第2話「特命係麻帆良学園へ」


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二人は伊丹に案内された会議室で事情を聞く事になった。
伊丹は普段よりも真剣な顔つきで右京と亀山にある事件の事を話し始めた。
「先日埼玉県の女子中学校である男が射殺された。
  名前は木村修平35歳、独身交際相手なし、大学の講師をしていた。
  3日前中学校の教室で死体となって発見された。
  身体には数十の弾痕と思われる物、死因は心臓を撃ち抜かれた事による即死」
「ちょっとすいません」

右京が伊丹の話を静止した、当の伊丹は面倒臭そうな顔をしている。
「なんですか?警部殿」
「貴方は今『弾痕のような物』と仰いましたね、これ一体どういう事なのでしょうか?」
「鑑識からの報告によると被害者は至近距離から5,56㎜弾によって射撃されたそうです。
  実際被害者の傷口には火傷の痕がありました。
  ただ現場からは全てが消えていた、凶器も何もかも」
「何かもという事はひょっとして弾丸が発見されなかったのですか?」
「ええ被害者の体内にも現場にも銃弾は存在しませんでした。
  おまけに硝煙反応も薬莢も一切無し、しかし傷口の特徴を見れば明らかに射殺されているはず」
「それは妙ですね、弾丸は消滅、さらに硝煙反応も薬莢も出ない……そんな便利な銃がこの世に存在するんでしょうか?」
「する訳ないでしょう!!そんな物があったらね、殺人事件を解決するのなんか不可能ですよ!!」
「たしかに……伊丹刑事、解剖記録を見せていただけますか?」
「どうぞ……」
伊丹は投げやりな様子で右京に解剖記録を渡した。

「なるほど確かに至近距離で射殺されているようですね……ですが弾丸は被害者の体を貫通していないんですか?」
「右京さんそれがどうかしたんすか?」
「亀山君この5,56㎜弾は突撃銃用の弾丸です、つまり貫通力にとても優れる弾丸なんですよ。
貫通力に優れる5,56㎜弾が傷跡に火傷を残すほどの至近距離で発射されて貫通しない、そんな事は通常ありえないんですよ」
「どういう事ですか?じゃあ凶器は一体なんなんすかね?」
「それが分かれば苦労しねぇよ!馬鹿か!!」
「分かりもしねぇてめぇに馬鹿って言われたかねぇよ馬鹿!!」
「なんだと!!俺は特命係がこの山を任されるのは反対なんだ!!」
「確かに殺人事件となれば捜査一課、それ以前に県警が動くはずですねぇ」
「県警には任せておけない、そういう事です」
そう言って会議室に入ってきたのは長身で整った顔立ちをした30代前半に見える男であった。

伊丹が長身の男に何か言おうとしたが
「伊丹君、君達はもういい、さぁ持ち場に戻ってくれ」
そう言って男は伊丹の言葉を間髪いれずに遮ってしまった。
「分かりましたよ!!ふん、行くぞ!!せいぜい頑張ってください警部殿、特命係の亀山!!」
そう捨て台詞を吐くと伊丹とその取り巻きである刑事二人は会議室を後にした。
「自己紹介がまだでした私は警視庁、麻帆良学園殺人事件特別捜査本部所属の幸田正文です」
神田の挨拶に杉下は愛想よく微笑み「杉下です」と落ち着いた口調で返した。
そして「亀山です!!」と亀山は若干慌てた様子で右京に続いてそう幸田に返した。

「早速ですがお二人に担当して頂くのは現場での単独調査です」
「単独調査ですか……県警や本庁のサポートは無しですか?」
「いえ右京さん、調査は確かに単独で行ってもらいたいのですがその際に必要な物や人材はこちらで揃えてあります。
 必要に応じて捜査官、鑑識、資材、個人情報ありとあらゆる物を貴方達の独断で使用できるように手配してあります」
「それはそれは……随分と私達は優遇されているのですねぇ」
「もっともこれは極秘の捜査ですのであまり表立った事は……貴方ならお分かりでしょう右京さん」
「えっ?」
亀山は幸田の意外な言葉に思わず疑問の声を漏らしてしまった。

「さて貴方達が潜入する場所には武装した凶悪犯が潜んでいる可能性が非常に高いです」
「はいそれは承知しております、捜査には十分気をつけて望むつもりです」
「お受け頂けるのですか?でしたらこれを受け取ってください」

そう言って幸田は二人の目の前に二挺の拳銃を差し出した。
「これは……一体」
「万が一の時の備えですよ亀山さん、これを肌身離さず携帯してください、犯人と思し人物が凶器を向けて襲って来たら迷わずに撃ってください」
「そ、そんな乱暴な!!」
「相手は凶悪犯ですよ亀山さん、迷えば即、死に繋がると考えてください」

