プロローグ

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薄汚れた大気の空を、プロペラがうゆゆゆゆゆゆゆんとかき混ぜる音で、計器類だらけの狭い操縦席は満たされていた。 「なぁ、マエストロ、外の稼動音が聞こえてるぜ。だいぶ、ポンコツになっちま―――」 「うるさいわい。だまって整備しておれ!」 イラついた低い声が室内に響き渡り、シェンはいつもどおり次の行動察する。 たぶん、マエストロが使用中のドライバーが、ドアから飛んでくるだろう。 そんでもって、壁に深いみぞをつくるだろう。ジジイがそんなことばっかやってっから、整備することになるンだぜ? もちろん彼が避けたためにそのとおりになる。 彼らの日常のジャック・イン前の出来事だ。 ペグソンがBNを見つけたために、ロッジのお達しでジャック・インの命がかかり、準備を始めている。 シェンは、そんな状態でシップの四角い窓をコッソリと覗き込む。 ミクバシティの荒れ方は尋常じゃない。大災厄以来、街並みは荒廃して、復旧作業もままならない。 廃墟と化すところ、ならず者が住み着くところ、気味の悪い突然変異した虫が巣くうところ、最悪物件なら何でもござれだ。 ここから見える唯一の川、デイン川すら汚濁のたまり場だ。 ―――まぁ、大体作業終わってるからな。 「マエストロ」 デッキから、 「なんじゃ、また何か言い足りんか」「今日のジャックポイント先の地名、どこだったかな?」 がんっ、今度は操縦席かよ。 「それぐらい覚えておかんのか、サイタマケンのマホラシと言うておいてあるじゃろうが」 「名前は、近衛木乃香でよかったよな」「そうじゃ」  声がイラつき始めた。短気はそんするぜ、ジジイ。 「それを手動算出すンのが大変なんだよね、誰かやってくンない?」  お、操縦桿がへこんだ。 顔を撫ぜる涼しい夜風、聞こえてくるのは制服の衣擦れの音と、川が流れる水の音だけだった。 最近夜遅う帰ってきとるから、こんな夢見るんやろうな。 図書館島が見える河川敷で、外灯が照らす中、木乃香は車さえ通る音もしない、夜中の散歩をしている夢を見ていた。ふとんに入った記憶もある夢を。 やけにはっきりした夢やわ。ウチ、こんな夢見たような記憶もあるしな。 そんなことをしみじみと考えながら、地を踏みしめ踏みしめ、黙々と川沿いを歩き続ける。 気持ちええなぁ。寝転がってみよか。 ゴロンと地面に大の字になると、わずかに欠けた白い月が目に飛び込んでくる。その見事さにしばし感嘆とする木乃香。 きれい・・・、ほかの皆にやネギ先生に見せてあげたいくらいや。 あれ、星の数が増えとらへんか? スカートを波立たせながら立ち上がる。周りが暗い。月明かりだけの視界。 いったいどうしたんや。・・・外灯が消えとらへんか? 暗闇の中、自分が一人でいるという感覚。それは木乃香にとって、恐怖に 感じ取られた。 なんや・・・怖い!いったいどうしたんや!? あれは・・・・・せっちゃん? 数メートル間を空けて、刹那が確かに立っている。 ただ木乃香にとって疑問は二つだけ、 何でせっちゃんは装束、着込んでるんやろう?何で刀を抜くんやろう?
薄汚れた大気の空を、プロペラがうゆゆゆゆゆゆゆんとかき混ぜる音で、計器類だらけの狭い操縦席は満たされていた。 「なぁ、マエストロ、外の稼動音が大きくなってきたぜ。だいぶ、安普請のポンコツになっちま―――」 「うるさいわい。だまって整備しておれ!」 イラついた低い声が室内に響き渡り、シェンはいつもどおり次の行動察する。 たぶん、マエストロが使用中のドライバーが、ドアから飛んでくるだろう。 そんでもって、壁に深いみぞをつくるだろう。ジジイがそんなことばっかやってっから、整備することになるンだぜ? もちろん彼がヒラリと避けたためにそのとおりになる。 彼らの日常のジャック・イン前の出来事だ。 ペグソンがBNを見つけたために、ロッジのお達しでジャック・インの命がかかり、準備を始めている。 シェンは、そんな状態でシップの四角い窓をコッソリと覗き込む。 ミクバ市の荒れ方は尋常じゃない。大災厄以来、街並みは荒廃して、復旧作業もままならない。 廃墟と化すところ、ならず者が住み着くところ、気味の悪い突然変異した虫が巣くうところ、最悪物件なら何でもござれだ。 ここから見える唯一の川、デイン川すら汚濁のたまり場なのだから。 ―――まぁ、大体作業終わってるからな。 「マエストロ」 デッキから、 「なんじゃ、また何か言い足りんか」「今日のジャックポイント先の地名、どこだったかな?」 がんっ、今度は操縦席かよ。 「それぐらい覚えておかんのか、サイタマケンのマホラシと言うておいてあるじゃろうが」 「あぁ、そんな名前だったな」「だったら黙っておれ」 低い声がイラつき始めた。短気は大損するぜ、ジジイ。 「そのジャックイン・ポイント、手動算出すンのが大変なんだよね、誰かやってくンない?」  お、操縦桿がへこんだ。 顔を撫ぜる涼しい夜風、聞こえてくるのは制服の衣擦れの音と、川が流れる水の音だけだった。 最近夜遅う帰ってきとるから、こんな夢見るんやろうな。 図書館島が見える河川敷で、外灯が照らす中、木乃香は車さえ通る音もしない、夜中の麻帆良の川沿いに居る夢を見ていた。ふとんに入った記憶もある夢を。 やけにはっきりした夢やわ。ウチ、こんな夢見たような記憶もあるしな。 そんなことをしみじみと考えながら、地を踏みしめ踏みしめ、黙々と川沿いを歩き続ける。 気持ちええなぁ。寝転がってみよか。 ゴロンと地面に大の字になると、わずかに欠けた白い月が目に飛び込んでくる。その見事さにしばし感嘆とする木乃香。 きれい・・・、ほかの皆にやネギ先生に見せてあげたいくらいや。 ――あれ、星の数が増えとらへんか? スカートを波立たせながら立ち上がる。周りが暗い。月明かりだけの視界。 いったいどうしたんや。・・・外灯が消えとらへんか? 暗闇の中、自分が一人でいるという感覚。それは木乃香にとって、恐怖に 感じ取られた。 なんや・・・いったいどうしたんや!? あれは・・・・・せっちゃん? 数メートル間を空けて、刹那が確かに立っている。 ただ木乃香にとって疑問は二つだけ、 何でせっちゃんは装束、着込んでるんやろう?何で刀を抜くんやろう?

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