも同様の仕様)

一作目だけでも作品としては完結しているのだが、やっかいなのが隠しシナリオとして用意された「prank」というエピソード。それまでのストーリー展開を完全に無視したかのような突き放したエピソードで、それまでキャラクターや世界観に思い入れのあった人ほど首をひねらざるを得ない状況だった。実は、このエピソードは外伝的作品であるムーンライトシンドローム(HUMAN、1997)への布石となっている。

話は『ムーンライトシンドローム』へとうつる。この作品も位置づけが非常に厄介な作品で、トワイライトのディレクターを務めた須田剛一(現グラスホッパーマニュファクチュア代表)が引き続きディレクションを手掛けていることから正当な続編とみることも可能なのだが、キャラクターと舞台は引き継いでいるもののジャンルはホラーからサイコホラーへと変わり、須田氏がのちに作る『シルバー事件』と似た作風となり、トワイライトとは雰囲気もゲーム性も全く異なる。さらにはその結末が非常にショッキングであり、ファンの間ではパラレルワールド、外伝という扱いであり、続編とみなしているものは少ない。

一方でHUMAN倒産後、版権と一部スタッフを引き継いだスパイクから2000年に発売されたのが、『トワイライトシンドローム~再開~』である。こちらは私の記憶が確かであれば、HUMAN時代にすでに開発が始まっており(むろん須田氏はノータッチ)、よくある版権だけを買い取った別ゲー(カプコン版クロックタワーとかな)とはわけが違う。というわけでシリーズ名も冠した正当な続編なのであるが、個人的にはいまいち納得のできない出来である。トワイライトの魅力と言えばホラーとしての怖さだけではなく、どこか悲しげに満ちたシナリオ、迷える霊への救済というテーマがあった。(余談だが、フロムソフトウェアの「エコーナイトシリーズ」もこれに近い。傑作である)例えば傑作エピソードの誉も高い、探索編の「音楽室のM.F」のラストシーンに涙したファンは少なくないだろう。 ああいった雰囲気が「~再開」には見られないのが残念であった。

そして、オリジナルにもっとも近いと言われているのが、その前年に発売されているスパイクの『夕闇通り探検隊』である。トワイライトと夕闇、同じ意味を持つ作品であるが、直接の共通点はない。だが、同じスタッフが作った作品ということもあり、こちらを正当後継に押す人は多い。実在の年をモデルにしたリアリティに満ちた街並み、街中に蔓延する「噂」、悲しすぎるラストとオリジナルを凌駕しかねない傑作だが、難易度の凶悪ぶりは屈指のもので、攻略本を見ても解けないという鬼畜ぶりゆえ、売上的には失敗。当然ながら続編は製作されなかった。

前置きは長くなったが、本作は「~再開」以来8年越しでの正当な続編にあたる。雰囲気はオリジナルに非常に近く、主人公も旧作側のユカリ、チサト、ミカの役割が新作のミズキ、レイカ、リコと対応していたりなど、リメイクに近い印象を受けた。ゲーム的に斬新さは特にないのだが、シリーズの良さを意識した丁寧な出来には好感が持てた

きな臭さの残るタイアップ


タイアップ事態が嫌なわけではないのだが、劇場版「トワイライトシンドローム」とのリンクゆえか、本作では実写取り込みが多用されている。実写ゲー好きな俺はいいですよ、別に。でも普通に考えたら地雷ゲー臭すごいだろ、これ。

あと、何、この空気の読めないオープニングとエンディング曲。タイアップソングなのはわかるんだが(つか、マーティ・フリードマン作曲って! 仕事選べよ!)

いや、ぶっちゃけタイアップ絡まないとこんな企画通らないのはわかるんだが、ユーザー的にはやっぱり納得いかないですよ。中身がいいだけに。あとボリューム不足なのはしょうがないかのう、DSだし。(ルクスペインみたいな規格外の代物を比べてはいけない)

全体的に見て、一作目や夕闇通りが好きだった人は迷わず買っていい出来。ただしオリジナル至上主義の人は絶対に買わないように。つか、これで文句言ってる人の神経が自分にはわかりません。
最終更新:2008年08月23日 00:28