「そうは言ってもこちらで用意できたのはS&W M37です、携行性には優れますが火力や装弾数には不満が残ります」
「十分ですよ、ただ出来ればこれを使わずに事件を解決したいものですねぇ」
「私もそう思っています、ただ発砲許可は既に私が取ってありますから、いざと言う時には迷わずに」
「分かりました、亀山君ありがたくお借りしましょう、何かの役に立つかもしれません」
「そうっすね……では幸田さんお借りいたします!!」
「ではよろしくお願いします、くれぐれも慎重に捜査を進めてください」

二人はその後適当に身支度を整えると亀山の運転する車に乗って麻帆良学園を目指した。
亀山は車の運転をする傍ら今回の捜査について数々の疑問を感じていた。
そしてその疑問は自らの相棒である右京にも向けられていた。

「ねぇ右京さん」
「なんでしょう?」
「右京さんは麻帆良学園について何を知ってるんですか?」
「ええあそこは事件の揉み消しで有名ですからねぇ」
「揉み消し?何で学園都市がそんな真似を?それに揉み消しってどんな事件を?」
「順を追って説明した方がよさそうですねぇ、では私が知っている事についてお話しましょう」
そう言って右京は数ヶ月前に起きた数々のみ解決事件について語り始めた。

「2003年4月7日の深夜、当時中学3年生の少女が何者かに襲われる事件が発生。
  さらに15日の深夜には麻帆良市内にある橋で爆発事故が発生、これがきっかけで県警が麻帆良市に立ち入り調査を求めました。
  そしてある人物の目撃情報で7日の事件が発覚、県警は隠蔽の可能性を示唆しましたが物的証拠は出ませんでした。
  県警はこの事件をきっかけに麻帆良学園の徹底マークを始めました。
  4月24日京都の映画撮影所で修学旅行に来ていた麻帆良学園の生徒数人が乱闘騒ぎを起しましたがこれも無い事にされました。
  同日京都市内の鬼神が祭られている祠の近くで謎の爆発音や銃声を市民が聞いていました。
  さらにその周辺には多数の凶器類が発見されました、現場は弾痕や爆発の痕が至る所に見られたため京都府警が調査に乗り出しました。
  大規模なテロの演習という内容で捜査は行われましたが物的証拠は挙げられませんでした。
  しかし事件の発生時刻に麻帆良学園生徒数人が宿泊先の旅館から姿を消している事が判明しました。
  しかも失踪していた生徒は、みな現場の付近に居た事が判明しました。
  ですがこれも物的証拠が挙げられずに捜査は行き詰りました。
  そしてこの事件の大規模テロ演習の犯人はいまだに捕まっていません。
  さらに麻帆良学園の学園祭でも違法な格闘大会やイベントなどが多数執り行われていた可能性があり現在も事実関係を調査中です」

「なんなんすかそれ……それだけの疑いがあるのに警視庁は動かないんですか?」
「もちろん動いていますが物的証拠は何一つ出てこないようです。
 いくら隠蔽工作をしようとも警視庁の捜査を欺くというはただ事ではない気がしますねぇ」
「警視庁が動いても全く証拠が掴めないなんて……」
「正に完全犯罪とでも言うべきでしょうか?しかし今回は殺人事件警察が動かない訳がありません」
「でもなんで俺たちなんすかね?どうしてそんな場所に?」
「恐らく我々を泳がせて麻帆良市の関係者をかく乱するのが目的だと思いますよ。
  我々が引っ掻き回している間に過去に起きた事件について調べる気でしょう」

そんな会話がから1時間後、ついに二人の刑事は奇怪な殺人事件の舞台に降り立った。
「でけぇ……なんなんすかここは……」
目の前に広がる巨大な校舎に度肝を抜かれ立ち尽くしているのは亀山。
「麻帆良学園日本でも有数の超巨大マンモス校ですよ」
状況を冷静に淡々と語る右京、だが学園を見つめるその眼には好奇心が満ちていた。
「亀山君行きましょうか」
右京はまるで誕生日を迎えた子供のように嬉々とした表情で相棒の刑事を促した。
「はい!……授業料高そう~」

そんな刑事二人の様子を校舎の窓からな眺めて居る者たちが居た。
「あいつ等か?本庁の刑事とやらは」
金髪の華奢な少女がその隣に居る老人に威圧的な口調で話しかける。
それを咎める事も無く老人は髭を撫でながら校庭を歩いてる刑事を眺めていた。
「杉下右京は裏の世界では有名人じゃよ……切れすぎた刑事としてな」
「下手な小細工の通用する相手ではないと言う事か?あまり嗅ぎ回られれば厄介な事になりそうだが」
金の長髪をなびかせて小さい少女は老人を見つめる、その視線はやはり威圧的だ。
「いいのか?最悪魔法の存在がバレかねんぞ?」
少女の言葉に唸りながらも老人は
「仕方あるまい、警視庁には前々から目を付けられておる。今捜査を拒めば何をされるか分からんからな」
半ば諦めの声を上げて窓から離れた。

