<2th down 悪魔とシスター>

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「この糞チビ!試合控えてるのに無茶してんじゃねー!!」 「ヒーー!!スイマセン!仕方がなかったんです!」 出るや否やいきなり罵声を浴びせるヒル魔という少年。逆立った金髪、釣り目、裂けた口元。それを見た美空の第一印象は…。 (悪魔…?) 「おい糞チビ、ちょっと立ってみろ。」 「え?あ、はい…。」 ――ズキンッ!! 「あぐ…!」 「だ、大丈夫!?」 言われて立とうとするセナだがやはり足の激痛に立つことさえままならなかった。 「チッ!不味いな…。とりあえずタクシー呼んで…」 「そんな暇ねぇっスよ!私が担いで行くよ!」 「何言ってやがる!そんな事…」 ヒル魔が止めようとした時美空は既にセナを担ぎ走っていた。 「待ちやがれ!この糞ショートヘアー!」 人を担いで行くなんて無謀だ。普通は車のを呼んだほうが速く付く。そう思いヒル魔は止めようと追いかけた。 「無理ですよ!車を待ったほうが絶対…」 「急ぐよセナ君。しっかり捕まってて!」 「へ…?」 だが彼女は普通ではなかった! 「かそくそーち!」 「ひいいいいいいいいいいいいい!!」 「な…!?」 あっという間にヒル魔の視界から遠ざかっていく二人。 (あのスピード…一体…?) 「ひいいいいいいいい!!降ろしてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 何台も車を追い抜き何度も対向車をギリギリで回避しながら現在美空は道路を爆走ている。 「我慢して…お?あったあった!」 やっとの思いで整形外科を見つけた美空だが後ろのセナは既にぐったりしている。 二人は受付を済ませ待合室で待っていたがお互いまったく喋らずしばらく気まずい雰囲気が続いた。 (ん~…暇っスねぇ…。何か話題でも…) (どうしよう…。何か話さないと…。美空さん退屈そうだし…) 「「あ、あの!」」 お約束とも言うべきか、タイミングドンピシャにお互い口を開いた。 「あ、セナ君からいいっスよ。(うわぁ…ベタな展開…。今時恋愛ストーリーでもやんねっスよ…。)」 「え、あ…じゃあ美空さんってお幾つなんですか?」 「今15、中3だよ。セナ君は?」 「(僕より年下なんだ…。)僕は16歳、高校1年生。」 「ええ!?てことは先輩じゃないっスか!?」 美空が驚くのも無理はない。目の前の少年、小早川瀬那は体は小さく雰囲気もまだ子供っぽい所もある。 正直ネギより少し上くらいと思っていたくらいだ。 「そっか先輩か…そういえばさっきの金髪の人は何者?」 「え…と、あの人は蛭魔妖一さん。僕の部活の先輩で恐いけどすっごく頼りになる人なんだ。」 (もう名前がヤバイっスよ…。恐いって所しか同意できねっス。) あまりヒル魔には触れたくない美空はとりあえず話題を変えた。 「所でなんの部活やってんの?野球?サッカー?」 「アメフト…アメリカンフットボールです。」 「なんっスか、それ?」 「それはですね…」 「小早川瀬那さん。」 「は、はい。あ、スイマセンまた後で…。」 アメフトの説明をしようとした時丁度診察が回ってきた。美空が手を貸そうとするが心配ないと一人で診察室へ入っていった。 「はぁ…大丈夫っスかねぇセナ君…。」 誰もいなくなった待合室の椅子に一人ダラっと天井を仰ぐように座り待つ美空。 「アメフトってなんだろう?」 「パワー・作戦・スピード三拍子揃った最強のスポーツだ。」 「へ~…ってうわあ!!え…と、ヒル魔…さん!?」 何気なく呟いた一言に後ろから返され驚き、更にその相手がヒル魔だった事に更に驚く。 「おい糞シスター。」 「ファ、ファッキンって…、てか何故私がシスターだと!?」 「春日美空。Å型4月4日生まれ。麻帆良学園3年Å組出席番号9番。ほう…陸上部所属か。」 「な…!?」 質問に対してヒル魔はノートパソコンを開き美空の素性をどんどん喋っていく。 「趣味がいたずら、ジッとしてるのと神父の話しが嫌い…か。とんだシスターだなケケケ!何々…身長162cm、上から…」 「ちょーーー!!ストップストップ!!」 年頃の乙女には恥かしい数値を言われそうになり慌てて止めにかかる。 「はぁはぁ…で、何が目的っスか…?」 その言葉を待ってましたと言わんばかりに目を怪しく輝かせ、悪魔のように口の端を吊り上げて笑う。 その姿の恐ろしさに美空は唾を飲む。 「テメェーには今週の試合に出てもらう!」 しばらくの沈黙。 …… … 「えええええーーーー!!?」 「あの…院内ではお静かに…。」 「あ…す、すいません…。」 美空は今の言葉の意味を整理した。試合とは恐らくアメフト、その試合に中学生の女子に出ろと?高校生相手に出ろと? 何を無茶な事を言っているんだこの人は? 「どーゆー事っスか!?」 「あの糞チビ実はうちのエースなんだよ。だから変わりにお前が出ろ。」 「だって外部の人間が出たら不味いでしょ!?」 「練習試合だから大丈夫だ。」 「練習なら代わりなんかいいじゃないっスか!」 「よく聞け糞シスター!エースが足を怪我をしたなんて知られて見ろ?敵は必ずそこに付け込んで来る。」 「でも顔見りゃ一発でバレるんじゃ…」 「心配すんな。あいつは色付きアイシールドを付けてるから顔がバレる事は絶対ない。」 「でもねぇ…」 「チッ…!」 なかなか説得に応じない美空にヒル魔は耳打ちをする。 「魔法が本当にあるとは驚いたな~。これを世界中にばらしたらどうなんのかねぇ?」 そう言ってパソコンを見せる。そこには武道会の動画と先程セナを担ぐためアーティファクトを使った動画が流れていた。 「……!!!まままま、魔法なんて、あああある訳無いじゃないっスか~。あは、ははは,はは…」 明らかに動揺しているのは誰の目にも明らかだった。ヒル魔は更に口元を吊り上げて続ける。 「他にもあるみたいだなぁ?あんなイタズラやこんなイタズラ、おお!これなんかバレたら停学もんだなぁケケケ!」 (悪魔だ…本物の悪魔だ。神は我を見捨てた…。もっとちゃんと祈っとけばよかった…。) 「な~に、ただ試合に出るだけで秘密にしてやるんだ。いい話しだろ?」 悪魔の囁きが美空の頭に駆け巡る。というよりもう拒否出来ないので答えは決まっていた。 「……わかりました…。出ますからそれだけは秘密に…。」 「YaーHaー!身代わりゲーーット!」 (はぁ…シャークティーになんて言い訳しよう…?ってそういえば…!) と言い訳の言葉を考えてると重大なことに気づいた。 「ココネ忘れてた!!」 「ミソラのバカ…」

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