Phase 1 「人形」


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    まきますか   まきませんか

そんな手紙が届いたのはつい昨日のことだった。
「――で夕映。それどうするの?」
手紙を覗くハルナは興味津々だった。
「これは処分するです。きっと新手の悪徳商法です」
「でもさ、ここに『幸運の人形プレゼント』って書いてあるじゃん」
ハルナは下の欄で一番強調している部分を指差した。
確かにそう書いてはあるが、人一倍疑り深い夕映はそれでも信用できなかった。
そもそも幸運の人形という辺りがとても胡散臭い。

他人事のように話すハルナは書け書けと発破をかける。
「興味ないです」
夕映は納得がいかず、ひとまずその手紙を置いてミニテストの答え合わせを始めた。
勉強は出来る方だが元々勉強嫌いがたたり×が連続する。
伊達にバカレンジャーのバカブラックを担当しているわけではなかった。
そんなことも気にせずに夕映は黙々と答案を見比べては×と○をつけていた。
そしていくつかの○をつけようとした途端――
「あっ!!」
隣で大人しくその答案を眺めていたハルナが、横からこっそりと手紙を取り出して答案の上に滑り込ませた。
大きく○をつけたそれは“まきます”の欄だった。
「な、何をするですかーーーー!!」

「な、何をするですかーーーー!!」
思わず書いてしまった夕映は手紙を抑えて笑っているハルナに向かって激怒した。
「『!!!お金は一切かかりません!!!』って書いてあるからやってみたら?」
「そんなことやってると、いずれしっぺ返しがくるですよ!」
声を荒々しくさせた夕映は、もうどうにでもなれと言わん張りに椅子に腰掛けた。
そして、鞄の中に入れたはずの手紙が無くなっていたのに気づいたのは放課後だった。


翌日、休みだった夕映は少し遅めに起きた。
寝起きの抹茶コーラは格別で、夕映はいつも朝一番に飲んでいる。
いつものようにベッドから起き上がり、いつものように顔を洗おうと洗面所に向かっていると。
「何です…これ」
ふと玄関を見ると、そこには大きめのトランクのような鞄が無造作に置かれてあった。
誰かの忘れ物かと思い、近づいて見る。しかしこんな鞄を持ってそうな人物が想像できなかった。
もちろん自分の物でもない。
「鍵は…掛かってないですね」
触れていると、特別何かをしたわけでもないのに鞄がすっと開いた。
「な、何です……」
異質な雰囲気に気味悪くなって一度はそこから離れる夕映。
一度顔を洗ってもう一度鞄に向き直した。そして意を決して鞄を開ける。

「人形ですか?」
その中には、まるで眠っているように横たわっている人形が一体存在した。
見るからに海外の人形で、おそらくヨーロッパあたりかと予想した。
ゆっくりと抱きかかえて見ると、結構な大きさでミニサイズの人間のようだった。
小さい頃に人形は何度も持ったことはあるが、この人形はまるで人間のように柔らかい。

「すごいです…まるで生きてるみたいです」
夕映はそこまで出来た人形にただ圧巻していた。ここまで精巧に創るからにはかなりの職人芸だろう。
だがここまで来てふと疑問に思う。
この人形は一体誰がここに置いたのだろうかというものだった。
別に注文したわけでもなければ誰かの忘れ物でもない。
何故なら、昨日の部屋には夕映一人でいて、出入りしたのはのどかとハルナだけだからだ。
長い付き合いの二人だからこそ考えられるが、とてもこんな人形に興味を持つとは言いがたい。
一旦その人形を元に戻そうとしていると、金色のゼンマイのネジが目に入った。
「…少しくらいいいですよね」
腰に小さな穴があり、そこに入れてそっと巻いてみる。

キリキリと音を立ててゼンマイを巻くと、その人形はいきなり眩い光を放ちだした。
「な、何ですーー!?」
宙に浮かび、そしてゆっくりと二足歩行するように地面に降り立つ人形。
目が開き人形が夕映を見ると、彼女はその光景に驚き気絶していた。


つづく
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