右京と亀山は事件に関しての情報を得るため学園長を探していた。
校舎内の生徒や教員に道を尋ねる内にようやく学園長が居ると思われる学園長室まで辿り着いた。
右京は扉を軽くノックして「失礼します」と言って学園長室に足を踏み入れた。
中で待っていたのは先ほど右京たちを見下ろしていた老人であった。

「ん?あんたたちは誰かのォ~?」
とぼけたように尋ねる老人に二人の刑事は警察手帳を見せて
「警視庁の杉下です」
「同じく警視庁の亀山です」と言った。
「ああ先程連絡がありましたよ、刑事を二人送るから事件についての説明をしてくれって。
 紹介が遅れましたな、私がこの学園の責任者で近衛と申します」
「よろしくお願いします、では早速ですが現場へは?」
「ああそれなら……」
学園長は二人に現場となった教室3-Aへの生き方を説明した。

「なるほど、わかりました。では亀山君行きましょうか」
「ああ杉下刑事」
学園長の呼びかけに杉下は足を止めた。
「はい~?」
「生徒たちは授業中ですのであまり賑やかなのは」
「もちろん心得ています、では失礼」
右京は軽く会釈すると相棒の刑事に声をかけ学園長室を後にした。

「ここが現場ですか」
「みたいっすね」
右京と亀山は事件の起きた3-Aの教室に居た。
現場は床に飛び散ったような大量の血痕と遺体を模った人型のテープがある以外は至って普通であった。
逆にそれらが教室という空間に異質な雰囲気を与えていた。
右京はそんな教室を一通り見終わると微笑を浮かべた。

「なるほど、確かに不可解な現場ですねぇ、銃殺されたのにも拘らずここには1つも弾痕が存在しない。
 さらにあの火薬独特の匂いもしませんねぇ、大抵室内での銃殺だと匂いが篭るのですが」
「右京さんまさか犯人が換気したなんて事ないですよねぇ~?」
「そうだとすると随分と余裕のある犯人ですねぇ。
 僕なら事が済んだらそうそうに現場から立ち去りますが」
「確かに……どうします?ここにこれ以上居てもしょうがないんじゃいっすか?」
「そうですねぇ~証拠は鑑識が持っているはずですから後で聞いてみましょう」
「じゃあどうします?」
「遺体の第一発見者の方にお話を伺いましょう、何か分かるかもしれません」
「え~と遺体の第一発見者は……古菲中国人らしいです、このクラスの生徒みたいっすね」
「そうですか、では彼女に会いに行きましょう」
「右京さん3-Aってどこで授業受けてるんすかね?ここじゃないでしょ?」
「そういえばうっかりしてました、近衛学園長に聞いてみましょう」
二人はそう言って不可解な現場を後にした。

右京と亀山は学園長に現在3-Aが授業を受けている教室の場所を聞きそこに向かった。
「ここっすね学園長が言ってたのは……授業中みたいっすね」
亀山が教室を覗き込んでいるといきなり扉をノックする音が聞こえた。
まさかと思い亀山は右京を見るすると案の定
「失礼します」ノックしたのはやはり右京であった。
亀山が静止しようとするもそれより早く右京は教室に入ってしまった。
右京のこういう節操の無さが時に事件を解決し時に人から反感を買う、少々呆れながらも亀山は右京の後を追った。
当然教室はざわついていた、何せ女子校の教室に見知らぬ男性二人が居るのである、騒がぬ方がおかしい。

「この中に古菲さんはいらっしゃいますか!」
右京が教室全体に聞こえるよう声を張る。
「あの貴方達は……」
右京に話しかけたのは10歳ぐらいの少年であった。
顔立ちからして日本人ではない、さらにその服装はまるで教師のようであった。
少年の言葉に右京は微笑みを浮かべてると優しい口調で彼の疑問に答えた。
「これは失礼しました、私は警視庁の杉下右京と申します」
「同じく警視庁の亀山薫だ」
「警視庁……貴方たちが担当の刑事さんですか?」
「君は?ここは女子中学校、君は男の子しかもまだ10歳ぐらいでしょう?」
「僕の名前はネギ・スプリングフィールドです、3年A組の担任です」
「お前が!?」
「おやおや」
右京と亀山は少年の思わぬ発言に暫し凍り付いた。
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