「吸血鬼 VS 吸血鬼」

場所は変わり此処はエヴァの別荘。
ただし例の精神世界である。ここなら現実で傷を負う事が無いため、現在の状況では非常に助かる。
また、刹那は以前の戦装束姿をしている。
そんな中で対峙する二つの人影。
エヴァとアーカードである。射抜くような鋭い視線を向けるエヴァと、それに反して愉しげに口元を歪めるアーカード。
それを離れた所から見据えるネギ逹。その時ネギ逹の間ではこんな会話がされていた。

「ネギ先生、この勝負どう見ます?」
刹那が問いかける。
「そうですね……………アーカードさんには失礼ですが、万全の状態の師匠と戦えるようにはとても………」
「あたしも。外見だけでの判断はいけないと思うけど正直、魔法一発で吹き飛んじゃいそう……」
ネギが答え、アスナも肯定する。
「私もそう思います。いくらアーカード氏が吸血鬼であっても、エヴァンジェリンさんはあのリョウメンスクナを軽くあしらっていますし、実際に戦った事もある身としましては……」
しかし、それにチャチャゼロの否定の声が返って来る。
「イヤ、ソウトモイエネエ。以前ヤツトゴシュジンガヤリアッタトキ、ドウイウワケカゴシュジンハクセンシテイタヨウダッタゼ?」
「マスター………」
何故エヴァの従者であるこの二人(?)がここに居るかというと、チャチャゼロの方は
「お前を操作するのに回す魔力が無い」と言われ、茶々丸の方は
「奴の攻撃は初見では避けられん。威力もお前を破壊するのに十二分だ」との事で、現在はデータ収集を行っている。
「「「…………………」」」
三人に沈黙が降りる。少なくとも、現在視線の先でエヴァと対峙している青年の外見と中身は一致しないという事か。


そして遂に
「始めようか。『闇の福音』」
アーカードが問いかけ
「そうだな」
エヴァが応える。
エヴァの応えの直後に、アーカードが
「エクスキューショナー・ソード!」


ドン!!!


吹き飛んだ。
「「「(し、し、し、死んだ!?)」」」
開始早々の詠唱完全破棄魔法にネギ、アスナ、刹那の顔色が真っ青になる。
その魔法は文字通り
『処刑人の剣』。
まともに喰らえば命を、それこそ根こそぎ刈り取られる。
嫌な汗を流すネギ逹に構わず、エヴァはすぐさま追撃に移る。
「氷神の鉄槌(マレウス・アクイローニス)!!」
ドガン!!!

再びの詠唱完全破棄魔法。巨大な氷塊による大質量攻撃。だが結果を確認する事無く、さらに追撃を行う。

「来たれ氷精、闇の精。闇を従え吹雪け常夜の氷雪」
今度はしっかりと詠唱を行い、威力を高める。そして詠唱の完成と同時に
「闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)!!」
魔法が放たれる。
それは以前ネギと撃ち合った時とは比べ物にならない莫大な破壊力を内包し、目標が居る場所に猛進、直撃する。
そして、とどめと言わんばかりに冷徹に最後の詠唱を開始する。

「契約に従い我に従え氷の女王 来れとこしえのやみ えいえんのひょうが 全ての命ある者に 等しき死を 其は安らぎ也!」

膨れ上がった魔力が解放され、形を成す!
「おわるせかい(コズミケー・カタストロフェー)!!!!!」


眼前に在るのは、真紅を纏った青年が居たはずの場所。

しかし今其処に在るのは、多数の巨大な氷塊。
最適な環境に保たれているはずのこの空間が、今は冷気がさながら鋭利な刃のように肌を刺している。

そんな中で、いち早く我にかえった刹那がエヴァを追求する。
「なんてことを…………エヴァさん!?これではアーカード氏が!?」
「………………」
しかし、エヴァからの返答は無い。こちらの話など意に介さず、氷の世界の中心部を警戒し続ける。
そんなエヴァに疑問を抱く刹那。
凄まじい威力の魔法の連撃、しかも最後は絶対零度に迫るそれを受けて、例え吸血鬼といえども生存を許されるはずはないというのに。

しかし刹那はある事を見落としていた。
この学園都市に潜伏している吸血鬼は六体。それを駆逐する為に送り込まれたのはアーカードのみ。
いくら魔法使いが居るとはいえ、協力してくれるとは限らない。最悪の場合、一対六での戦闘となるやもしれないというのに、だ。

それはつまり、アーカードが単体でそれらを殲滅出来るという事を意味している。






そして『魔王』が顕現する。


ドゴォン!



銃声。いや、最早砲声と言っても差し支えない腹の底に響く轟音。
それは数多の氷塊の中から突き出た『腕』に握られた銃より発された。
放たれた銃弾は己が敵を喰い破らんとする獣さながらに、大気を裂いて標的へ迫る。
しかし標的はかの『闇の福音』。
以前と同じ轍は踏むまいと魔力を局所的に集中して、強力な障壁を編み上げる。

確かに、その障壁は以前の銃弾を受け止めるに足る強力な障壁だった。
しかしこの銃弾は以前とは違った。
エヴァにアーカードの知らないカードがあったように、アーカードにもそれはあった。

「ぐっ!!?」

そして獣は障壁を容易く喰い破り、さらにエヴァの右腕を喰いちぎった。
そして、深淵からの声が、響く。

『拘束制御術式第3号第2号第1号開放 状況Aクロムウェル発動による承認認識。
目前敵の完全沈黙までの間 能力使用限定解除開始』

それは、おぞましい光景だった。

氷塊から突き出た『腕』が分解され、蝙蝠になり飛び立つ。
同じように氷塊の隙間から、蝙蝠が飛び立ち百足が這い出る。
それは一つに集結し、人型の『影』が構成される。


………全身に多数の『眼』を持つ『影』へと。
その『眼』が閉じられると其処には、真紅を纏った青年が居た。
狂喜の笑みを、その口元に浮かべて。

青年は真紅を纏っては居たが、それは先程までとは全く違うモノだった。

帽子とサングラスは身につけておらず、血のような色のロングコートは、同色の、全身を覆う多数のベルトの様なモノに変質していた。
そして、左右の手に握られた白銀と漆黒の大型拳銃。

白銀の大型拳銃、以前のエヴァの魔力障壁を破ったこれは、名を『454カスール』と言い、対吸血鬼用の兵装で、常人には使用出来ないサイズである。

そして、漆黒の大型拳銃。エヴァの局所集中の魔力障壁を喰い破ったこれは『ジャッカル』と言い、既に人類には扱いきれないアーカード専用の大砲のような拳銃。
『吸血鬼を狩る吸血鬼』の銃。
そしてアーカードは、狂喜の笑みをそのままに、言う。
「さぁ、あの時の続きをしようじゃあないか『闇の福音』。
お前の魔術を私に叩き込め!
お前の狂気を私に刻め!!
宴は始まったばかりだ!ハリー!ハリー!ハリー!ハリー!!」

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最終更新:2007年01月17日 00:27
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