龍宮VS美空・記憶スタンド編


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「返してよ」美空は相手を睨み付ける。「嫌だね」
「その手に握ってるのは私の物だから、返してって言ってるの」
強制的に奪われたそれは、つい先程まで美空の物だった。「あげる」という約束はしていない。
「お前は私に借金をした。それは分かっているよな?」答えられまい、とでも言いたいのか、龍宮の口元が歪んだ。
そこには、罪悪感といったものは滲み出てはいない。
「あれは、だから……必ず返すって言ってるでしょ。それにトイチって、そんな法外な利益、認められてない」
「最近、幽霊を見たことはないか?」龍宮の予想外の質問に、美空が一瞬、びくりと肩を震わせる。その反応を、
思い当たるふしがある、と踏んだのか、龍宮が口元に更に自信を浮かべて、続ける。
「スタンド能力、と言うらしいな」
うすうす感じてはいたのだ。自分と同じ境遇の者が近くにいる、と。しかし、何度か戦ってきたが、うまくやれば
この能力は最強に近い、と美空はふんでいた。
龍宮がスタンドを出現させた。両手と思しき場所と、両肩に巨大な銃を携えていて、ギターのネックの様な頭に付いた
六つの目とは別に、胸元にあるサッカーボール程の巨大な眼球が、薄気味悪い。
「言っておくが」龍宮の顔は自信に溢れていた。「私は負けたことがない」
「おあいにくさま」私も、と美空が言ったところで、龍宮は嬉しそうに微笑んだ。
「それは良かった。我ながら、このスタンドは少し反則なんじゃないか、と思っていたところだ。だがしかし、
 それでもまだ君の強さを疑っている。そこでだ、君に少し、ハンデをやろうと思う」
なめられたものだ、と言ってやりたいところだが、それは正直、有り難かった。最初の一撃さえ決めてしまえば、
もう勝ったも同然なのだ。

「最初の一撃を許そう。もし君の持つ能力がサポート系ならば、好きなだけ準備する時間をやろう」
よし、と美空は心の中でガッツポーズをする。これで絶好の条件が揃った。
「オーケー、“一撃”ね」龍宮にじりじりと躙り寄るが、龍宮は表情ひとつ変えずに、ただその場所に仁王立ちで
佇んでいる。眼前1メートルにまで迫ってから、美空がスタンドを出現させた。大丈夫、ここは不意打ちをされる
場面じゃない、と、心を落ち着かせる。もうとうに射程範囲に入っているが、龍宮のタフネスさを考えたら、一撃
では足りないかもしれない。
美空が腕を振り上げると、同時にスタンドも右手を空に掲げた。そのまま龍宮目がけて振り下ろす。しかし、その
腕は龍宮によって受け止められていた。
「馬鹿が、そうやすやすと最初の一撃をくれてやると思ったか」
美空はその言葉を聞いて、頬を緩めた。もう一撃は入っているのだ。

「お前は……誰だ」確かに、龍宮はそう言った。
私の勝ちだ。美空はそのまま、呆然と立ち尽くしている龍宮に連打を浴びせた。スタンドのパワー自体はそれ程で
はないが、数メートル吹っ飛んだ龍宮を見て、これはただでは済まない、と勝ちを確信する。何より美空のスタン
ドは、パワーを気にする必要がないのだ。一度決めてしまえば、何度でも相手に叩き込めるからである。
呻き声を上げながら立ち上がろうとする龍宮に、美空は再びスタンド能力を発動させた。
「何が……起こったんだ」
体中の出血部位を押さえながら、龍宮が上体を起こす。状況を把握しようとするその口元から、先程と同じ言葉が
漏れた。「お前は……誰だ」
今の打撃で、龍宮との距離は十メートル程開いた。美空は距離を縮めるべく、龍宮に歩み寄る。
「気を付けて、近くにスタンド使いがいる」美空はそれだけ言うと、手の届く範囲に入った龍宮に、再び打撃を
浴びせかける。今度は先程より遠くへと飛んで行った。
そろそろ終わりか、と思ったが、龍宮の体力が並はずれている事は知っている。よろよろと打撲箇所を押さえながら、
龍宮は俯せの状態から身体を起こす。
もう一度、同じ事を繰り返す。それだけで、勝てる。「お前は……誰だ」
「気を付けて、近くにスタンド使いがいるの」
そろそろ最後か、と思いながら、射程圏内に入ろうとする。
「止まれ」
予想外だった。龍宮のスタンドが銃口をこちらに向けているのだ。こんな事は今までなかった。予想外といえば、
相手もそうなのだろう。少しやり方を変えなければならない。
「お前は誰だ、と聞いている」美空のスタンドの効果で、龍宮はそんなことを口にした。美空は心の内で、そんな事
聞いても無駄だよ、とほくそ笑んだ。

「私は美空。落ち着いて聞いて。私もあなたと同じ、スタンド使いなの。」
「お前のスタンドは何だ」
賢い質問だ。しかし、聞いたところで、私には勝てない。
「単なるパワータイプのスタンドよ。この辺りに私の探しているスタンドがいるって聞きつけて、偶然あなたとその
 人が戦っている所を見つけたの」
下手に能力を捏造して、やってみろ、とでも言われたら疑われてしまう。自分のスタンドを発動させるまでなら、幾ら
でも嘘を吐けるのだ。当たり障りのない事を言っておけば、短い間なら幾らでも言い訳は効く。
「下手な嘘を吐くな」龍宮にそう言われても、美空は動じない。シミュレーションの範囲内だ。「私はそんなヤツと
戦った記憶なんてないぞ」
「落ち着いて聞いて。敵の能力は、相手の記憶から完全に消え去る能力なの。大丈夫、私は味方だから」
これを聞いて、大概の相手は自分を信用する。相手は、今聞いた能力が美空のものだという考えには至らない。寧ろ、
得体の知れない能力を聞かされ、不安になる。そこに、味方と偽って近付けば、再び記憶を消せる。
これが、美空の戦い方だった。

「敵の能力は一人にしか使えない。私がいれば、あなたを助けられるけど、そっちに行ってもいいかな」
龍宮は、最初訝しそうな視線を送ってきていたが、美空の説明を聞いている内に、段々と顔から疑いの様子が薄れて
いった。
「効果範囲はどれぐらいか分かるか」
「とりあえずそのおっかない銃、下ろしてくれるかな」
「いーや、私の質問に答える方が先だ」
心の中で舌打ちしつつも、ここで引き金を引かれる訳にはいかない、とチャンスを伺う。
「多分、2メートルかそこら」
「ならば、3メートルまで近付け。そこから、もし敵が見えたら私に合図を送るんだ」随分用心深い。射程距離内に
私を近付けさせないということは、私がその能力者かもしれない、と疑っているのだろう。ここまで考えて距離を取
られた事はなかった。賢い敵は厄介だ。これは急いで勝負をつけなければならない。
ゆっくりと、距離を縮める。龍宮は、ある程度信用してくれたのか、こちらに背を向けて辺りの様子を慎重に見回し
ている。チャンスだ、背後をこちらに向けている。馬鹿め。
美空が2メートル以内に近付き、再びスタンドを発動させた。これでもう、龍宮の記憶から、完全に私は消え去った。
これで、終わりだ。
そう勝ち誇った美空は、激痛を訴えた腕を見て、悲鳴を上げた。銃弾が掠れ、出血していたのだ。

見た目程大した怪我ではないが、それよりも美空は、何故看破されたのか、そして、銃口を向けられた恐怖でパニック
に陥っていた。
「ど、どうして……」そう声を絞り出すのが精一杯だった。絶対に破れる筈のない能力が破れたのだ。
「どうしてだかは知らないが、私が引き金を引いたということは、貴様は敵だ、ということだ。詳しく知りたいのなら、
 能力を解除しろ」銃口は完全にこちらを向いていた。おまけに距離も取っている。『どうして』の一言で全てを悟った、
そう考えても過言ではないと思わせる程に、龍宮の目は鋭く、全てを射抜いている様な錯覚を起こさせた。

「私のスタンドは、目だ」龍宮は、そう説明した。「360度、全てを見渡せる」
美空がスタンドを解除させると、龍宮はメモ用紙にさらさらと何かを書き込み始め、それを手の中に握った。
『もし、記憶がなくなったような違和感を感じた場合、目の前の短髪の女は敵だ』美空の完全な敗北だった。
「私はお前の説明を聞いて、一つの可能性に気付いた。お前がその能力者である可能性にな。そこで私は、記憶を消された
 状態の私に、ひとつの命令を下した。背後から襲って来る者を撃て、と」
美空の能力は、相手の記憶から任意の人物の記憶を完全に消し去る能力。自分が関わった状況までは完全に消せるが、
それ以外のフォローはない。つまり、今龍宮が言った“命令”までは消せないのだ。

「お前の記憶をすっ飛ばしてなお、お前を撃てるように、わざと背後を取らせた。それが、私が自分に課したスイッチだ。
 もし、その条件が満たされた場合、例えどんな状況であっても、私は敵を撃てる」
美空は項垂れ、敗北した事に落胆を感じていたが、龍宮の機転に感心もしていた。自分には、敗北の可能性はない。
そう自惚れていたが、それは逆に、面白みに欠けると、心のどこかでそう思っていた自分に気付かされたのだ。
自分の能力には対処法がある、それはまた、可能性を伸ばす事にも繋がるのだ。龍宮はそれを、教えてくれた。
「それじゃあ、こいつはもらって行くぞ」
「そ、そんな……」
「別に、あんみつぐらいどこにでも売ってるだろう。それにな、お前トイチって言ったのはギャグだぞ、分かっているのか。
 百円をトイチにしたところで、十日で百十円だろうが。まさかお前、たかが百円を十日も返さないつもりだったのか?」
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。